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rodolfo1さん
rodolfo1
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500年ぶりに現代に蘇った呪いの人形お梅は元気一杯人を呪う。しかし得意の瘴気は何故か通用せず、悪しかれと思って増幅した人の負の感情は、逆に人々を。。。
藤崎翔作「お梅は呪いたい」を読みました。知らない作家さんでしたが、好意的なレビューに思わず求めました。なんと続編が既に出ているんだとか。如何でしたか。

【ぷろろおぐ】関東地方のある田舎町で、築百年以上の古民家が解体されました。押し入れから古めかしい箱が発見され、中から古びた日本人形が出て来ました。実はそれは500年前に封印された呪いの人形のお梅でした。その当時何人もの人間を呪い殺したお梅は、再び世に解き放たれ、邪悪な喜びに打ち震えました。実はお梅には瘴気を発して人を殺す事が出来、人間の心の中から負の感情を読み取り、それを大きく増幅させる事でも人を殺せたのでした。人間達を呪って多くの人々を殺そうと、お梅は手ぐすね引いていました。人間と違う所はしゃべれない事だけでした。

【ゆふちゅふばあを呪いたい】古民家の持ち主の遺族は人形を気味悪がりました。しかしその話を聞いていた甥の悠斗がその人形を欲しがって持って帰りました。実は悠斗はさっぱり人気の無いマッチューと名乗るユーチューバーで、呪いの人形の心霊動画を撮って公開しようと考えたのでした。動画配信では食べて行けなかった悠斗は普段コンビニでバイトして生活していました。

今日も顔に火傷の跡のある、ネチネチババアと悠斗達が呼んでいる老婆が店に現れていつものように嫌味を言って帰りました。次に30代と思しき美人女性客が現れてハーゲンダッツを買って帰りました。更にいつも配送に来る疲れた顔の中年宅配ドライバーが現れていつものように荷物を落として落胆しながら帰りました。仕事を終えて帰宅した悠斗はふと、自分が寝た後の人形の動画を撮ろうと思い、スマホをセットして寝ました。

一方そんな悠斗を見ていたお梅は悠斗が何をしているのかさっぱりわかりませんでした。何か小さな板状の物にしきりと話しかけていたのでした。初めてテレビを見たお梅は驚愕しましたが、悠斗はテレビにはあまり興味は無く。。。悠斗が寝入った事を知ったお梅は部屋を歩き回って探検しました。目覚めた悠斗は動画を見て仰天しました。お梅が1人で部屋の中をうろつきまわっていたのでした。発狂しそうになりながらもなんとか悠斗は動画をアップしましたが、最初に見た観客が心霊動画だと驚いただけで、他の観客は良く出来たモーションキャプチャー動画だと決めつけたのでした。

思わず悠斗はお梅にもう一度動いてくれと頼みこみましたが、動画を知らなかったお梅は驚愕しました。しかし知られたからには殺すしかないと思い、お梅は瘴気を送り込みましたが悠斗は平気でした。しかしお梅が2度とスマホの前で動かなかった為に未曾有のビューを獲得した悠斗のチャンネルは廃れて行き、悠斗は焦りました。一方お梅も何故瘴気が利かないのかわからずに焦っていました。。。

しかしある日、空き巣の大溝が悠斗の部屋に侵入して来たのでした。大溝は悠斗が仕事に行ったと思い込んでおり、灯をつけた所悠斗が寝ていました。慌てて大溝は灯を消し、悠斗が起きたら刺そうとピックを構えました。すると突然テレビが映りました。物音で起きた悠斗が怒鳴りながら枕を投げ、スマホを投げつけ、あろう事かお梅を投げつけました。すると大溝は恐るべき光景を目にしました。頭がとれたお梅の人形の身体が頭を追って走り出したのでした。大溝は恐怖の余り逃げ出し、頭を戻したお梅は自分の姿をスマホが捕えていた事に気づきました。お梅は逃げ出し。。。悠斗はその動画を再びアップして5万人を超えるファンを得たのでした。。。

【失恋女を呪いたい】里中怜花はゴミ箱の当たりに落ちていたお梅を拾いました。実は怜花はアル中寸前でした。彼氏に振られてショックだったのでした。仕事にも差しさわり、この夜も自暴自棄になっていました。すると突然テレビが映りました。一方お梅も、怜花の怠惰の気分を増幅する力を使うとテレビが映る事に気づきました。悠斗の時は空き巣の殺意を増幅してテレビが映ったのでしたが、実は増幅したのは悠斗の殺意だったのでした。お梅は怜花にも瘴気を吸わせましたが、やはり無効でした。お梅は怜花の留守中にテレビをつけてこの時代の情報収集をしました。

最も有効だったのはEテレでした。Eテレによってお梅はこの500年間に日本に起きた事を理解しました。戦国手芸隊というドラマの時代考証が全くなっていないとお梅は思い。。。しかしある日、テレビをつけた怜花は、自分が決して見ないEテレが映った事を訝しみました。その番組は乳がんの啓蒙番組で、ふと自分の乳房を触った怜花は乳がんを見つけました。こんな初期に癌を発見できたのは運がとても良いと医者に褒められ、怜花はEテレに感謝しました。お梅を拾ったご利益かと怜花は思い、お梅を連れて入院しました。

お梅は医者に怜花を殺させようと手術日に病室を出た所を看護師に見つかり、また泥棒が出たと看護師は騒ぎ、病院内を捜索しました。捕まったのは大溝でした。大溝は人形など盗んでいないと言いながらもその人形に心当たりがある様子で。。。怜花は通院中に、憧れていたもののついに告白出来なかった元同級生谷口諒太に再会しました。諒太は小説家をしているのだと言い、実は諒太はあの戦国手芸隊の原作者でした。一方お梅は帰宅した怜花の心に思慮を欠いた事がしたいという欲望を読み取り、悪しかれと思ってそれを増幅しました。すると怜花は諒太に衝動的に電話してしまい、その結果。。。

怜花は諒太を自室に招待しました。お梅は怜花の心の攻撃欲を増幅させ、その結果怜花は諒太に襲いかかり、2人は幸せになってしまったのでした。お梅は歯噛みしましたが、後の祭りでした。怜花は諒太の部屋で同棲を始め、お梅も連れていかれました。しかし諒太はチョコという巨大な犬を室内飼いしており、チョコはお梅を追いかけ回し、恐怖したお梅は辛うじて部屋から逃げ出したのでした。。。

【引きこもり男を呪いたい】高山渓太は道でお梅を拾いました。渓太は引き籠りのゲーマーでした。お梅は毎日ゲームをするだけで何もしない渓太に呆れていました。何かの感情を増幅しようにも渓太の心は虚無と怠惰で一杯でした。お梅は渓太は既に呪われているのも同然だと思いました。しかしお梅は渓太に悪夢を見せました。

実は渓太は元母子家庭でした。引き籠った渓太がぎょうちゃんの餃子が食べたいと言ったばかりに母親はその餃子を買いに出掛けて交通事故に遭って死んだのでした。自分を深く責めた渓太は、降りた保険金を食いつぶしながら今の暮らしを続けていたのでした。お梅が見せた悪夢は母親が死んだその日の夢でした。しかし渓太は悪夢でも久しぶりに母親の顔を見れて嬉しかったのでした。。。お梅は悪夢を見せた筈なのに渓太が喜んでいる事に当惑し。。。

お梅は渓太が寝ている隙に絞め殺してやろうと思って電源コードを抜きました。すると火花が飛んで小火が出、自分も燃えてしまうと思ったお梅は暴れまわって火を消し、弾みで渓太の眼鏡を壊しました。その音で起きた渓太は何が起こったのかわかりませんでしたが、とりあえず眼鏡を直しに行きました。その帰路、渓太は小学校からの幼馴染、柏田先輩に出会いました。先輩は渓太の近況を尋ね、渓太が無職だと知った先輩は仕事を世話してくれました。一部始終を聞いていたお梅は渓太の心に萌した不安を読み取り、その感情を増幅させました。ついに渓太は先輩を裏切ろうと思い。。。しかし先輩の仕事とは実は。。。

【老婆と童を呪いたい】次にお梅を拾ったのは老婆雅恵でした。しかしお梅は困惑しました。73歳になる雅恵は心身共に健康で、何の屈託も持っていませんでした。雅恵の家の庭に智希がサッカーボールを蹴り込んで来、引っ越して来たばかりで友達がいないから公園でボールを蹴っていたのだと智希は言い、雅恵と友達になって毎日遊びに来ました。

智希は同級生の龍牙に虐められていると言い、それを聞いた雅恵は、龍牙の父親は良く知っていると言い、龍牙の家に一緒に向かいました。雅恵を見た龍牙の父親は驚いて雅恵にぺこぺこ頭を下げ、龍牙をきちんと叱っておくと言って恐縮しました。智希と雅恵は帰宅して一緒にアイスを食べ、帰る途中で智希はカナダの国旗のようなきれいな葉っぱを拾い。。。お梅が別の家に移ろうかと算段していると、智希の母親が雅恵を訪問しました。しかしお梅は母親から邪悪な念を感じ、喜んでいるとどやどやと男達が押し入り。。。実は雅恵は。。。

【老人ほおむで呪いたい】なんとか雅恵の家を脱出したお梅は老人ホームに紛れ込みました。職員の晃子はお梅を見つけ、きっと西本さんの物だろうと言って西本勲の部屋に行って聞きましたが、認知症を患っている勲は返事をしませんでした。晃子は低賃金重労働に喘いでいました。中学時代に太っていた事をからかわれて虐めに会い、不登校になりました。唯一晃子を庇ってくれた男子も虐められ、やはり不登校になりました。晃子の両親は離婚し、2年付き合った彼氏にも捨てられたのでした。

一方お梅は勲を殺そうととりあえず瘴気を吸わせてみました。すると勲は苦しみ始め、これはしたりとお梅は勲の心の苦しみを増幅させ、更に苦しむ勲を見て大喜びしました。一方勲は苦しみと共に昔の嫌な記憶が立ち上がって更に苦しみました。元々勲は満州乞食と呼ばれて蔑まれて来ました。戦後満州から引き揚げて来て貧乏している子供はみなそういう目にあったのでした。しかしある日、勲は同じく虐められていた女の子を助けました。

苦しむ勲を見てホームのスタッフは、お看取りが近いと思い、家族を呼びました。更に勲は苦しむ中、その後の記憶を取り戻しました。集団就職で東京に出て来た勲でしたが、どこでも奴隷扱いでした、次々と新しい職場に移りましたが、いつまでも貧乏でした。懸命に母親に仕送りを続けていた勲でしたが、母は亡くなり、勲は自暴自棄となりました。しかしある日勲に声を掛けたのはあの時虐められていた節子でした。勲はその後中華料理屋に就職し、店主夫婦に可愛がられ、2号店を任されました。しかし店主夫婦は亡くなり、勲は節子と結婚して店を続け、子供は授かったもののみな死産し、40歳になってついに長男を得ました。しかしその子は登校拒否し。。。

勲は家族の為に懸命に働きましたが、近所に有名店餃子のぎょうちゃんの支店が出来、客足は遠のきました。ついに勲は店を畳み、夫婦そろって別の店に雇われましたが、勲は認知症になりました。ある日勲は節子の留守中に料理を始め、それを節子に見とがめられて怒られた勲は熱した中華鍋で節子を叩いてしまいました。節子は顔に大火傷を負い、勲はこの施設に収容されました。

何もかもわからなくなった勲でしたが、ある日見舞いに訪れた節子に誰ですかと聞き、節子が泣き出したのを勲は今理解しました。勲は今看取りに来たのが節子と息子の裕志だと気が付き、最後に勲は。。。お梅は自分の企みがみな裏目に出たと地団駄を踏みましたが。。。実は節子と裕志は。。。更に晃子は実は。。。

大変好意的なレビューを見てこの本を求めました。作者さんは元お笑い芸人の台本担当だそうですが、プロットが大変素晴らしい。伏線も多数張られ、見事に回収されて行きます。おどろおどろしく500年ぶりに現代に蘇った呪いの人形お梅でしたが、現代人を呪おうとEテレで情報収集に努めるなど懸命に努力しますが、お梅が呪う人呪う人皆幸せになってしまいます。逆に襲ってくる犬猫から逃げようとお梅は大活劇を演じ、このシーンを映画にしたらさぞかし大笑いだろうと思いました。果たしてお梅は続編では見事に人を呪い殺すのでしょうか?楽しみに続編を読みたいと思いました。
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rodolfo1
rodolfo1 さん本が好き!1級(書評数:870 件)

こんにちは。ブクレコ難民です。今後はこちらでよろしくお願いいたします。

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