休蔵さん
レビュアー:
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本書は2022年4月16日から6月12日まで九州国立博物館で開催された特別展「北斎 日新除魔図の世界」の図録。
 主要な展覧会の図録が市販されるようになり、間接的ながら気軽に行くことのできない地域の展覧会に触れる機会が増えてきた。
以前は国立の機関の展覧会なのに、開催地から遠いとどうにもならないと諦めていた。
税金は納めているのに・・・
でも市販されるようになったおかげで、遠方の特別展を楽しめるようになった。
本書もそんな1冊で、2022年4月16日から6月12日まで九州国立博物館で開催された特別展「北斎 日新除魔図の世界」の図録である。
葛飾北斎を取り扱った書籍は数多く、展覧会も重ねられてきた。
北斎を銘打った美術館すら存在する。
それでも新たな切り口での展覧会が企画され続けている。
本書の切り口は「日新除魔図」ということになろうか。
これは北斎がほぼ毎朝、獅子や獅子舞などの描いた試みである。
その試みは天保13年(1842年)から始まったもので、83歳からのチャレンジという。
 
「日新除魔図」は国内外の複数の所蔵者のもとに伝わったといい、九州国立博物館は219点という膨大な数が存在するという。
この来歴も面白く、長らく存在は知られていたものの、秘蔵されていて全容は明らかになっていなかったそうだ。
しかし、平成29年(2017年)に古美術商である坂本五郎氏の遺志で寄贈されたという。
古美術商なのに、重要なものは国立の機関に寄贈する心意気に驚かされる。
それを受けての特別展ということになる。
「日新除魔図」は毎日描かれたものというが、219点ということで欠落した日のものもある。
ちなみに私の誕生日の作品は欠落・・・
しかも日が重なる作品もある。
じっくりと腰を据えて描いたものではなく、さらりと筆を走らせたもので、ユーモラスなものも多い。
83歳からのチャレンジとはとても思えないが、そもそも110歳まで絵師として頑張ろうとしていた北斎にとって、83歳はまだまだ新たな表現を求めて当たり前という認識だったのだろう。
見たい美術品の実物をすべて見ることはなかなか叶わない。
自由に使えるお金と時間が有り余っていれば良いのだが、そんなわけにはいかない。
美術の専門家だったら見る機会がある展覧会は多いだろうが、そんな職業でもない。
たまたま自分の住む場所に来た展覧会を見て満足せざるを得ない。
図録を取り寄せることはできたが、送料はかかってしまう。
図録の市販は、そんな哀れな中年にささやかな光となってくれている。
本書には長野県小布施市の東町が所有する祭屋台の天井絵も掲載されている。
実物が見たくてもなかなか実現できていない作品で、最終章で登場して驚いた。
これが展示されていたのなら、無理でも旅行計画を立てるべきだったかと少しばかり後悔した。
図録を手にしなかったらせずに済んだ後悔だったか・・・とも思ったが、それでもやはり他地域で開催された特別展の図録がすんなり手にできるのはありがたいと思う。
本書には北斎の作品が数多く掲載されている。
「日新除魔図」が軸ではあるが、それだけに終始せず、独自の切り口で北斎を見せてくれる。
展覧会を見ることができた人たちを羨む気持ちを抱きながらではあったが、じっくりと楽しむことができる1冊だった。
市販の図録には、これからも期待したい。
以前は国立の機関の展覧会なのに、開催地から遠いとどうにもならないと諦めていた。
税金は納めているのに・・・
でも市販されるようになったおかげで、遠方の特別展を楽しめるようになった。
本書もそんな1冊で、2022年4月16日から6月12日まで九州国立博物館で開催された特別展「北斎 日新除魔図の世界」の図録である。
葛飾北斎を取り扱った書籍は数多く、展覧会も重ねられてきた。
北斎を銘打った美術館すら存在する。
それでも新たな切り口での展覧会が企画され続けている。
本書の切り口は「日新除魔図」ということになろうか。
これは北斎がほぼ毎朝、獅子や獅子舞などの描いた試みである。
その試みは天保13年(1842年)から始まったもので、83歳からのチャレンジという。
「日新除魔図」は国内外の複数の所蔵者のもとに伝わったといい、九州国立博物館は219点という膨大な数が存在するという。
この来歴も面白く、長らく存在は知られていたものの、秘蔵されていて全容は明らかになっていなかったそうだ。
しかし、平成29年(2017年)に古美術商である坂本五郎氏の遺志で寄贈されたという。
古美術商なのに、重要なものは国立の機関に寄贈する心意気に驚かされる。
それを受けての特別展ということになる。
「日新除魔図」は毎日描かれたものというが、219点ということで欠落した日のものもある。
ちなみに私の誕生日の作品は欠落・・・
しかも日が重なる作品もある。
じっくりと腰を据えて描いたものではなく、さらりと筆を走らせたもので、ユーモラスなものも多い。
83歳からのチャレンジとはとても思えないが、そもそも110歳まで絵師として頑張ろうとしていた北斎にとって、83歳はまだまだ新たな表現を求めて当たり前という認識だったのだろう。
見たい美術品の実物をすべて見ることはなかなか叶わない。
自由に使えるお金と時間が有り余っていれば良いのだが、そんなわけにはいかない。
美術の専門家だったら見る機会がある展覧会は多いだろうが、そんな職業でもない。
たまたま自分の住む場所に来た展覧会を見て満足せざるを得ない。
図録を取り寄せることはできたが、送料はかかってしまう。
図録の市販は、そんな哀れな中年にささやかな光となってくれている。
本書には長野県小布施市の東町が所有する祭屋台の天井絵も掲載されている。
実物が見たくてもなかなか実現できていない作品で、最終章で登場して驚いた。
これが展示されていたのなら、無理でも旅行計画を立てるべきだったかと少しばかり後悔した。
図録を手にしなかったらせずに済んだ後悔だったか・・・とも思ったが、それでもやはり他地域で開催された特別展の図録がすんなり手にできるのはありがたいと思う。
本書には北斎の作品が数多く掲載されている。
「日新除魔図」が軸ではあるが、それだけに終始せず、独自の切り口で北斎を見せてくれる。
展覧会を見ることができた人たちを羨む気持ちを抱きながらではあったが、じっくりと楽しむことができる1冊だった。
市販の図録には、これからも期待したい。
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 ここに参加するようになって、読書の幅が広がったように思います。
 それでも、まだ偏り気味。
 いろんな人の書評を参考に、もっと幅広い読書を楽しみたい! 
この書評へのコメント
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書評一覧を取得中。。。
- 出版社:講談社
- ページ数:0
- ISBN:9784065265864
- 発売日:2022年04月18日
- 価格:2970円
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