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かもめ通信
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かもめ通信、「歌物語」の面白さを知る。(※今回は「伊勢物語」に絞ったレビューです。)
古典文学を題材にした物語や古典文学の現代語訳といったもの手にした後は、できるだけ原文に近い形の文語文にあたることにしている。

そんなわけで川上弘美訳の『伊勢物語』と共に手にしたのは、毎度おなじみの新日本古典文学大系の『伊勢物語』。
底本は学習院大学蔵伝定家筆本で、解説は源氏物語研究でもお馴染みの秋山虔氏だ。

とにもかくにも欄外の注釈がこまかい!
これがもう細かいのは文字だけではなく、至れり尽くせりのこまかさなのだ。

川上弘美訳の『伊勢物語』レビューでも紹介した。<百十八段>をとってみよう。
昔、をとこ、久しくをともせで、「忘るる心もなし。まゐり来む」といへりければ、
 玉かづらはふ木あまたになりぬれば絶えぬ心のうれしげもなし

たったこれだけの本文に付けられた注釈は
・長い間音沙汰なしで
・あなたを忘れてなどいません。参上しましょう。
・玉かずらが多くの木にはいまつわるように、あなたのかかわりあう女たちが大勢になってしまったのですから、いつまでも忘れてはいないとおっしゃるお気持ちを伺っても嬉しいという気が起こりません。古今集・恋四・読人知らず。古今・六帖五・こと人を思ふ、二・三句「はふきのあまたありといへば」。
※古今集の歌に基づく物語化である。歌だけを見るかぎり、訪れてきた男への恨み言と解されるが、この段では、男からの、いい気な音信への女の反撥の歌である。この男女の仲らいがいかなるものであったのかを想像させるだろう。

というボリュームだ。(本文、注釈とも対応箇所を表す数字は省略)

同じページに載っているので、参照しやすいのもいい。

まずは本文を読み、注釈を読み、また本文を読む。
そうやって読み進めるとなるほど、「歌物語」とはこういうことか!と納得する。

古今和歌集などに収録されたなかなかに有名な歌をとりあげて、その歌が読まれた背景を物語たる。
これって現代風に言うと二次創作というやつでは!?

てっきり多情な男の恋物語ばかりなのかとおもいきや、友情物語や政治談義もあって、こちらもななかなの読み応え。

新日本古典文学大系版のもう一つの萌えポイントは、戦国時代から安土桃山時代にかけての武将でありながら、古典文学の研究や源氏物語の写本を作ったことでも知られる細川幽斎(1534~1610)の『伊勢物語』注釈書『伊勢物語闕疑抄』が同時収録されているところ。
万葉や古今をひいたり、源氏との共通点を見いだしたり、幽斎が『伊勢物語』をどう読んだかというのもまた興味深かった。


<新日本古典文学大系レビュー>
 落窪物語 
 枕草子
 源氏物語
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かもめ通信
かもめ通信 さん本が好き!免許皆伝(書評数:2235 件)

本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。

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