たけぞうさん
レビュアー:
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作家の抱える強烈な葛藤。毒気が多いです。
初読みの作家さんです。題名と書誌情報に惹かれて手に取りました。全五話の連作短篇です。第一話を読んでみて、あまりにも強烈で面食らってしまいました。文体がしっかりと書けているからこそ、伝わり過ぎて毒気にあてられてしまったのです。
読んでいる途中で、偶然かもめ通信さんの書評が投稿されました。efさんもこれから読むようでした。聞くと、この本の評価がかなり割れているとのことでした。納得しました。お二人の話を聞いて、前に進むことができて感謝です。共感を得られる読者は多くはないかもしれません。それくらい癖の強い作品なのです。わたしは、いろいろな意味でいい本だと思いましたよ。いい作品は、引っかかりを持っているものですし。読了後、ゴールして正解だったと思いました。以下に、わたしに届いたことをお伝えします。
小説家、翻訳家、評論家、詩人、本の蒐集家。各短篇の主人公の職業です。本が好きな人ならではの選択だと思いませんか? そして、各話の主人公は、読者が思いもよらないような深い葛藤を抱えていたのでした。
えぐさ爆発の作品群の中で、わたしが選ぶなら四作目の詩人になれますように、ですね。主人公は大久保詠美。地方の中小企業の事務員です。詠美には秘密がありました。落窪詠子の名前で、過去に詩集を二冊出していたのです。しかもです。二十歳でデビューした当時、美人詩人として騒がれ、将来を期待されたのでした。それから十一年。まったく詩が書けなかったのです。
詠美のもとに、一人の女性が現れます。ノンフィクション作家だと名乗りました。しかもその相手は、詠美の元カレと結婚した女性だったのです。なんで今更というところから、物語が動き始めます。
詠美は、どうしようもなく負のループにはまりこんでいます。そして、物語が進むにつれ落ちるところまで落ちていくのです。最後に、すべてがぽろりと剥がれ落ちるように、生まれ変わるという展開でした。落ちていく途中で、人間の自意識のむごさがさんざん書きこまれているんですね。これが、読者のこころにばんばんぶっささるのですわ。読者は徹底的に追い込まれ、最後に細い蜘蛛の糸が見えて終わるみたいな、迫力のある一遍でした。
物語の中での作家の自意識は、作家特有のものとは思えなかったのです。わたしたちが日常で生活していく中でべたっと貼りついているものととても似ています。それを金タワシで、ざりざりと心臓から削られるような読みごこちと書くと、物語のえぐさが伝わるでしょうか。こんな感想で申し訳ないのですが、つまらないという意味ではないので、ピンときたら手に取ってみて下さい。
読んでいる途中で、偶然かもめ通信さんの書評が投稿されました。efさんもこれから読むようでした。聞くと、この本の評価がかなり割れているとのことでした。納得しました。お二人の話を聞いて、前に進むことができて感謝です。共感を得られる読者は多くはないかもしれません。それくらい癖の強い作品なのです。わたしは、いろいろな意味でいい本だと思いましたよ。いい作品は、引っかかりを持っているものですし。読了後、ゴールして正解だったと思いました。以下に、わたしに届いたことをお伝えします。
小説家、翻訳家、評論家、詩人、本の蒐集家。各短篇の主人公の職業です。本が好きな人ならではの選択だと思いませんか? そして、各話の主人公は、読者が思いもよらないような深い葛藤を抱えていたのでした。
えぐさ爆発の作品群の中で、わたしが選ぶなら四作目の詩人になれますように、ですね。主人公は大久保詠美。地方の中小企業の事務員です。詠美には秘密がありました。落窪詠子の名前で、過去に詩集を二冊出していたのです。しかもです。二十歳でデビューした当時、美人詩人として騒がれ、将来を期待されたのでした。それから十一年。まったく詩が書けなかったのです。
詠美のもとに、一人の女性が現れます。ノンフィクション作家だと名乗りました。しかもその相手は、詠美の元カレと結婚した女性だったのです。なんで今更というところから、物語が動き始めます。
詠美は、どうしようもなく負のループにはまりこんでいます。そして、物語が進むにつれ落ちるところまで落ちていくのです。最後に、すべてがぽろりと剥がれ落ちるように、生まれ変わるという展開でした。落ちていく途中で、人間の自意識のむごさがさんざん書きこまれているんですね。これが、読者のこころにばんばんぶっささるのですわ。読者は徹底的に追い込まれ、最後に細い蜘蛛の糸が見えて終わるみたいな、迫力のある一遍でした。
物語の中での作家の自意識は、作家特有のものとは思えなかったのです。わたしたちが日常で生活していく中でべたっと貼りついているものととても似ています。それを金タワシで、ざりざりと心臓から削られるような読みごこちと書くと、物語のえぐさが伝わるでしょうか。こんな感想で申し訳ないのですが、つまらないという意味ではないので、ピンときたら手に取ってみて下さい。
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ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。
自己紹介ページの二番目のアドレスは「飲んでみた」の書評です。
三番目のアドレスは「お絵描き書評の部屋」で、皆さんの「描いてみた」が読めます。
四番目のアドレスは「作ってみた」の書評です。
よかったらのぞいてみて下さい。
この書評へのコメント
- ef2024-07-25 04:42たけぞうさんも読了されましたか(私も読了済みなのですが、例によってレビューupは順番待ち中なので、2か月弱くらい先になりそう……一日にいくつもレビューを上げるのは避けているので)。 
 
 高野史緒さんは初読みということでしたが、私は結構気に入っている作家さんです。SF色が強いので、あるいは好みではないかもしれませんが、以下の作品などはお勧めです。
 [[カント・アンジェリコ>https://www.honzuki.jp/book/320847/review/298464/]]
 [[ムジカ・マキーナ>https://www.honzuki.jp/book/92762/review/303236/]]
 
 その他、『赤い星』、『グラーフ・ツェッペリン』等々、なかなか興味深い作品があると感じています。興味をお持ちでしたら是非お読みになってみてください。クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。
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- 出版社:講談社
- ページ数:0
- ISBN:9784065354049
- 発売日:2024年05月23日
- 価格:1870円
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