たけぞうさん
レビュアー:
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芥川賞候補作。性別というアイデンティティ。
ショートカット先「月面文字翻刻一例」を初めて読んだとき、個性的な作風が気になりました。もともと、月面文字翻刻一例の書評でチェックしていたのですが、Blueが芥川賞候補になったことで慌てて読み始めた作家さんです。先の書評ではジェンダーを扱った短篇の評価で迷っており、その系譜にあるこの作品で理由が分かりました。著者は性別による区分けに強い関心を持っているようです。
表紙を開くと、本文の最初に題名があります。その裏に、こんな注意書きがありました。
もし本当に注意書きが必要なのだとしたら、世の中は偏見に満ちていて、寛大と不寛容の二極化が進んでいることになります。SNSトラブルの話も聞きますし、炎上もあるし、自分が思っているより深刻な事態に陥っている気がしてなりません。
たしかにトランスジェンダーの人は出てきました。貧困の問題は、軽く触った程度です。メンタルヘルスは、たまたまトランスジェンダーの人と絡めての心理状態でしたが、結びつけて注意書きする必要性は感じませんでした。
題材は、高校演劇部の自主脚本の、人魚姫LGBTQ+版です。性別で人間をラベリングすることに著者が強い疑問を持っていることが伝わりました。しかし前のめりになりすぎています。第一章は登場人物の会話形式として、発言者を苗字で書き、男性的な口調を意識させる雰囲気がありました。第二章では表記を名前に変えて、大半は女性だと伝え、読者に混乱をぶつけてきます。読者目線では読みづらいですし、外面的なミスリードから入っていることに、かえって陳腐さを感じたのです。
わたしの直感ですが、著者の書いた世界は頭の中で作り上げた感じがして、違和感がありました。表記による性別ミスリードのせいでそう思ったのかもしれません。真に迫るものが欠けている気がしたのです。でも、題材にはちゃんと向き合っていました。むしろ、トランスジェンダーなんて書かずに、読者が読み取ってくれると信じて書けばよかったと思います。取り組むテーマも、著者のテーマに対するリスペクトの姿勢も素晴らしいと思いましたので、次作に期待します。
表紙を開くと、本文の最初に題名があります。その裏に、こんな注意書きがありました。
本作には、トランスジェンダーに対する差別的な言動を描いたシーンがあります。また、トランスの人々が抱えるメンタルヘルスや貧困の問題への言及が含まれています。そうなんだ、LGBTQ+に触れるんだと読む前の心構えができました。でも、読後にこう思いました。言い訳めいた注意書きは本当に必要だったのですかと。
もし本当に注意書きが必要なのだとしたら、世の中は偏見に満ちていて、寛大と不寛容の二極化が進んでいることになります。SNSトラブルの話も聞きますし、炎上もあるし、自分が思っているより深刻な事態に陥っている気がしてなりません。
たしかにトランスジェンダーの人は出てきました。貧困の問題は、軽く触った程度です。メンタルヘルスは、たまたまトランスジェンダーの人と絡めての心理状態でしたが、結びつけて注意書きする必要性は感じませんでした。
題材は、高校演劇部の自主脚本の、人魚姫LGBTQ+版です。性別で人間をラベリングすることに著者が強い疑問を持っていることが伝わりました。しかし前のめりになりすぎています。第一章は登場人物の会話形式として、発言者を苗字で書き、男性的な口調を意識させる雰囲気がありました。第二章では表記を名前に変えて、大半は女性だと伝え、読者に混乱をぶつけてきます。読者目線では読みづらいですし、外面的なミスリードから入っていることに、かえって陳腐さを感じたのです。
わたしの直感ですが、著者の書いた世界は頭の中で作り上げた感じがして、違和感がありました。表記による性別ミスリードのせいでそう思ったのかもしれません。真に迫るものが欠けている気がしたのです。でも、題材にはちゃんと向き合っていました。むしろ、トランスジェンダーなんて書かずに、読者が読み取ってくれると信じて書けばよかったと思います。取り組むテーマも、著者のテーマに対するリスペクトの姿勢も素晴らしいと思いましたので、次作に期待します。
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ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。
自己紹介ページの二番目のアドレスは「飲んでみた」の書評です。
三番目のアドレスは「お絵描き書評の部屋」で、皆さんの「描いてみた」が読めます。
四番目のアドレスは「作ってみた」の書評です。
よかったらのぞいてみて下さい。
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- 出版社:集英社
- ページ数:0
- ISBN:9784087718669
- 発売日:2024年01月17日
- 価格:1650円
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