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ぱせりさん
ぱせり
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身一つの自由は爽快だが、代償は結構手強い。
身一つで、列車の連結器や屋根の上などに潜み、無賃乗車を繰り返し、アメリカ中、縦横無尽に放浪するホーボーに、ジャック・ロンドンは17歳の時になった。理由は、「身体の中に生命力があったからであり、血のなかにいつも私を休ませまいとする放浪癖があったから」だ。


無賃乗車は危険だ。失敗すれば事故に巻き込まれて簡単に命を失う。列車に乗り込んだ制動手との小競り合いの末に列車から突き落とされて、これも最悪命を失う。冬には凍死する危険だってある。
そうした危険をくぐりぬけて無事に列車に潜り込むための、列車の守り手とのばかしあい(成功譚)は、痛快だった。


身一つで旅する放浪者は、食にありつくために物乞いをするのだけれど、即興のお涙頂戴の法螺話は、相手の反応を見ながら、ストーリーを都度都度変えていく。その巧みな舞台裏を見せられて、次はなにが出てくるかなと、あれ、期待している。


放浪罪で、留置場に入れられたこともある。30日の刑期をなるべく快適に過ごすためのしたたかな方便は、ただあきれるばかりだ。


卑屈さと狡猾さを身に着けて渡っていく放浪者たちは、ちんぴらであるけれど、多くの場合は一匹オオカミであり、窃盗などの犯罪とは一線を引いた場所にいるのが、妙に清々しく感じて、憎めない。
(いや、無賃乗車、犯罪だった……)


社会の底辺層は、一般の市民にとっては人ではないのかもしれない。人びとは、本音を隠そうともしない。
身一つの自由は爽快だけれど、それを得るための代償は結構手強かった。
それでも、感じる眩しさは、この時代が一過性のもので、手の届かないところにあるからだろうか。
出会っては別れていった伝説の(?)放浪者たちは、その後どうしているのだろう。


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ぱせり
ぱせり さん本が好き!免許皆伝(書評数:1742 件)

いつまでも読み切れない沢山の本が手の届くところにありますように。
ただたのしみのために本を読める日々でありますように。

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