morimoriさん
レビュアー:
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生後間もなく里子に出された節子、九条家に戻った時からいや誕生した時から大正天皇の后になるという運命が決まっていたのかもしれない。
 植松三十里氏の「帝国ホテル建築物語」に感動したので他の作品も読んでみたくなり手に取った。皇室を舞台にした小説を珍しい思いでページを捲ったが予想以上に素晴らしい作品だった。
九条道孝公爵の三女として誕生した節子は、父道孝の方針で生後間もなく高円寺村の農家に里子に出された。5歳になった時、実家の九条家に戻され幼稚園、華族女学校へと進級するが元気で物おじしない少女へと成長していった。いっぽう、後に大正天皇となった13歳の嘉仁親王のお妃選びが始まっており、節子の姉籌子や伏見宮禎子、徳川経子が候補に挙がっていた。健康面が問題視され結局嘉仁親王のお妃に選ばれたのは節子だった。我が子を自らの手で育てることが叶わなかったり、親王の旅行に同行ができなかったりと数々の決まり事に納得はできずとも、節子は身体の弱い嘉仁親王を支え、子どもたちを育て、やがて皇后としての務めを果たしていった。
高貴な家柄の人が我が子を里子に出すという話は聞いたことがあったが、里親と別れる場面が細やかに描かれておりさらに、節子の輿入れの日、夫婦そろって村から出てきて手を振る養母の姿には胸を打たれた。我が子を自分の手で育てることのできない辛さ、養母と別れる時の辛さを思うと里子に出す意味があるのかと思ったが、成長した節子のふるまいは高円寺村で育ったからこそのたくましさ、優しさがそなわったのかもしれない。
大正天皇とともに、日本の平和を願っていてもドイツへ宣戦布告を認めざるを得なかったり、満州侵略と苦渋の決断を強いられた。その間にも、たびたび病に臥せることが多かった大正天皇を妻として支え、昭和天皇を母として見守り続けた貞明皇后は、明治、大正、昭和と激動の時代をたくましく生きた素晴らしい人だったのだと思う。天皇、皇后がもっとも信頼を寄せていた原敬が東京駅で右翼の男に刺され命を落としたこと。2.26事件、日本海軍の真珠湾攻撃、太平洋戦争と歴史を振り返りながら天皇家や貞明皇后の実像にふれることができたように思う。普段皇室のことに特に関心を持っている訳ではないが、この作品を読んで天皇陛下と雅子様との結婚会見で「全力でお守りします」と話されたあの言葉の意味も少しだけ理解できたようにも思った。
 
九条道孝公爵の三女として誕生した節子は、父道孝の方針で生後間もなく高円寺村の農家に里子に出された。5歳になった時、実家の九条家に戻され幼稚園、華族女学校へと進級するが元気で物おじしない少女へと成長していった。いっぽう、後に大正天皇となった13歳の嘉仁親王のお妃選びが始まっており、節子の姉籌子や伏見宮禎子、徳川経子が候補に挙がっていた。健康面が問題視され結局嘉仁親王のお妃に選ばれたのは節子だった。我が子を自らの手で育てることが叶わなかったり、親王の旅行に同行ができなかったりと数々の決まり事に納得はできずとも、節子は身体の弱い嘉仁親王を支え、子どもたちを育て、やがて皇后としての務めを果たしていった。
高貴な家柄の人が我が子を里子に出すという話は聞いたことがあったが、里親と別れる場面が細やかに描かれておりさらに、節子の輿入れの日、夫婦そろって村から出てきて手を振る養母の姿には胸を打たれた。我が子を自分の手で育てることのできない辛さ、養母と別れる時の辛さを思うと里子に出す意味があるのかと思ったが、成長した節子のふるまいは高円寺村で育ったからこそのたくましさ、優しさがそなわったのかもしれない。
大正天皇とともに、日本の平和を願っていてもドイツへ宣戦布告を認めざるを得なかったり、満州侵略と苦渋の決断を強いられた。その間にも、たびたび病に臥せることが多かった大正天皇を妻として支え、昭和天皇を母として見守り続けた貞明皇后は、明治、大正、昭和と激動の時代をたくましく生きた素晴らしい人だったのだと思う。天皇、皇后がもっとも信頼を寄せていた原敬が東京駅で右翼の男に刺され命を落としたこと。2.26事件、日本海軍の真珠湾攻撃、太平洋戦争と歴史を振り返りながら天皇家や貞明皇后の実像にふれることができたように思う。普段皇室のことに特に関心を持っている訳ではないが、この作品を読んで天皇陛下と雅子様との結婚会見で「全力でお守りします」と話されたあの言葉の意味も少しだけ理解できたようにも思った。
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多くの人のレビューを拝見して、読書の幅が広がっていくのが楽しみです。感動した本、おもしろかった本をレビューを通して伝えることができればと思っています。
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- 出版社:PHP研究所
- ページ数:0
- ISBN:9784569768434
- 発売日:2018年09月07日
- 価格:968円
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