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ウロボロス
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最近登山をはじめた者として520名の墓標のある御巣鷹の尾根に登り、決してまつろわぬであろうその御霊前に心より手を合わせご冥福をお祈りしたいと思いました。
経済評論家の森永卓郎さんが末期癌の只中で、ジャーナリストとしての最後の矜持を賭してその魂魄を奮いたたせメッセージしたひとつが1985年8月12日に起きた日航機123便墜落事故の真相究明への最後の呼びかけである。あの事故から来年で40年をむかえる。520名の尊い命が奪われ生存者は4人だけでした。被害者の中には日本人で初めて米国ビルボードの音楽チャートで1位を獲得した『上を向いて歩こう』の坂本九さんもいらっしゃいました。これまでに、陰謀論も含めた様々な本が出版されていたようです。自分はこの手の本にはあまり関心をむけてこなかったし、著者の青山透子という人も知りませんでした。読書家の知人に薦められてとりあえず読んでみました。結論を先に言うと、一読にあたいする内容でした。

著者の青山透子さんは、事故当時に日航の国際線の客室乗務員として勤務されていた方です。
本の内容は第1部 雲海を翔けぬける、第2部 エマージェンシー 墜落か不時着か、第3部 乱気流の航空業界 未来はどこへ─で構成されています。

第1部では、当時の若い女性の憧れの職業の一つであったいわゆる"スチュワーデス物語"的な青春小説ともいえる趣きで先輩後輩の職場での関係が清々しくある時はユーモアをもって語られています。しかし同時にこの仕事が人様の命を、預かる崇高な職業であることも強調されています。

そして第2部では著者の青山さんが新人の頃にお世話になった多くの先輩たちが墜落した123便に乗務されていたことが悲痛なおもいで綴られています。亡くなられた先輩方を一人ひとり思い浮かべての語りにはおもわず涙が溢れます。そしてここから著者の語りのトーンが鋭く変調します。

最後の第3部では、日航を退社し、航空業界をはじめとした様々な業界を志す若い学生たちを指導教育するコンサルタント業に転職した青山さんが、学生たちとともにこの123便墜落事故の真実を知ろうとしてその疑問を一つ一つ過去の新聞記事からただしていく過程は緊張感があり読み応えがありました。

日航機123便が墜落した場所は群馬県多野郡上野村の御巣鷹山の尾根でした。この過疎の村の村長である黒澤 丈夫さんは、元大日本帝国海軍士官であの零戦を操縦していたというから驚きです。この黒澤さんが現地でとった指揮は素晴らしく、この人と歯科医師の大國勉さん、そして地元の消防団の方々の奉仕活動には頭がさがります。

それにしても時の総理大臣であった中曽根康弘氏の事故当日とその後の対応には不愉快な不可解な思いだけしか残りません。この後にイギリスで旅客機墜落事故が起きたとき、サッチャー首相は、休暇先から一目散に事故現場に駆けつけて指揮をとったそうです。

1989年11月22日、前橋地検は、業務上過失致死傷容疑で書類送検された日航、運輸省、ボーイング社と他を含めた計31名を全員不起訴とした。誰ひとり起訴されることもなく罪を問われることもなかった。520名の命を奪ったこの大事故は1990年に時効をむかえ、誰ひとり責任も問われず事故そのものが重い蓋をされ封印されたのです。

事故調査会と政府の正式見解は、同一機種で以前に起こした大阪空港への着陸時の尻もち事故のボーイング社の修理が不適切でその点検整備を見落とした当時の運輸省職員と日航の整備士の点検ミスが、圧力隔壁の疲労によって破壊されたことで垂直尾翼がなくなってしまい、方向感覚を失ってダッチロールし機長らの決死の操縦も力付き墜落した、と最終結果を発表しマスコミもこれに追従した。

だが、高度20,000フィート(6100m)で内部隔壁が破裂すると全員酸素不足で失神してしまう。JAL123便に乗っていた524人は意識があったそうです。ダッチロールしていた34分間で自身の人生への短い言葉や家族への感謝や希望を書いたと言われている。これはどう考えても、違う原因で、垂直尾翼そのものが破損したと思われる。駿河湾にその垂直尾翼も未だ眠ったままだそうです。

そして1999年11月、運輸省の航空事故調査委員会は、保存期間が過ぎたという理由でおよそ1トンにもおよぶ重要な資料を裁断し、焼却し、廃棄したという。驚くべきことにそれは、翌年から施行される情報公開法の直前であったことである。

私はまだ読んでいませんがこの後に出版された本の中で、青山さんはすべての国民を凍りつかせる驚愕の推論をされているようです。真実は開示されるのか?闇に葬りさられるのか?
最近登山をはじめた者として520名の墓標のある御巣鷹の尾根に登り、決してまつろわぬであろうその御霊前に心より手を合わせご冥福をお祈りしたいと思いました。
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ウロボロス
ウロボロス さん本が好き!1級(書評数:275 件)

これまで読んできた作家。村上春樹、丸山健二、中上健次、笠井潔、桐山襲、五木寛之、大江健三郎、松本清張、伊坂幸太郎
堀江敏幸、多和田葉子、中原清一郎、等々...です。
音楽は、洋楽、邦楽問わず70年代、80年代を中心に聴いてます。初めて行ったLive Concertが1979年のエリック・クラプトンです。好きなアーティストはボブ・ディランです。
格闘技(UFC)とソフトバンク・ホークス(野球)の大ファンです。

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