ソネアキラさん
レビュアー:
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初夏の風景や情景の緻密な描写は、どこかノスタルジーを感じさせる

『初夏ものがたり』山尾悠子著を読む。
本人は亡くなっているが、どうしても会いたい人がいる。その手助けをするビジネスを生業にしている謎の日本人、タキ氏。ただし会えるのは当日の午前零時まで。
東雅夫の解説によると、タキ氏はアガサ・クリスティの「クィン氏」のオマージュとか。確かにクィン氏もどこか影の薄い、不思議な人。風のように現れては事件を解決して、去って行く。
モダン、無国籍感漂う世界。初夏の風景や情景の緻密な描写は、どこかノスタルジーを感じさせる。
『オリーブ・トーマス』
一週間、ホテルに引きこもりのタキ氏。さすがにメイドやボーイの間で噂になる。タキ氏に外線が入る。「オリーブ・トーマス」という彼の声がボーイの耳に入る。「サイレント時代の、ハリウッド女優」?実は明日7歳の誕生日を迎える女の子の名前だった。タキ氏は彼女を亡くなった父親のトーマス氏に会わせる。そして一日早い誕生日の食事をする。怪訝そうなオリーブ。父親は20歳で亡くなったので外見はそのまま。彼女はその男がパパであることは知らない。
『ワン・ペア』
18歳のナオミは、1年前彼女の目の前で交通事故で亡くなった二卵性双生児の兄・ミサキとどうしても会いたかった。二人はワン・ペアだった。しかし、もうペアは組めない。タキ氏に依頼して会えることに。しかし、最愛の兄の心の中に存在していた女性は…。
『通夜の客』
勲の祖父の通夜。和風と洋風が見事に折衷した屋敷に一族が集う。女の子がいると思ったら、小柄な老婦人だった。ミノ夫人は葬儀のために帰国した。彼女は画家の夫とヨーロッパの古城暮らしをしていたが、現在は未亡人。ミノ夫人の前を「黒塗りのリムジン」が通りすぎる。タキ氏だった。
50年前、日本に一時帰国したとき、神隠しに遭う。7歳だった。その真相は。そして、なぜタキ氏が、ここに。
『夏への一日』
ホテルで荷物をまとめている娘。実は亡くなっているのだが。水しぶきの音が聞こえる。窓からプールを見ると若者が泳いでいた。水泳には、少し早い季節。一方、山沿いの「溶岩地帯」には、いつものダークスーツ姿のタキ氏がいた。ヘリが接近して、そこからビジネス相手の老人が降りてくる。夕方、老女と会うタキ氏。娘と老人の関係は。彼女が生前やり残したこととは。
「著者の初期ファンタジー小説集「オットーと魔術師」に収録された」作品、集英社文庫コバルトシリーズから1980年に刊行された。コバルト文庫といえば、氷室冴子や新井素子などの名前が浮かぶ。ライトノベルのルーツなのかな。意外な気もするが。
酒井駒子のカラー挿画が何枚もあって、うれしい。当然だが、ぴったり。願わくば、タキ氏を描いたものが一枚見たかった。
行間からまぶしい光が注ぎ込んでくる。
『謎のクィン氏』アガサ・クリスティー著
『仮面物語-或は鏡の王国の記-』山尾悠子著
『迷宮遊覧飛行』山尾悠子著
『山の人魚と虚ろの王』山尾悠子著
『飛ぶ孔雀』山尾悠子著
『山尾悠子作品集成』山尾悠子著
本人は亡くなっているが、どうしても会いたい人がいる。その手助けをするビジネスを生業にしている謎の日本人、タキ氏。ただし会えるのは当日の午前零時まで。
東雅夫の解説によると、タキ氏はアガサ・クリスティの「クィン氏」のオマージュとか。確かにクィン氏もどこか影の薄い、不思議な人。風のように現れては事件を解決して、去って行く。
モダン、無国籍感漂う世界。初夏の風景や情景の緻密な描写は、どこかノスタルジーを感じさせる。
『オリーブ・トーマス』
一週間、ホテルに引きこもりのタキ氏。さすがにメイドやボーイの間で噂になる。タキ氏に外線が入る。「オリーブ・トーマス」という彼の声がボーイの耳に入る。「サイレント時代の、ハリウッド女優」?実は明日7歳の誕生日を迎える女の子の名前だった。タキ氏は彼女を亡くなった父親のトーマス氏に会わせる。そして一日早い誕生日の食事をする。怪訝そうなオリーブ。父親は20歳で亡くなったので外見はそのまま。彼女はその男がパパであることは知らない。
『ワン・ペア』
18歳のナオミは、1年前彼女の目の前で交通事故で亡くなった二卵性双生児の兄・ミサキとどうしても会いたかった。二人はワン・ペアだった。しかし、もうペアは組めない。タキ氏に依頼して会えることに。しかし、最愛の兄の心の中に存在していた女性は…。
『通夜の客』
勲の祖父の通夜。和風と洋風が見事に折衷した屋敷に一族が集う。女の子がいると思ったら、小柄な老婦人だった。ミノ夫人は葬儀のために帰国した。彼女は画家の夫とヨーロッパの古城暮らしをしていたが、現在は未亡人。ミノ夫人の前を「黒塗りのリムジン」が通りすぎる。タキ氏だった。
50年前、日本に一時帰国したとき、神隠しに遭う。7歳だった。その真相は。そして、なぜタキ氏が、ここに。
『夏への一日』
ホテルで荷物をまとめている娘。実は亡くなっているのだが。水しぶきの音が聞こえる。窓からプールを見ると若者が泳いでいた。水泳には、少し早い季節。一方、山沿いの「溶岩地帯」には、いつものダークスーツ姿のタキ氏がいた。ヘリが接近して、そこからビジネス相手の老人が降りてくる。夕方、老女と会うタキ氏。娘と老人の関係は。彼女が生前やり残したこととは。
「著者の初期ファンタジー小説集「オットーと魔術師」に収録された」作品、集英社文庫コバルトシリーズから1980年に刊行された。コバルト文庫といえば、氷室冴子や新井素子などの名前が浮かぶ。ライトノベルのルーツなのかな。意外な気もするが。
酒井駒子のカラー挿画が何枚もあって、うれしい。当然だが、ぴったり。願わくば、タキ氏を描いたものが一枚見たかった。
行間からまぶしい光が注ぎ込んでくる。
『謎のクィン氏』アガサ・クリスティー著
『仮面物語-或は鏡の王国の記-』山尾悠子著
『迷宮遊覧飛行』山尾悠子著
『山の人魚と虚ろの王』山尾悠子著
『飛ぶ孔雀』山尾悠子著
『山尾悠子作品集成』山尾悠子著
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女子柔道選手ではありません。開店休業状態のフリーランスコピーライター。暴飲、暴食、暴読の非暴力主義者。東京ヤクルトスワローズファン。こちらでもささやかに囁いています。
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詩や小説らしきものはこちら。
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- 出版社:筑摩書房
- ページ数:0
- ISBN:9784480439550
- 発売日:2024年06月10日
- 価格:1100円
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