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くにたちきち
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本書は、1940年から46年にかけて、フランスに滞在し、第二次世界大戦が始まってからも、脱出せずにフランスに留まった日本人たちを追跡し、戦争と個人との関係を描こうとした歴史ドキュメンタリーの労作です。
表紙の写真は、全く別の事柄を調べていた筆者が、ロンドンにある帝国戦争博物館の写真資料室で、偶然見つけた「東洋人のおじさん」の写真だそうです。「レジスタンス活動家がよく巻いているような腕章をつけた若い男がおじさんをとりおさえ、右腕と後ろ襟は、ヘルメットを被った別の男がつかんでいる。おじさんは前のめりになっている。力ずくでどこかに連れていかれているように見える。」写真です。

このおじさんは何者なのか、を知りたくても、調べる方法の見当もつかず、十五年ほどが経ち、それを調べようと心に決める前に、筆者はインターネットで検索を始めたそうです。そして、24人を超える当時の在仏日本人を追跡調査して、まとめたのが、本書の成り立ちのようです。

この本の構成は、次の通りです。

はじめに・主な登場人物24人と彼らの職業など
第1章 パリ解放時の日本人ー「ほら、屋根の日本人の狙撃兵よ」
第2章 行政収容の対象となった残留日本人ー「大の親仏家だ」
第3章 パリで活躍した「もぐり新聞記者」ー「日本人は戦勝者と同盟している」
第4章 ラジオ番組『ニッポン』の制作者ー「同盟国である為一役買って」

第5章 街娼に身をやつした「日本料理店」の女主人ー「生きたって、どうせ屍同然でしょう」
第6章 インドシナ出身の対日協力者-「賢くならねばならない」
第7章 拷問され自殺をはかった陸軍事務所運転手ー「不要なものはすべて廃棄するように」
第8章 行政収容された画家とされなかった画家ー「恩を仇で返す」
第9章 神戸で対抗したフランス人技師ー「人間の限界は、・・・」

第10章 アメリカの保養地で抑留された一団-「実によい待遇」
第11章 マルセイユ、去った人と残った人ー「我々は日本の外交団だ、保護してくれ」
第12章 抑留を懐かしむ人びとー「みんなよくしてくれてね」
おわりに

筆者は、「東洋人のおじさん」として考えられる日本人を、15人に絞って確認作業をしたものの、結果的には特定することはできなかったようです。その途中で筆者が滞在していた、モロッコの首都、ラパスで知り合ったベトナム人女子留学生に、この写真を見せたところ、彼女は議論の余地なしという調子で「この人、絶対にベトナム人だよ」といったそうです。たしかに、その当時日本人以外にも多くの東洋人がいたことも事実のようです。そして、謎はついに解けませんでした。
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くにたちきち
くにたちきち さん本が好き!1級(書評数:778 件)

後期高齢者の立場から読んだ本を取り上げます。主な興味は、保健・医療・介護の分野ですが、他の分野も少しは読みます。でも、寄る年波には勝てず、スローペースです。画像は、誕生月の花「紫陽花」で、「七変化」ともいいます。ようやく、700冊を達成しました。

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