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ぷるーと
レビュアー:
果てしない男の欲望と絡み合う女の情念を描いた清張の社会派ミステリ。
上下巻合わせての書評です。

そのセンスのよさと技術で人気が出て来て独立を考えていた美容師の佐山道夫は、彼のファンである証券会社の社長夫人と深い仲になり新店舗の費用を出してもらった。さらに、彼を指名していた女性雑誌の編集者の枝野幸子を誘惑して、彼女の口利きで人気タレントのヘアデザイナーとなり、名をあげていった。

ところが、幸子が思っていた以上に佐山にのめり込み、嫉妬から要らぬ勘ぐりで佐山を煩わせ、仕事に支障をきたすまでになった。さらに、社長夫人が多額の金を使っていることが夫にばれて返済を迫ってきた。そして、ついに、佐山は幸子にとんでもない秘密を握られ、結婚を迫られる。

貧しい生まれの佐山道夫が、おのれの野望のために次々と女性をたぶらかしのし上がっていく。おもしろいのは、そんな佐山が決してハンサムとはいえなないごく普通の容貌をしているというところだ。ハンサムではないし派手な格好をしているわけでもない。だが、その服装のどこかにきらりと光るものがある。佐山は、確かに美的センスがあったのだろう。

その美的センスに拠って、自分はどこまでも上っていけると思ってしまった。それが、佐山の悲劇だったのかもしれない。

そんな佐山を追い詰めていく桑山検事。彼の推理は最初はいささか強引な感じもするが、検事の捜査によって過去の事件も明らかになっていくという筋書きになっている。

佐山の野望と、彼を取り巻く女性たちの情念と思惑。清張は、現代に置き換えても同じようなことが起こり得る時代を越えた人間の本質を描いていて、文体や背景はちょっと古いが今読んでも十分面白い。
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ぷるーと
ぷるーと さん本が好き!1級(書評数:2932 件)

 ホラー以外は、何でも読みます。みなさんの書評を読むのも楽しみです。
 よろしくお願いします。
 

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