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ぱせりさん
ぱせり
レビュアー:
満月になったら、森のビーバー池にアイスホッケーをやりにいく
12月、初雪が降る前というのに気温がマイナス20度になる町で、子どもたちは満月の晩を待っている。
森の中のビーバー池に、アイスホッケーをやりにいくのだから。


どっさり雪が降る。月が満ちてくる。
そして、とうとう、その日が来る。


その日までの待ち遠しさも、その日の夕方、闇の森を歩くことも、そして、鏡のような池で汗びっしょりになるほどの夢中のアイスホッケーや、岸辺の篝火、雪を沸かしてみんなで飲む紅茶も、どれもどれも、なんだか夢みたいに明るい。


だけど、何よりも心に残るのは、子どもらを包む闇のあたたかさ。
温かいわけないでしょう。マイナス20度を軽く越える夜であるのに。
だけど、闇は、くるまったマントのように温かく感じる。木々の向こうにいるかもしれない動物の気配も、子どもらを照らす親し気な満月も。
きんとした冷たささえも含めて、やはり、温かい、と感じるのは、子どもたちの満ち足りた気もちによるのだろうか。


ぎざぎざと尖ったようなタッチの線、白と深い藍が主体の背景に、子どもらの服装に赤や黄色が控え目に混ざるのが、命通ったものが今通りますよ、という感じで明るく感じる。
子どもたちの顔は、目鼻があるかなきかという程度にしか描かれていないが、その表情が見えるような気がする。声が聞こえるような気がする。
彼らの興奮や満足が、手に取るように伝わってくる。ベッドに入った後にも。


いま、子どもらが消えた森を名残惜しく振り返っている。

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ぱせり
ぱせり さん本が好き!免許皆伝(書評数:1743 件)

いつまでも読み切れない沢山の本が手の届くところにありますように。
ただたのしみのために本を読める日々でありますように。

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