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たけぞう
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前衛的すぎて理解不能。
文章は分かります。でも物語の世界観が分かりません。読めば読むほど物語がちぎれていくのです。野間文芸新人賞受賞作とのことですが、この作品の次作が芥川賞を受賞し、順番が前後してようやくこの本が発行されたのです。読んでみて、出版社の懸念が分かります。売れるか心配だったのでしょう。

この作品は、物語として成立しているようには思えません。著者の価値観が散らばっていて、一般読者ではつなぐことが困難です。でも文章力はあります。つまり、何かが書いてあるけれど、何を書いてあるのか分からないという、典型的な前衛小説なのです。もし芥川賞を受賞していなかったら、出版されたのかは分かりません。

半分まで読み進んだところで、かなり読速が落ちていました。偶然ですが、中日新聞/東京新聞の日曜版でこの本の書評が載って助けられました。ずいぶん褒めてありました。実際、その書評はよくまとまっていて、読みこなしている感があったのです。抜粋になりますが、引用元を付して紹介しますね。
2024.5.12中日新聞/東京新聞 読書特集(毎週日曜版)より、長谷部浩氏(評論家)文より抜粋
九段理恵による新たな創成期は、旧人類と新人類が地球で入れ替わるとき、馬が両人類を魅惑していく様子をその場に立ち会っているかのように語る。(略)
原始時代と現代を自在に往復する構成。ヒトはウマと出合うことによって、遥かな距離をまたぎ、速度に酔う快楽を手に入れた。自動車や航空機ではない。インターネットでもない。本書は、同じ動物として、異種に触れるときの衝撃を描く。文明の根源に何があったかを教えてくれる。(略)
「だからこそ、詩。もっと詩が欲しい」(略)
“始めに言葉ありき”。新約聖書「ヨハネによる福音書」の第一章が思い出される。著者の志の高さに打ちのめされた。
なんだか、野心的な作品だということが伝わり、この作品の後半を読了する原動力となりました。結局、理解できたとは言えませんが、世界観の一つの解釈を聞けていいガイドになりました。

馬に乗れ

文中で、何かを暗示するキーセンテンスとして何度か登場する一文です。この作品で、著者が人間の思考形態や価値観に関心を持ち、人間らしくという常識に疑問があることが伝わってきました。だから芥川賞受賞作のAIの話になるのかもしれないと、読んでいて連想しました。

人間の原風景、原記憶を探るため、馬との会話が重要なテーマになっています。神の存在もちらつきます。でも、答えを示さないのは、これまで読んだ作品と同じでした。著者は、これは何なのだろうと読者に投げかけて、ざわつかせたままで終わるという作風を好むのかもしれません。

難しい一冊でした。星をつけるのはやめます。自分は理解できない作品だったので、星の数で誤解を与えたくないのです。
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たけぞう
たけぞう さん本が好き!免許皆伝(書評数:1468 件)

ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。

自己紹介ページの二番目のアドレスは「飲んでみた」の書評です。
三番目のアドレスは「お絵描き書評の部屋」で、皆さんの「描いてみた」が読めます。
四番目のアドレスは「作ってみた」の書評です。
よかったらのぞいてみて下さい。

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