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かもめ通信
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質量共に充実したアンソロジー。(以下敬称略でお届けします)
SFは苦手だ、短篇は苦手だ、と昔から言い続けているにもかかわらず、ここ数年来、中華SFアンソロジーときくとついつい手を伸ばしてしまうというぐらい、中華SFにはまっている。

ましてや本書の編者は翻訳家としてもお馴染みの作家立原透耶。
そうきけば、本好きにはたまらない表題作だけでなく、ロマンティックにも期待でき、ジェンダーストレスの心配もしなくていいに違いないと、否が応でも期待が高まる。

そうして読み始めると、巻頭作「生命のための詩と遠方」にすっかり心をもっていかれた。
作品のテーマは地球環境問題なのだろう、そうだろうけれど、とにもかくにも海の底が気になりすぎる!

地球環境、ジェンダー、パンデミック、進化論、歴史改編等々、様々なテーマの、いろいろな風味が味わえる本書の収録作品は全部で15篇。
すべて異なる作家による作品で、1980年代に書かれた「死者の口づけ」を除いて、まさに「現代」の比較的新しい作品が並んでいる。

ちなみに40年前に書かれたという「死者の口づけ」だが、コロナ時代を思わせるパンデミックもの。
だからこそのセレクトなのだろうが、まるで預言かと思わせるところがすごい!と思ったら、旧ソ連で実際に起きた事件を元にした作品だとの注釈にいろんな意味で衝撃を受けた。

本好きなら誰もが気になるだろう「宇宙の果ての本屋」は、なんと、500年の間に訪れた客が2人だけ、しかも読みに来たというが買っていったかどうかは明らかにされていないという閑散とした本屋なのだが、一つ前の「人生を盗んだ少女」の余韻に浸りながら読むと、異なる作者の全く違ったテイストの作品にもかかわらず、相乗効果でより深く味わえる気がするから不思議だ。
こういうところも、アンソロジーならではの魅力なのかもしれない。


<収録作品>(「作品名」著者/訳者) ※特に気に入った作品には★をつけた。

★「生命のための詩と遠方」 顧適/大久保洋子訳
・「小雨」 何夕/浅田雅美訳
・「仏性」 韓松/上原かおり訳
・「円環少女」 宝樹/立原透耶訳
・「杞憂」 陸秋槎/大久保洋子訳
・「女神のG」 陳楸帆/池田智恵
★「水星播種」 王晋康/浅田雅美訳
★「消防士」 王侃瑜/根岸美聡訳
★「猫嫌いの小松さん」 程婧波/立原透耶訳
・「夜明け前の鳥」 梁清散/大恵和実訳
・「時の点灯人」 万象峰年/大恵和実訳
・「死神の口づけ」 譚楷/林久之訳
・「一九二三年の物語」 趙海虹/林久之訳
★「人生を盗んだ少女」 昼温/阿井幸作訳
・「宇宙の果ての本屋」 江波/根岸美聡訳


<関連レビュー>
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かもめ通信
かもめ通信 さん本が好き!免許皆伝(書評数:2235 件)

本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。

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