DBさん
レビュアー:
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宴席での作法と料理の本
古代ローマではどんなものを食べていたのだろうか。
そんな疑問を追求したのが本書の著者のパトリック・ファースです。
国際的に著名な食物史研究家でありシェフで、テレビで古代の料理の復元を試みてもいるそうだ。
本書では第一部はローマの歴史と食の関係について考察しており、第二部はレシピ集になっています。
「この本には古代ローマのレシピを載せていますが、それは歴史的興味をそそるからであって、現代のわたしたちの味覚に合うという保証はありません」と関係者一同からの注意書きが添えられているが、どんな味だったのか気になるところではある。
この古代ローマの料理については、まずペトロニウスの『サテュリコン』に出てくるトリマルキオの饗宴のシーンを丹念に読み進めていく。
盛大なディナーショーのように、料理にも様々な仕掛けが施されて客を驚かせることこのうえない。
それにティベリウス帝の時代の料理人アピキウスのレシピ本や、大カトーやプリニウスの著作から食にまつわる話をいろいろと取り出しています。
時代を考えると昭和初期と令和の食卓をまとめて語っている気がしなくもないが、ラビッジやラーセルといった聞きなれない植物の名前やどんな味がするのか想像もできない食材が並んでいて興味深い。
一番印象に残ったのは、チーズの説明で山羊と羊のチーズが最上だが馬、ロバ、ラクダだけでなく野ウサギや鹿のチーズも作られていたということだった。
犬や猫のように乳首が四つ以上ある動物のミルクはチーズに適さないそうですが、野ウサギのミルクなんてどうやって集めていたんだろう。
あとローマ人は豆好きで、キケロ家の名前はひよこ豆のキケル、レントゥールス家はレンズ豆のレンス、ファビウス家はソラマメのファバが家名の由来だとか。
もともとローマ人は農耕民族で、野菜を作って食べることを喜びとしていて肉を食べるのは犠牲獣を捧げた時だけだったが、それが肉食の美味にはまり宴席で様々な珍しい肉が供されるまでになったそうです。
古代ローマの食事風景といえば寝椅子に寝そべって食べているシーンが思い浮かぶが、これにも宴席の時には席次があり様々なルールがあったという。
寝椅子で大量の御馳走を食べて酒を飲んでいたら間違いなく寝落ちそうだが、料理を提供するのも横になって指でつまんで食べるというスタイルに合わせたものになるだけに寝椅子文化の影響も考慮すべき点だ。
後半のレシピの部分では、オーブンで何分焼くとかまで書いてあるので実際に作ってみた料理のレシピなんだろうと思う。
ローマで有名な調味料ガルムのつくり方ももちろん書かれています。
どうせなら作ってみて味はどうだったのかとか食材の調達についても詳しく書いてあればもっと楽しめたのにと思う。
食の探究は古代も現代も変わりないのだなと思った本でした。
そんな疑問を追求したのが本書の著者のパトリック・ファースです。
国際的に著名な食物史研究家でありシェフで、テレビで古代の料理の復元を試みてもいるそうだ。
本書では第一部はローマの歴史と食の関係について考察しており、第二部はレシピ集になっています。
「この本には古代ローマのレシピを載せていますが、それは歴史的興味をそそるからであって、現代のわたしたちの味覚に合うという保証はありません」と関係者一同からの注意書きが添えられているが、どんな味だったのか気になるところではある。
この古代ローマの料理については、まずペトロニウスの『サテュリコン』に出てくるトリマルキオの饗宴のシーンを丹念に読み進めていく。
盛大なディナーショーのように、料理にも様々な仕掛けが施されて客を驚かせることこのうえない。
それにティベリウス帝の時代の料理人アピキウスのレシピ本や、大カトーやプリニウスの著作から食にまつわる話をいろいろと取り出しています。
時代を考えると昭和初期と令和の食卓をまとめて語っている気がしなくもないが、ラビッジやラーセルといった聞きなれない植物の名前やどんな味がするのか想像もできない食材が並んでいて興味深い。
一番印象に残ったのは、チーズの説明で山羊と羊のチーズが最上だが馬、ロバ、ラクダだけでなく野ウサギや鹿のチーズも作られていたということだった。
犬や猫のように乳首が四つ以上ある動物のミルクはチーズに適さないそうですが、野ウサギのミルクなんてどうやって集めていたんだろう。
あとローマ人は豆好きで、キケロ家の名前はひよこ豆のキケル、レントゥールス家はレンズ豆のレンス、ファビウス家はソラマメのファバが家名の由来だとか。
もともとローマ人は農耕民族で、野菜を作って食べることを喜びとしていて肉を食べるのは犠牲獣を捧げた時だけだったが、それが肉食の美味にはまり宴席で様々な珍しい肉が供されるまでになったそうです。
古代ローマの食事風景といえば寝椅子に寝そべって食べているシーンが思い浮かぶが、これにも宴席の時には席次があり様々なルールがあったという。
寝椅子で大量の御馳走を食べて酒を飲んでいたら間違いなく寝落ちそうだが、料理を提供するのも横になって指でつまんで食べるというスタイルに合わせたものになるだけに寝椅子文化の影響も考慮すべき点だ。
後半のレシピの部分では、オーブンで何分焼くとかまで書いてあるので実際に作ってみた料理のレシピなんだろうと思う。
ローマで有名な調味料ガルムのつくり方ももちろん書かれています。
どうせなら作ってみて味はどうだったのかとか食材の調達についても詳しく書いてあればもっと楽しめたのにと思う。
食の探究は古代も現代も変わりないのだなと思った本でした。
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好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。
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- 出版社:東洋書林
- ページ数:0
- ISBN:9784887217355
- 発売日:2007年05月01日
- 価格:4180円
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