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休蔵さん
休蔵
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スーダンの過去と現在、そして未来を、スーダンに何らかの形で関わってきた邦人が執筆した1冊である。無関心が一番よろしくないことを痛感させられました。
 比較的情報を得やすい国に住んでいても、限られた情報が飛び交う傾向にある。
 そして、自分自身も己の興味の範囲で情報を選択しがちである。
 先ごろ閉会したパリオリンピックでも、地上波で放映される競技は限定的で、マイナースポーツのメダル確保よりメジャースポーツの予選敗退を大きく取り上げる様子に辟易した。
 オリンピックがあって、その競技に選ばれていればまだマシで、生涯において出会う機会が微塵もないマイナースポーツだってあるに違いない。
 同様のことは国についても言えるだろう。
 アメリカの大統領選についてはしつこいくらい詳しく報道する。 
 もちろん、日本との関りが強いから仕方ないところはあるが、あまりにも偏っている。
 だから、本書のような書籍は重要である。

 本書はスーダンという国を紹介する1冊。
 もちろん、観光案内ではない。
 スーダンの過去と現在、そして未来を、スーダンに何らかの形で関わってきた邦人が執筆した著作である。

 2023年4月15日、スーダンのハルツームで軍事衝突が発生した。
 スーダンで活動していた邦人は退去せざるを得なくなってしまった。
 報道はスーダンは内戦国という印象を強めることになり、日本との精神的な距離は遠くなった。
 それ以前にも、2017年までスーダンは国際テロ支援や人権侵害を理由に経済制裁を受け、2019年まで独裁政権に基づく情報統制下にあった。
 さらに2020年までテロ支援国家指定を受けていたということもある。
 私を含めた多くの日本人にとってスーダンは、恐い印象しかないというのが実情ではないか。
 でも、そこには多くの民間人が生活を送っている事実を忘れてはならない。
 日本国内にも様々な考え方の人が暮らし、それぞれに立場を持つ。
 立場が変われば考え方も変わり、視野にも大きく影響する。
 日本に来てとんでもない不親切にあい、嫌な印象で帰国した人にとっての日本がどんな形で描かれるか、想像に難くない。
 
 マスコミの情報を頭から信じる人がどれだけいるだろうか。
 フェイクニュースが蔓延るSNSの情報にも疑いの目を持つ必要がある。
 ましてや他国の情勢については、その判断には慎重になりたい。
 本書はスーダンに直接関わった邦人が、翻訳を介さず己の言葉でまとめた論文からなる。
 そこに書かれていることは、それぞれの著者が経験して感じたことであり、その点では間違いはないと信じる。
 発信元から提供された情報を、それぞれの立場で少しずつ表現を変えて広く流布させたものとは情報の価値が大きく異なるものと思う。
 
 世界情勢は日に日にきな臭くなっている印象がある。
 自然災害も油断ならず、南海トラフだけを注視していては台風の接近に脅かされる。
 何事もない1日のなかでもゲリラ雷雨に翻弄されることもしばしばだ。
 可能な限り多角的に情報を集めて、自分でしっかりと考え、自らの立ち位置や進むべき方向を決めるようにしたい。
 たとえ大手テレビ局の報道であっても、鵜呑みにしないように留意したい。
 本書はそんな姿勢を養う上でも有益な1冊と考える。
 きっとスーダンを通じて日本を、そして自分の日常を振り返ることができるはずである。
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休蔵
休蔵 さん本が好き!1級(書評数:451 件)

 ここに参加するようになって、読書の幅が広がったように思います。
 それでも、まだ偏り気味。
 いろんな人の書評を参考に、もっと幅広い読書を楽しみたい! 

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