たけぞうさん
レビュアー:
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六話の連作短篇です。著者が得意な嫌われ者の話です。
勘違い系の嫌な人を書くのがとても上手な作家さんです。一時期追いかけていましたが、だんだん息苦しくなってきて遠ざかっていました。書誌情報を見て、いけそうな感じがしたので久しぶりに手に取りました。この本も、嫌な人が出てくる世界でしたが、短篇なのでなんとか読み切れました。非常にうまくまとまっているので、はまる人はいると思います。
人は、自分にとって正しいことをしたいと思うものです。逆に、自分のしたことが正しいことだと思い込む習性があり、認知バイアスと呼ばれる現象があるのです。調べてみたら、自分は正しいと補強するために、自分の意見に合う仮説や想定を集めることが確証バイアスの定義なので、よく分かりました。思い当たること、ありますよね。
物語のキーワードは、認知バイアスです。ほかの作品にも散見されるので、著者が深層心理的に引っかかっていることなのかもしれません。微妙に嫌な作品が揃っているのですが、わたしはスター誕生という一篇が気になりました。補足ですが、「微妙に」嫌ということであって、「とても」ではないですよ。作品世界を駄目と思っておらず、これはこれという趣味の違いという認識です。
You Tuberの話です。しげるという年金暮らしの独居老人が配信しています。工夫次第で豊かに暮らせるというコンセプトが受けている人です。語り手は、配信を見ていた真木です。昔はアイドルグループのメンバーで、固定ファンもいたのに、無難すぎる存在感が災いしてどんどん埋もれている途中です。そんな時、しげるのバズり動画に目が釘付けになりました。起死回生の一打になると、思ったのです。
その動画は、しげるの配信に映り込んだ母子の話です。偶然だったので、確認させてくれと女性がしげるに声をかけます。しかし、微妙に上から目線のしげるの受け答えに、女性はだんだんヒートアップし、最後は振り切れて激昂してしまったのです。不思議と、逆に面白くなっちゃうような怒りぶりで、たたみかけ具合が妙にリズム感がよく、歯切れがいい気持ちよさがあったのです。MCワンオペ。動画の女性に、ネットがつけたあだ名が秀逸で、いっきに広まったのでした。
真木はぴんとくるものがあり、MCワンオペの女性とコラボをしようと考え始めます。探しているうちに、だんだんと雲行きが怪しくなりという展開です。まあ、結末はちょっと考えれば当たり前なのですが、自分が正しいと信じ込むと見落とすという、なかなか罪な展開が書かれていました。
考えさせられましたね。SNS社会の問題の本質をずばっと突いているように思います。作家さんの観察力は鋭いです。
人は、自分にとって正しいことをしたいと思うものです。逆に、自分のしたことが正しいことだと思い込む習性があり、認知バイアスと呼ばれる現象があるのです。調べてみたら、自分は正しいと補強するために、自分の意見に合う仮説や想定を集めることが確証バイアスの定義なので、よく分かりました。思い当たること、ありますよね。
物語のキーワードは、認知バイアスです。ほかの作品にも散見されるので、著者が深層心理的に引っかかっていることなのかもしれません。微妙に嫌な作品が揃っているのですが、わたしはスター誕生という一篇が気になりました。補足ですが、「微妙に」嫌ということであって、「とても」ではないですよ。作品世界を駄目と思っておらず、これはこれという趣味の違いという認識です。
You Tuberの話です。しげるという年金暮らしの独居老人が配信しています。工夫次第で豊かに暮らせるというコンセプトが受けている人です。語り手は、配信を見ていた真木です。昔はアイドルグループのメンバーで、固定ファンもいたのに、無難すぎる存在感が災いしてどんどん埋もれている途中です。そんな時、しげるのバズり動画に目が釘付けになりました。起死回生の一打になると、思ったのです。
その動画は、しげるの配信に映り込んだ母子の話です。偶然だったので、確認させてくれと女性がしげるに声をかけます。しかし、微妙に上から目線のしげるの受け答えに、女性はだんだんヒートアップし、最後は振り切れて激昂してしまったのです。不思議と、逆に面白くなっちゃうような怒りぶりで、たたみかけ具合が妙にリズム感がよく、歯切れがいい気持ちよさがあったのです。MCワンオペ。動画の女性に、ネットがつけたあだ名が秀逸で、いっきに広まったのでした。
真木はぴんとくるものがあり、MCワンオペの女性とコラボをしようと考え始めます。探しているうちに、だんだんと雲行きが怪しくなりという展開です。まあ、結末はちょっと考えれば当たり前なのですが、自分が正しいと信じ込むと見落とすという、なかなか罪な展開が書かれていました。
考えさせられましたね。SNS社会の問題の本質をずばっと突いているように思います。作家さんの観察力は鋭いです。
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ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。
自己紹介ページの二番目のアドレスは「飲んでみた」の書評です。
三番目のアドレスは「お絵描き書評の部屋」で、皆さんの「描いてみた」が読めます。
四番目のアドレスは「作ってみた」の書評です。
よかったらのぞいてみて下さい。
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- 出版社:新潮社
- ページ数:0
- ISBN:9784103355335
- 発売日:2024年03月21日
- 価格:1760円
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