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ぽんきち
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よかれと思ってやってるのに、なーんかうまくいかねぇんだよなー
作者はポルトガル人だが、アンゴラ生まれ、現在は東京在住。
誕生当時、アンゴラはポルトガル領。アンゴラ独立により、幼少時にポルトガルに「帰国」したという経歴である。

本作、ちょっとぎょっとするタイトルだが、この「死んで」は、「社会的な死」を意味する。
「くに」で何らかの不祥事を起こし、そこにいられなくなった主人公は、妻子を連れて「島」に不法入国した。けれども「島」では言葉が通じない。しっかり者の妻は何とか仕事を見つけるけれど、彼にはなかなか見つからない。頼みの綱は携帯電話。仕事なりなんなり、良い知らせがあるのを待っている。

ある日、「島」で買い物に出た一家は、地下鉄の故障で、まったく知らない場所で降ろされてしまう。
家に帰れない。
家に帰れなければ、妻は仕事にも行けない。
どうすりゃいいんだ。
不法入国者なので、警察にも頼れない。
一家は右往左往する。

物語の語り手は主人公=「俺」で、大半は「俺」のぐだぐだの愚痴である。
そもそも「くに」を出るきっかけになったのも彼のせいで、妻には頭が上がらない。
だけど、「俺」はよかれと思ってやったんだよー。「くに」でだってそうだ、「島」でだって、なんだってこうすりゃいいと思ってやってるのに、なんかうまくいかねぇんだ。
そんな男の脳内のつぶやきにつきあいながら、あらあらこの一家はどうなっちゃうの?と読者も一緒に彷徨う。

「異国」の地。言葉もわからない。仕事にもついていない彼は、「島」の人々にとってはいないも同然だ。けれど、彼は確かに生きていて、どうにかしようともがいている。
生活力があるとはいえないが、妻と子への愛は確かで、人並みに生きようという気持ちはあるのだ。

いささか笑ってしまうのだが、あまりの不運の連続に憤慨した彼は、ついに「神を殺す」。
いや、具体的に何かをするわけではない。ただ、彼の脳内の神を殺すのだ。
こんなに助けてくれない神様なんて、もう信じない。
ごまめの歯ぎしり的な復讐で、何だかちょっとおかしいけれど、でも一方でどこか共感もしてしまう。

さて、いろいろあった挙句に、一家は結局、警察に関わることになってしまうのだけれど。
物語の結末は読者の手に委ねられる。
しっかり者の妻がいつ彼を見限ってしまうのか、ハラハラしながら読み進めたけれど、さて、妻は彼とどこまで一緒にいてくれるのだろうか。
一家の行く先に幸福があるとよい。そこに「神」がいなくても。
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ぽんきち
ぽんきち さん本が好き!免許皆伝(書評数:1827 件)

分子生物学・生化学周辺の実務翻訳をしています。

本の大海を漂流中。
日々是好日。どんな本との出会いも素敵だ。

あちらこちらとつまみ食いの読書ですが、点が線に、線が面になっていくといいなと思っています。

「実感」を求めて読書しているように思います。

赤柴♀(もも)は3代目。
この夏、有精卵からヒヨコ4羽を孵化させました。そろそろ大雛かな。♂x2、♀x2。ニワトリは割と人に懐くものらしいですが、今のところ、懐く気配はありませんw

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