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かもめ通信
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人ならぬ者が見える娘と、人ならぬ者を連れた青年が出会えばなにかが起きることは必然で……。
時は大正。
ヒロインの瀧川鈴子は17歳。
少女と呼ぶには大人びているが、大人というほどには成熟しきっていない、完成間近の彫像のような美しさのある乙女だ。
侯爵家の末娘ではあるが、11歳で滝川家に引き取られるまで、貧民窟で生活していたことをはじめ少々複雑な過去を持つ。
変わっているといえばもう一つ。
彼女の趣味が怪談収集だという点もあげねばなるまい。

そんな彼女は、ある日、聞こえるはずのない三味線の音に悩まされているという夫人に呼ばれて、室辻子爵邸を訪れる。
そこで芸妓の幽霊を見、さらにはその幽霊を十二単を着た女が食ってしまう場面に出くわしてしまう。
その十二単を着た女を連れてきたのは、青年実業家で神職にもあるという二十代半ばの青年、き花菱男爵だった。

人ならぬ者が見える娘と、人ならぬ者を連れた青年。

その最初の出会いで花菱男爵は鈴子に求婚し、あれよあれよという間に外堀が埋められて、二人は婚約すること。
そんな二人があれやこれやの怪奇と向き合うことになるのは必然だった。

次々登場する幽霊譚に加え、十二単を着たなにかに関する秘密もあり、主役の二人それぞれに暗くて重い過去もあって、とかなり重たい話のはずが、継母や異母姉兄たちにいじめられるどころか、おもいっきりかわいがられている鈴子の実家の様子をはじめ、上手い具合に明るいトーンも盛り込まれていて、後味悪くなく読み進められる。

『後宮の烏』の著者による新シリーズと聞いて、試しに1巻だけ…と読んでみたのだが、この調子だと、早晩続きにも手を伸ばしてしまうに違いない。
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かもめ通信
かもめ通信 さん本が好き!免許皆伝(書評数:2235 件)

本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。

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