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ぽんきち
レビュアー:
名探偵にして認知症患者。異色の安楽椅子探偵が謎の向こうに「物語」を見る。
『名探偵のままでいて』の続編。

楓の自慢の祖父は聡明でミステリ通。昔は小学校の校長を務め、子供たちにも慕われていた。だが、そんな祖父は実はレビー小体型認知症患者でもある。時折、幻視や記憶障害が出る、進行性の認知症だ。調子が良いときと悪いとき、一進一退を繰り返しながら徐々に悪化していくのがこの病気の特徴で、楓はハラハラしながら祖父を見守っている。
そんな祖父が楽しみにしているのが、楓が持ち込む「謎」を解くこと。病気になる前の祖父が戻ってくるようで、楓にとってもかけがえのない時間である。
祖父は楓の話を聞いた後、タバコを1本くゆらせ、謎の向こうにある真相の「物語」を語り始める。

連作短編で5つの物語が語られる。
日常の謎的なものであったり、人の死を伴う重いものであったり。
お話のプロットには若干甘さがあるように思うのだが、全体に品の良い仕上がりである。ヒッチコックやパトリシア・ハイスミス、ロバート・A・ハインラインといった古典ミステリへのオマージュがたっぷり含まれているのが大きい。著者がそれらの作品を本当に愛しているのが伝わり、それが読後感の良さにつながっている。

本作の大きな流れとして、前作で解決したかと思われていた事件が真の解決に至っていなかったことがわかる。その顛末には少々絶句する。それに対して登場人物の1人が取る思い切った策にはさらに驚かされる。これは危なすぎる。
とはいえ、現実社会でも、この種の犯罪を止めるのは困難であるのかもしれない。何かよい手立てがあればよいのだが。

楓を挟む、岩田と四季の三角関係も読ませどころ。どちらにも決めきれないでいた楓だが、最終的にはどちらかに傾いているようである。さて、彼女はどちらを取るのか。

タイトルは、さらに病状が進みつつある祖父に向ける楓の心の叫びである。
続編が出るかどうかはわからないが、楓と祖父の幸せな時間ができるだけ長く続くよう、祈らずにはいられない。
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ぽんきち
ぽんきち さん本が好き!免許皆伝(書評数:1827 件)

分子生物学・生化学周辺の実務翻訳をしています。

本の大海を漂流中。
日々是好日。どんな本との出会いも素敵だ。

あちらこちらとつまみ食いの読書ですが、点が線に、線が面になっていくといいなと思っています。

「実感」を求めて読書しているように思います。

赤柴♀(もも)は3代目。
この夏、有精卵からヒヨコ4羽を孵化させました。そろそろ大雛かな。♂x2、♀x2。ニワトリは割と人に懐くものらしいですが、今のところ、懐く気配はありませんw

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