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くにたちきち
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超ベテランの霊長類の学者と、新進気鋭の動物行動学者の対談集です。
この本に書かれている「断片的トリ語集」から。種名 「トリ語」(意訳:鈴木)。

 エナガ「ジュリリ」(みんな近くにいてね)、「チュリリリ」(危ないよー)空にはオオタカ!

 シジュウカラ「ジャージャー」(ヘビがいるよ!)、「ヒヒヒ」(タカが飛んでるよ!)

 コガラ「ディーディー」(餌を見つけたよー)


また「断片的サル語集」から。種名 「サル語」(意訳:山極)

 チンパンジー「ウーホッ、ウーホッ」(食べ物を見つけたよー)

 ニホンザル「クー」(私はここにいるけど、あなたはどこ?)」

 ローランドゴリラのメス「ココ」は手話を教わり、2千語を超える単語を使いこなしていたそうです。その後、野生のオスゴリラを捕まえて、ココの仲間にして、「マイケル」と名付け、手話を教えたところ、それを覚えた、マイケルは捕らえられた時の様子を、飼育員に次のように語り始めたそうです。

「ボクは群れで暮らしていたんだけど、おかあさんは、密猟者に首を切られて殺され、ボクは手足を縛られて、棒にぶら下げられて、連れてこられたんだ」(鈴木「すごい!」)

このように、動物たちはおしゃべりで、それぞれの種の間では、会話をしていることが、近年になってわかって来たようです。サルなどでは、種を越えてヒトとの会話さえ成立していることが、最後の例でも明らかになっているようです。

そして、このことは鳥や霊長類ばかりでなく、昆虫類にも見られていて、有名なのは、ミツバチは仲間に、蜜をもつ花のたり、危険な生き物であるスズメバチの情報を伝えるために「ダンス」をしていることが分かっているそうです。

二人は、人間こそが動物の頂点であり、他の棒物たちはもっと下等な存在であるというのは、ヨーロッパ的な思い込みがあったからであり、今でも動物の言葉や心理についての研究は、どれも「動物はどれだけ人間に近づけているか」つまり、動物と人間との差分を測るスタイルであると話し合っています。

しかし、動物の言葉の研究は難しく、例えば「森の中だとあれほどおしゃべりなシジュウカラも、鳥かごの中だと全然鳴かなくなり、たまに外でさえずる別のシジュウカラの声に「オレの縄張りはここだぞ」と鳴き返すくらいだ」と鈴木はいいます。

それに対して、山極は「たとえば、ゴリラには少なくとも20数種の鳴き声があるのですが、動物園で聞けるのは5種類ぐらいで、ゴリラの言葉を研究するには、野外で調べないとだめなんです」と応えています。その理由は、動物園に入れると、外敵もいないし、仲間もいないので、安心しきっちゃって、反応も鈍るからだろうと推測しています。

このような対話ー1.おしゃべりな動物たち―を皮切りに、2.動物たちの心ー動物たちの言葉はどうして生まれたのか、文法はあるのか、ウソをつくのか、空想する能力はあるのか、―3.言葉から見える、ヒトという動物―ヒトという動物の言葉、言葉の暴走の末の戦争、―4.暴走する言葉、置いてきぼりの身体―動物研究から見えてくるヒトの本性、といった話題に縦横無尽に取り組んだ成果が、この本です。この本を読むと、動物の一種であるヒトの存在の小さいことがよく分かります。
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くにたちきち
くにたちきち さん本が好き!1級(書評数:780 件)

後期高齢者の立場から読んだ本を取り上げます。主な興味は、保健・医療・介護の分野ですが、他の分野も少しは読みます。でも、寄る年波には勝てず、スローペースです。画像は、誕生月の花「紫陽花」で、「七変化」ともいいます。ようやく、700冊を達成しました。

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