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efさん
ef
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女性のためだけに作られた薬局があった
 物語は二軸で展開します。
 一つは18世紀末のロンドンを舞台にした、歳を経た女性薬剤師の物語。その薬剤師の名前はネッラ。彼女は母親から受け継いだ薬局を営んでいるのですが、自分の代になり、毒薬も密かに売るようになったのです。
 顧客は女性限定。世の中には虐げられた女性たちが沢山いる、そんな女性たちの中には夫やその他の者を殺したいと真剣に考えている人がいるという信念の下、店の奥の隠し部屋で密かに毒薬を売っていたのです。

 もう一つの軸は現代。キャロラインという女性が主人公です。彼女は、ロンドンへの結婚記念旅行を計画していたのですが、その出発直前に夫の浮気が発覚します。
 激怒した彼女は、夫としばらく離れていたいという気持ちもあり、一人だけでロンドンへの旅行に出てしまうのです。

 キャロラインは、何をするでもなくロンドンの街を歩いていたのですが、その時、『泥ヒバリ』のツアーに誘われます。『泥ヒバリ』というのは、テムズ川を漁り、昔の遺物などを見つけるというものでした(実際に18世紀頃のロンドンでは、子供たちが川を漁って金目の物を拾うという『泥ヒバリ』がいたのです)。

 何気なく参加したツアーで、キャロラインは昔の薬瓶のようなものを拾います。その瓶には熊のマークが描かれているだけで、どんなものかは分かりませんでした。
 もともと歴史などにも興味があったキャロラインは(その自分の夢も、夫のために捨てたという忸怩たる気持ちを抱えていたのです)この薬瓶の来歴を調べ始めます。。
 キャロラインは、大英博物館の職員の手助けも借りながら、少しずつこの薬瓶の正体に迫っていくのです。

 一方のネッラですが、夫を殺したいという女性の使いでやって来たメイドのイライザと知り合い、イライザを気に掛けるようになっていきます。
 ところが、次の依頼がネッラ、イライザの運命を狂わせてしまうのです。
 ある上流階級の婦人が毒薬を注文してきたので用意して待っていたところ、その女性は夫が浮気をしているのでその相手の女性を毒殺したいと言うのです。
 私は女性のためにこの仕事をしているのであり、いくら浮気相手の女性だからと言え、女性を殺す手助けはできない……ネッラは用意していた毒薬を破棄してしまいます。

 しかし上流階級の婦人は引き下がらず、依頼を断るのならあなたのことを警察に密告すると脅し始めたのです。どうすることもできなくなったネッラは、イライザの助けも借りてもう一度毒薬を調合したのです。
 しかし、その毒薬が……。

 現代パートのキャロラインも夫に裏切られ、これまでの自分の人生を諦めてしまった女性として描かれますので、それがネッラたちの時代の虐げられた女性とオーバーラップしていくところもあります。

 キャロラインの調査はどんどん核心に迫っていき、ネッラの秘密の薬屋にたどり着きます。しかし、その時、キャロラインの身にもトラブルが……。

 ラストはちょっと意外な結末に持って来るのですが、後味を悪くしないためにはこれも良いのかな? と感じました。
 なかなか読ませる作品で、二軸が絡み合い、巧妙に書かれていると思います。
 結構お勧めでありますよ。


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□□□     普通(1~2日あれば読める)/421ページ:2025/03/17
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ef
ef さん本が好き!1級(書評数:4917 件)

幻想文学、SF、ミステリ、アート系などの怪しいモノ大好きです。ご紹介レビューが基本ですが、私のレビューで読んでみようかなと思って頂けたらうれしいです。世界中にはまだ読んでいない沢山の良い本がある!

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