たけぞうさん
レビュアー:
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#共和国 ずっと読みたかった戯曲。
ショートカット先「祝! #共和国 10周年読書会」参加書評です。
わたしが三文オペラを知ったのは二つの作品との出会いです。一つは、井上ひさしさんの日本三文オペラ。日本と冠していることに引っかかり、確認したら本家の三文オペラがあることが分かりました。もう一つは、手塚治虫さんの漫画、七色いんこです。有名な手塚作品が多い中で、わたしは七色いんこは隠れた名作だと思っています。演劇の漫画です。その中で本作が取り上げられていました。場末の貧しい人たちが、馬鹿馬鹿しくもしぶとく生きていく感じで紹介されているのが、なんとも魅力的だったんですよね。相当な年月で、わたしのこころの中に残っていましたから。この書評で、七色いんこを読む人がいたら嬉しいです。
共和国の発行者の下平尾さんは、武田麟太郎の日本三文オペラと、開高健の日本三文オペラを読んで、いつか本作を読みたいと思っていたそうです。わたしと入口は違いますが、アプローチは同じですね。いったい、何作の日本三文オペラがあることやら。その影響力を考えるだけでも、とんでもない作品だと分かります。
本作は、全三幕のオペラです。いまのオペラとは少し違い、セリフの場面が七割、歌が三割ぐらいの配分です。最初の場面は、ピーチャムの乞食の友社での面接風景です。面接にきたのはフィルチ。ピーチャムの会社に行けと言われて顔を出したのです。よくよく話を聞いてみると、フィルチがある地区で乞食をやったところ、勝手なことをするなと締められてしまったのです。だから顔役にすがろうとしたのですが、なんと締めた張本人がピーチャムのメンバーだったという、あららという展開です。
いまや乞食もビジネスです。どうやって稼ぐかを熱く語るピーチャム。そのピーチャムの娘が、町の大悪党と結婚するなんて言い出すものだから、今度はそちらでてんやわんやです。
まっとうな人間なんて一人も出てきません。でも、ブルジョアジーたちに搾取された人たちの成れの果てだと行間から伝わってくるので、第一次世界大戦後のごたまぜの世の中での、エネルギッシュに満ちあふれたクソ社会感でぱんぱんに膨れ上がっています。微妙な皮肉や、悪人になり切れない馬鹿さ加減が妙に人間くさくて、むき出しの生命力を見せつけられる作品です。
巻末に、著者による舞台演出上の補足と、解説が二本、翻訳者による解説が一本あります。補足・解説パートはかなりページを割いていますよ。わたしは、翻訳者の解説が参考になりました。時代背景を知ることができて、この作品の理解に役立ちました。なぜこの戯曲が名作であり続けるのか、イメージできたんですね。
喜劇は最も高尚なジャンルだと井上ひさしさんが力説していたことを思い出しました。この作品がまさにその通りなのです。
わたしが三文オペラを知ったのは二つの作品との出会いです。一つは、井上ひさしさんの日本三文オペラ。日本と冠していることに引っかかり、確認したら本家の三文オペラがあることが分かりました。もう一つは、手塚治虫さんの漫画、七色いんこです。有名な手塚作品が多い中で、わたしは七色いんこは隠れた名作だと思っています。演劇の漫画です。その中で本作が取り上げられていました。場末の貧しい人たちが、馬鹿馬鹿しくもしぶとく生きていく感じで紹介されているのが、なんとも魅力的だったんですよね。相当な年月で、わたしのこころの中に残っていましたから。この書評で、七色いんこを読む人がいたら嬉しいです。
共和国の発行者の下平尾さんは、武田麟太郎の日本三文オペラと、開高健の日本三文オペラを読んで、いつか本作を読みたいと思っていたそうです。わたしと入口は違いますが、アプローチは同じですね。いったい、何作の日本三文オペラがあることやら。その影響力を考えるだけでも、とんでもない作品だと分かります。
本作は、全三幕のオペラです。いまのオペラとは少し違い、セリフの場面が七割、歌が三割ぐらいの配分です。最初の場面は、ピーチャムの乞食の友社での面接風景です。面接にきたのはフィルチ。ピーチャムの会社に行けと言われて顔を出したのです。よくよく話を聞いてみると、フィルチがある地区で乞食をやったところ、勝手なことをするなと締められてしまったのです。だから顔役にすがろうとしたのですが、なんと締めた張本人がピーチャムのメンバーだったという、あららという展開です。
いまや乞食もビジネスです。どうやって稼ぐかを熱く語るピーチャム。そのピーチャムの娘が、町の大悪党と結婚するなんて言い出すものだから、今度はそちらでてんやわんやです。
まっとうな人間なんて一人も出てきません。でも、ブルジョアジーたちに搾取された人たちの成れの果てだと行間から伝わってくるので、第一次世界大戦後のごたまぜの世の中での、エネルギッシュに満ちあふれたクソ社会感でぱんぱんに膨れ上がっています。微妙な皮肉や、悪人になり切れない馬鹿さ加減が妙に人間くさくて、むき出しの生命力を見せつけられる作品です。
巻末に、著者による舞台演出上の補足と、解説が二本、翻訳者による解説が一本あります。補足・解説パートはかなりページを割いていますよ。わたしは、翻訳者の解説が参考になりました。時代背景を知ることができて、この作品の理解に役立ちました。なぜこの戯曲が名作であり続けるのか、イメージできたんですね。
喜劇は最も高尚なジャンルだと井上ひさしさんが力説していたことを思い出しました。この作品がまさにその通りなのです。
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ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。
自己紹介ページの二番目のアドレスは「飲んでみた」の書評です。
三番目のアドレスは「お絵描き書評の部屋」で、皆さんの「描いてみた」が読めます。
四番目のアドレスは「作ってみた」の書評です。
よかったらのぞいてみて下さい。
この書評へのコメント
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書評一覧を取得中。。。
- 出版社:共和国
- ページ数:0
- ISBN:9784907986490
- 発売日:2018年10月20日
- 価格:2200円
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