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たけぞう
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数学者の伝記風の創作です。難解。
全五篇の短篇集です。有名数学者を題材に取り、伝記のように書いた創作です。なにそれ、混乱すると思ったのですが、考えてみると日本にもありますね。原田マハさんの絵画シリーズが同じ立ち位置ですね。そうであれば、奇人と言われた近現代の数学者のエピソードが使われた、読み物として楽しめばいいのだという答えになりました。ただしわたしには難解だったのですけど。

アインシュタインが超のつく奇人だったことは知っている人が多いでしょう。学校の成績はあまりよくない話も有名です。この作品にもしばしば出てくるエピソードに、途中経過は分からないけど、いきなり答えにたどり着いたという数学者の話があり、何かの天才だということは伝わりました。

一般相対性理論の方程式に対して、最初に厳密解にたどりついたシュヴァルツシルトは、ドイツ陸軍中尉だったりします。シュバルツシルトの得られた結果に、シュヴァルツシルトの特異点と呼ばれるものがあり、数学的にブラックホールの存在の可能性にたどり着いたのでした。物語はシュバルツシルトの変人ぶりと、数学の業績との話がごたまぜになって進んでいくのです。

多大な数学的業績を持ちながら、人と接するのが嫌で隠遁生活を送ったグロタンディーク。初めて聞く名前でした。

シュレーディンガーの猫の話は有名ですが、当時理論的にやりあっていたハイゼンベルグや、ルイ・ド・ブロイといった数学者たちの話とともに語られます。

相対性理論の周辺にある物理視点の数学になじみのある人は楽しめると思います。でもわたしは、物語の本質は数学にはないかもしれないと勝手に思っています。何かが行間から伝わってくるのです。第一次世界大戦後の世界で、ユダヤ人を取り巻く民族差別を匂わせている作品があります。日本人の私たちから見ると、特に引っかからないエピソードがあるようで、それが欧州人に刺さっているから非常に有名な賞に取り上げられたのかもしれません。

数学の場面は難しいし、物語の背景も日本人にはピンときにくいかもしれないしという、海外小説ならではの楽しみ方のある本でした。最近の日本のリーダビリティ確保とは真逆をいく、わたしにとっては手を焼いた一冊となりました。物語の根底をつかみ損ねた感触があり、無念です。
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たけぞう
たけぞう さん本が好き!免許皆伝(書評数:1468 件)

ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。

自己紹介ページの二番目のアドレスは「飲んでみた」の書評です。
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この書評へのコメント

  1. かもめ通信2025-03-27 08:13

    私の個人的な感覚で、それも最近余り新刊を読めていないので少々古いかもしれませんが、エクス・リブリスはどちらかというと実験小説的な作品が多く“読み解きづらさ”も売りなのでは…という気が。
    読みやすさという点ではやはり、新潮クレスト・ブックスが群を抜いているという気がします。
    それぞれに持ち味があるので、どちらが良いという話ではないのですが。

  2. たけぞう2025-03-27 14:30

    >かもめ通信さん
    そうですね、もうちょっと本文の表現を工夫すればよかったですかね? 日本の小説では味わえない難解さを楽しむことを伝えたかったのです。白水社ならではの尖ったシリーズで、たまにチャレンジしています、はい。

  3. かもめ通信2025-03-28 15:13

    丁度、校正者の牟田都子さんがこんなつぶやきをなさっていたので、思わずいいね!ボタンをおしてしまいました。
    https://x.com/s_mogura/status/1905488720079585648

  4. たけぞう2025-03-28 17:17

    >かもめ通信さん
    まさに! こんな気持ちが自分のなかにはあって、たまにエクス・リブリスのチャレンジをするのですが、わたしの書評が記載不十分ですね。コメントありがとうございます。

  5. かもめ通信2025-03-28 17:27

    なんだかすみません。私の方こそコメントの仕方が悪かったみたいですね。
    批判する意図はまったくありませんので。

  6. No Image

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