薄荷さん
レビュアー:
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AIにつきつけられた「自分のリサイクル計画」。才能が枯れた天才の選択は・・・。
小学生で小説家としてデビューし、天才と称えられた綴喜文彰だったが、ある事件をきっかけに何も書けなくなった。打ちのめされ、苦悩にあえぎながら迎えた高校三年生の春、彼は奇妙なプロジェクトに招待される。
それは国家主催の『レミントン・プロジェクト』。
若き天才を集めて交流を図る11日間のプロジェクトだというだけで、詳細は不明。
胡散臭い話だが、招待状にあった「また傑作を書けるようになる」という言葉に、綴喜は参加を決めた。
厳重な秘密管理の元、ヘリコプターで山奥のプロジェクト施設に集められたのは、5人。
小説家の綴喜と、料理家、日本画家、バイオリニスト、映画監督、棋士・・・世間で天才と名を馳せて・・・いた過去を持つ若者たち。
才能を発揮できなくなって、まだ10代~20代前半で人生が詰んでいる彼らは思い知らされる。
プロジェクトの真の目的=人工知能「レミントン」とのセッションを通じた自分たちの「リサイクル計画」を。
プライドを深く抉る残酷さに傷つきながらも、天才故にわかる悪魔的な魅力に満ちたその計画を、受け入れるかどうか・・・それぞれの選ぶ先に、願う通りの未来はやってくるのか・・・?
****
本書で気になったのは、2つ。
1・彼らは何故天才であり続けなければいけないと、自分を追い詰めていくのか?
それが顕著なのが、本書の主人公にして、過去に天才小説家と騒がれた綴喜のセリフ。
そんなの変だ、自分は自分で他人が決める事じゃない・・・な~んて思えるのは、もっと歳を重ねて人生経験を山ほど積んで、その方面では感受性が鈍くなってから。
「自分自身」を把握する前に世間にさらされ、「他者からの無責任な認識=天才」を押し付けられ、それがまだ短い人生の中での「自分の消費期限」になってしまっている恐ろしさと悲しさが、心が柔らかくて傷つきやすい若者たちを責め続けているのです。
そんな天才と騒がれた過去が無くても、「自分は特別」と思っていた思春期の頃なぞぽっくり忘れて、けっこーな歳くってる(笑)私には、本当の意味で彼らの心情をリアルには理解できないのかもしれません。
2・AIとのセッションの正否?
以前読んだクリエイティブの授業で「アーティストのように盗め!」&「オリジナルなんてないんだ!」を思い出しました。
① あなたがこの世界に存在している沢山の既製品と出会い、
② その中の良い所を吸収・消化して、
③ ②を自分の思う色と形で作り上げ、
そうして出来上がった品は、あなたのオリジナルだと教えてくれた本でした。
対して本書のように、AIが膨大なデータを駆使して①~③の作業を経て作り上げた設計図を、指定通りに正確に才能ある人が仕上げた作品は・・・オリジナル?それは誰の作品になる?AIと共作は世間的に認められる?
そうやってAIが設計した作品をどんどん人間がその通りに作っていくとしたら、世の中にあふれていく素晴らしい作品たちと引き換えに、人間のクリエイティブが打ち止めになる危険があります。
けれど「レミントン・プロジェクト」がそんな危険なんぞ度外視するのは、前程には国の利益があるのは当然として、加えて「レミントン」を開発した博士の愛ゆえの願いがあるから。
その良し悪しの判断は、本書の中で苦悩した元・天才達のように、個人の捉えかたと時代の流れによって変わってくるんでしょう。
このプロジェクトの成功と可否は?傷を抱えた5人の元・天才たちがどんな選択をしていくのか?AI×青春小説=効果無限大の本書を、是非読んでご確認ください。
生成AIと著作権の問題、SNSなど巷の無責任なコメントの罪、パクリとコラボとオマージュとセッションの明確な違い、アイデンティティの存在・・・本からはみ出して色々考えこんでしまいますが、お話自体はスルスルと読みやすく、大変爽やかな読後感です。
傷つきやすい心を持った青春期(年齢を問わず)の皆様に、本書をお勧めいたします。
それは国家主催の『レミントン・プロジェクト』。
若き天才を集めて交流を図る11日間のプロジェクトだというだけで、詳細は不明。
胡散臭い話だが、招待状にあった「また傑作を書けるようになる」という言葉に、綴喜は参加を決めた。
厳重な秘密管理の元、ヘリコプターで山奥のプロジェクト施設に集められたのは、5人。
小説家の綴喜と、料理家、日本画家、バイオリニスト、映画監督、棋士・・・世間で天才と名を馳せて・・・いた過去を持つ若者たち。
才能を発揮できなくなって、まだ10代~20代前半で人生が詰んでいる彼らは思い知らされる。
プロジェクトの真の目的=人工知能「レミントン」とのセッションを通じた自分たちの「リサイクル計画」を。
プライドを深く抉る残酷さに傷つきながらも、天才故にわかる悪魔的な魅力に満ちたその計画を、受け入れるかどうか・・・それぞれの選ぶ先に、願う通りの未来はやってくるのか・・・?
****
本書で気になったのは、2つ。
1・彼らは何故天才であり続けなければいけないと、自分を追い詰めていくのか?
それが顕著なのが、本書の主人公にして、過去に天才小説家と騒がれた綴喜のセリフ。
ちやほや持ち上げられたいわけじゃない、これ以上、下に落ちたくないだけなんだ。たった一回天才だって持て囃されたお陰で、僕は一生そのツケを払わされる。ただ生きているだけで消費期限を突きつけられるんだよ。終わった人間相手には何を言ったって赦されるとみんな思ってる。過去に書いたものもあげつらわれて、お前は偽物だったんだって言われ続けるんだ
そんなの変だ、自分は自分で他人が決める事じゃない・・・な~んて思えるのは、もっと歳を重ねて人生経験を山ほど積んで、その方面では感受性が鈍くなってから。
「自分自身」を把握する前に世間にさらされ、「他者からの無責任な認識=天才」を押し付けられ、それがまだ短い人生の中での「自分の消費期限」になってしまっている恐ろしさと悲しさが、心が柔らかくて傷つきやすい若者たちを責め続けているのです。
そんな天才と騒がれた過去が無くても、「自分は特別」と思っていた思春期の頃なぞぽっくり忘れて、けっこーな歳くってる(笑)私には、本当の意味で彼らの心情をリアルには理解できないのかもしれません。
2・AIとのセッションの正否?
以前読んだクリエイティブの授業で「アーティストのように盗め!」&「オリジナルなんてないんだ!」を思い出しました。
① あなたがこの世界に存在している沢山の既製品と出会い、
② その中の良い所を吸収・消化して、
③ ②を自分の思う色と形で作り上げ、
そうして出来上がった品は、あなたのオリジナルだと教えてくれた本でした。
対して本書のように、AIが膨大なデータを駆使して①~③の作業を経て作り上げた設計図を、指定通りに正確に才能ある人が仕上げた作品は・・・オリジナル?それは誰の作品になる?AIと共作は世間的に認められる?
そうやってAIが設計した作品をどんどん人間がその通りに作っていくとしたら、世の中にあふれていく素晴らしい作品たちと引き換えに、人間のクリエイティブが打ち止めになる危険があります。
けれど「レミントン・プロジェクト」がそんな危険なんぞ度外視するのは、前程には国の利益があるのは当然として、加えて「レミントン」を開発した博士の愛ゆえの願いがあるから。
その良し悪しの判断は、本書の中で苦悩した元・天才達のように、個人の捉えかたと時代の流れによって変わってくるんでしょう。
このプロジェクトの成功と可否は?傷を抱えた5人の元・天才たちがどんな選択をしていくのか?AI×青春小説=効果無限大の本書を、是非読んでご確認ください。
生成AIと著作権の問題、SNSなど巷の無責任なコメントの罪、パクリとコラボとオマージュとセッションの明確な違い、アイデンティティの存在・・・本からはみ出して色々考えこんでしまいますが、お話自体はスルスルと読みやすく、大変爽やかな読後感です。
傷つきやすい心を持った青春期(年齢を問わず)の皆様に、本書をお勧めいたします。
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スマホを初めて買いました!その日に飛蚊症になりました(*´Д`)ついでにUSBメモリーが壊れて書きかけレビューが10個消えました・・・(T_T)
この書評へのコメント
- 薄荷2024-07-09 08:40祐太郎さん主催のコミュニティ企画 
 「カドイカさんとひらけば夏休みフェア2024に挑戦!」
 https://www.honzuki.jp/bookclub/theme/no443/index.html?latest=20
 参加レビューです。
 
 本作は今回初めてのエントリーだったんですね。
 祥伝社の単行本は装幀が素敵ですが、角川文庫は桜庭一樹氏の素晴らしい解説があるので、どちらもおすすめです(笑)クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。
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