かもめ通信さん
レビュアー:
▼
“本を読み、読んで書き、また読んで言葉と対話した想いを人に伝える”そうありたいなと私も思う。 今年もよろしくお願いします。
雑誌の連載や寄稿、文庫の解説、あの人この人への追悼文など、さまざまな媒体の注文に応じて生み出された52篇。
学生たちとのやりとりをモチーフにしたエッセイには、思わずクスッと笑ってしまったり、本気で頭を抱えたくなってしまったりする。
幸田文を読もう、小沼丹を読もう。
そしてあの本もこの本も再読してみようなどと思ったりもする。
正直に言えば、小説もエッセイもすごく好みなのに、堀江作品を紹介するのはすごく難しい。
けれどもやはり、
そもそも茶碗に珈琲をつぐなんてふつうの感覚ではありません、これはよほど古い時代の話だと思います、と彼女は言う。(「私はあたまをかかえた」)
学生たちとのやりとりをモチーフにしたエッセイには、思わずクスッと笑ってしまったり、本気で頭を抱えたくなってしまったりする。
魚が欲しいときに最初から素手でつかもうとせず、時間とお金をかけて道具をつくるほうが最終的にたくさんとれるという、経済学の譬えとおなじですよ。迂回生産てやつですね。なかなか厳しい大学事情もさることながら、文学を学ぶことの意義について考えさせられたりもする。
語学や文学は、迂回に支えられている。最終的には利益に結びつく話でも、利益の出る手前までの試行錯誤に重きを置いて、過程を自分のものにすればいいと考えることが許される。実学を標榜し、効率を求め、ファジーですら数値で制御しようとする職場で耳にした迂回の一語に、私は深く慰められた。(「遠回りの思想」)
時間に濾過された過去の自分は、ひとりの他者であり、
最も身近な他者が言葉にした感覚を、現在の自分はもう生の形で受け取ることができない(「叩くこと」)ということについて考えながら、妙に“腑に落ちた”気がしたりする。
幸田文を読もう、小沼丹を読もう。
そしてあの本もこの本も再読してみようなどと思ったりもする。
堀江敏幸氏の『中継地にて』を読んでいたら、プレヴェールの「朝の食事」が出てきて、思わず本棚から詩集を引き抜く。私はあたまをかかえた それから…… #只今読書中 pic.twitter.com/0lu6p8ZT9f
— かもめ通信 (@kamometuusin) December 9, 2023
堀江敏幸氏の『中継地にて』に収録されているタブッキ追悼文を読んだら、そういえばこれが書かれた経緯をどこかで読んだ気がして、本棚からユリイカを引っ張り出して、堀江×和田対談をじっくり読み返した。 #只今読書中 pic.twitter.com/BegA7kjemu
— かもめ通信 (@kamometuusin) December 18, 2023
正直に言えば、小説もエッセイもすごく好みなのに、堀江作品を紹介するのはすごく難しい。
けれどもやはり、
本を読み、読んで書き、また読んで言葉と対話した想いを人に伝えよう。(「言葉の池をつなぐ」)という呼びかけに、応えずにはいられない。
掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
- この書評の得票合計:
- 41票
| 読んで楽しい: | 9票 | |
|---|---|---|
| 参考になる: | 30票 | |
| 共感した: | 2票 | 
あなたの感想は?
投票するには、ログインしてください。
この書評へのコメント
 - コメントするには、ログインしてください。 
書評一覧を取得中。。。
- 出版社:中央公論新社
- ページ数:0
- ISBN:9784120057014
- 発売日:2023年10月23日
- 価格:2530円
- Amazonで買う
- カーリルで図書館の蔵書を調べる
- あなた
- この書籍の平均
- この書評
※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。






















