かもめ通信さん
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藤原道長『御堂関白記』、藤原行成『権記』、藤原実資『小右記』という三つの古記録から、平安貴族の実像に迫る!?
『源氏物語』関連の本を探しているとき、よくお見かけする著者はNHKの大河ドラマ「光る君へ」の時代考証を務めておられるのだそう。
NHK出版から出ているこの本もそういう関連で執筆されたものなのかなあと思ったら、2018年に全13回に渡って放送された「歴史再発見 日記が明かす平安貴族の実像」を文章化したものなのだそう。
藤原道長『御堂関白記』、藤原行成『権記』、藤原実資『小右記』という三つの古記録から、平安貴族の実像に迫るというコンセプト。
現存する自筆日記としては世界最古のものであるという道長の『御堂関白記』は、自分と後継頼道のために書かれた記録。
なかなかの悪筆で、その記述にもせっかちな性格が現れているように思えるのに、「誰それには何をどれだけあげた」とか「誰それに何をもらった」、「誰が来て、誰が来なかった」などの記載は非常に細かく、こうしたあげたもらった、来た来なかったといったやりとりが後々の人間関係に響いたであろうことが想像に難くなかったりもする。
現物が残っているので、書いた後に塗りつぶした箇所や、後に書き直したり、書き加えたりした箇所もわかり、そうした修正箇所さえも歴史や古典文学の研究に大いに役立つのだという。
『権記』を記した藤原行成は。字がうまく、誠実で正直で人柄が良い。
血筋からしても、摂政や関白になってもいいはずなのに、祖父も父も早世してしまったために、長く不遇の時代を過ごした人物。
なまじ優秀だったので一条天皇に気に入られ、通常は二、三年で参議に出世するはずの蔵人頭に七年も留め置かれてしまったりも。
そんな彼は人望も厚く、いろいろな人から秘密を打ち明けられる機会も多かったようで、本当は誰にも言ってはいけない様な話も『権記』に堂々と記していたりも。
誰それの打ち明け話や自らが秘密裏に立ち回った顛末などをしっかり記録しておいたのは、そうした秘密を握ることが、自分の子孫にとってプラスになると考えたからだろうと著者は分析する。
最もこの戦略、余りうまくはいかなかったらしく、行成の子孫は政治の世界では出世できなかったようだ。
他方、藤原実資は『小右記』を基に儀式書を後世に残したいと考えて、宮廷行事の次第を記録していたのだという。
何年の何日にはこういう儀式をこのような式次第で行うべき…そういう手引書をつくれば、後世の人たちは皆、自分の日記を基に動くことになる。
これは壮大な野望だったと著者は分析。
実資は実際に当時から儀式に関する情報を提供することで重宝がられ、利を得ていたそうなので、そういう立ち回りもありなのかと感心しきり。
それぞれの日記から得られる情報はもちろんのこと、同時代のタイプの異なる古記録を比べてみることで明らかになるあれこれも、コンパクトにまとめられていて、なかなかに興味深い一冊だった。
NHK出版から出ているこの本もそういう関連で執筆されたものなのかなあと思ったら、2018年に全13回に渡って放送された「歴史再発見 日記が明かす平安貴族の実像」を文章化したものなのだそう。
藤原道長『御堂関白記』、藤原行成『権記』、藤原実資『小右記』という三つの古記録から、平安貴族の実像に迫るというコンセプト。
現存する自筆日記としては世界最古のものであるという道長の『御堂関白記』は、自分と後継頼道のために書かれた記録。
なかなかの悪筆で、その記述にもせっかちな性格が現れているように思えるのに、「誰それには何をどれだけあげた」とか「誰それに何をもらった」、「誰が来て、誰が来なかった」などの記載は非常に細かく、こうしたあげたもらった、来た来なかったといったやりとりが後々の人間関係に響いたであろうことが想像に難くなかったりもする。
現物が残っているので、書いた後に塗りつぶした箇所や、後に書き直したり、書き加えたりした箇所もわかり、そうした修正箇所さえも歴史や古典文学の研究に大いに役立つのだという。
『権記』を記した藤原行成は。字がうまく、誠実で正直で人柄が良い。
血筋からしても、摂政や関白になってもいいはずなのに、祖父も父も早世してしまったために、長く不遇の時代を過ごした人物。
なまじ優秀だったので一条天皇に気に入られ、通常は二、三年で参議に出世するはずの蔵人頭に七年も留め置かれてしまったりも。
そんな彼は人望も厚く、いろいろな人から秘密を打ち明けられる機会も多かったようで、本当は誰にも言ってはいけない様な話も『権記』に堂々と記していたりも。
誰それの打ち明け話や自らが秘密裏に立ち回った顛末などをしっかり記録しておいたのは、そうした秘密を握ることが、自分の子孫にとってプラスになると考えたからだろうと著者は分析する。
最もこの戦略、余りうまくはいかなかったらしく、行成の子孫は政治の世界では出世できなかったようだ。
他方、藤原実資は『小右記』を基に儀式書を後世に残したいと考えて、宮廷行事の次第を記録していたのだという。
何年の何日にはこういう儀式をこのような式次第で行うべき…そういう手引書をつくれば、後世の人たちは皆、自分の日記を基に動くことになる。
これは壮大な野望だったと著者は分析。
実資は実際に当時から儀式に関する情報を提供することで重宝がられ、利を得ていたそうなので、そういう立ち回りもありなのかと感心しきり。
それぞれの日記から得られる情報はもちろんのこと、同時代のタイプの異なる古記録を比べてみることで明らかになるあれこれも、コンパクトにまとめられていて、なかなかに興味深い一冊だった。
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本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
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- 出版社:NHK出版
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- ISBN:9784140887073
- 発売日:2023年10月10日
- 価格:1023円
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