そうきゅうどうさん
レビュアー:
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描き方が非常に繊細で、注意深く読まないと何が語られているのか分からない。まさに「空気を読む」ように読まなければならないのがジャクスン作品であり、本書に収録されたジャクスンの魂を宿す作品もまた同じだ。
魔女と呼ばれた作家、シャーリイ・ジャクスン。この『穏やかな死者たち シャーリイ・ジャクスン・トリビュート』は、まさにそのジャクスンに捧げられた(=トリビュート)短篇集である。編者であるエレン・ダトロウは「序文」で、本書を編集することになった経緯をこのように書いている。
本書には18篇が収められている。
私はジャクスン作品として『くじ』と『山荘奇譚(丘の屋敷)』しか読んだことがないが、ジャクスンは恐怖の対象をほのめすように、あるいは暗示するように描くところに特徴がある。その描き方は非常に繊細で、注意深く読まないと何が語られているのか分からない。まさに「空気を読む」ように読まなければならないのがジャクスン作品であり、本書に収録されたジャクスンの魂を宿す作品もまた同じだ。若い頃の私はそういう読み方ができず、『くじ』も途中で読むのを止めてしまったが、歳を取ったせいか、今はやっとジャクスンの面白さが分かるようになった。なので、本書も面白く読むことができた。
収録された18篇はどれも粒ぞろいの名品だが、以下、収録作の中から取り分け印象に残った作品について、いくつか紹介する。
1人の女の子供時代から大人になった時までを断片的に描いた「百マイルと1マイル」は、短いが本書の中で私のイチオシ作品。
過去にトラウマを抱えた女性記者が、取材のためにかつて住んでいた島を訪ねる「鬼女」は、収録作の中で一番描写が具体的で、読んでいると映像が頭に浮かぶ。
ある家庭内の物語「ご自由にお持ちください」は、人によっては単なるフィクションではなく、リアルな体験として持っているかもしれない。
子供時代の思い出と現在とが交錯する「柵の出入り口」は、ホラーではなくまさに奇譚と呼ぶにふさわしい!
不気味な印象を残す作品が多い中、知り合いに頼まれて彼女の家の留守番をすることになった学生の体験した出来事が語られる「スキンダーのヴェール」は、非常にユーモラスで「奇妙な味」の、味わい深い1篇。
2019年7月のリーダーコン──ボストン郊外で開かれるSFおよびファンタジー文学のコンペティション──に出席した際、わたしは文学的影響についてのディスカッションに参加した。リーダーコンではシャーリイ・ジャクスン賞が発表されるため、当然ながらジャクスンに関する話題も出て、そのとき彼女の作品に感化された物語のアンソロジーを編纂してはどうかと思いついた──が、その考えを先に進めることはなかった。こんな風に、単なる思いつきが突然、思わぬ形で実現してしまう辺り、まるでジャクスンが見えない糸を引いていたようではないか。:(;゙゚'ω゚'):
ところが……2,3か月後、ダブリンで開催された世界SF大会でタイタン社の編集者と知り合いになった。最初の会話はアンソロジー全般についてだったが、11月までに──思いがけず──その編集者と同僚たちから、ジャクスンの影響を受けた物語のアンソロジーを編まないかと持ちかけられた。そこでもちろん、イエスと答えた。
本書には18篇が収められている。
このアンソロジーに収める作品として、ジャクスンの物語の焼き直しは求めなかった。彼女自身や彼女の人生についての物語も求めなかった。わたしが求めたのは、寄稿者がジャクスンの作品のエッセンスを自作にとり入れること。彼女と同種の感受性を発揮すること。穏やかな外観の下にある異様なものやダークなものを表現すること。(中略)わたしが求めたのは、ジャクスン自身が語っているように、「恐怖を利用すること、それをとり上げ、理解し、働かせること」だ。
私はジャクスン作品として『くじ』と『山荘奇譚(丘の屋敷)』しか読んだことがないが、ジャクスンは恐怖の対象をほのめすように、あるいは暗示するように描くところに特徴がある。その描き方は非常に繊細で、注意深く読まないと何が語られているのか分からない。まさに「空気を読む」ように読まなければならないのがジャクスン作品であり、本書に収録されたジャクスンの魂を宿す作品もまた同じだ。若い頃の私はそういう読み方ができず、『くじ』も途中で読むのを止めてしまったが、歳を取ったせいか、今はやっとジャクスンの面白さが分かるようになった。なので、本書も面白く読むことができた。
収録された18篇はどれも粒ぞろいの名品だが、以下、収録作の中から取り分け印象に残った作品について、いくつか紹介する。
1人の女の子供時代から大人になった時までを断片的に描いた「百マイルと1マイル」は、短いが本書の中で私のイチオシ作品。
過去にトラウマを抱えた女性記者が、取材のためにかつて住んでいた島を訪ねる「鬼女」は、収録作の中で一番描写が具体的で、読んでいると映像が頭に浮かぶ。
ある家庭内の物語「ご自由にお持ちください」は、人によっては単なるフィクションではなく、リアルな体験として持っているかもしれない。
子供時代の思い出と現在とが交錯する「柵の出入り口」は、ホラーではなくまさに奇譚と呼ぶにふさわしい!
不気味な印象を残す作品が多い中、知り合いに頼まれて彼女の家の留守番をすることになった学生の体験した出来事が語られる「スキンダーのヴェール」は、非常にユーモラスで「奇妙な味」の、味わい深い1篇。
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「ブクレコ」からの漂流者。「ブクレコ」ではMasahiroTakazawaという名でレビューを書いていた。今後は新しい本を次々に読む、というより、過去に読んだ本の再読、精読にシフトしていきたいと思っている。
職業はキネシオロジー、クラニオ、鍼灸などを行う治療家で、そちらのHPは→https://sokyudo.sakura.ne.jp
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- 出版社:東京創元社
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- ISBN:9784488584078
- 発売日:2023年10月10日
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