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たけぞう
レビュアー:
認知心理学の人気講座からのプレゼント。
面白かったですね。イェール大学でシンキングという講座を開講している教授です。非常に人気を博していて、ついに本になったのです。読んで納得、いろいろと応用が利きそうな、ある意味で危険な本です。人間の本能による発想を半分ばらしていますから。

主なテーマは確証バイアスです。人間は自分に都合がいいように考える性質があり、著者はそれを徹底的に掘り下げています。理論よりも実践を重んじるスタイルなので、共感しやすいエピソードがいっぱい書いてあります。読もうと思ったのは図書館で人気が出ていたからで、口コミで広がっているのでしょう。お薦め度合いは非常に高いです。

著者は韓国出身で、イリノイ大学大学院で博士号を取得したあと、アメリカの大学で職を得て働いている人です。結婚もしていて、著作の中でしばしば子どもともエピソードが引用されます。身近なあるあるを用いて認知心理学を解説してあります。

とにかく分かりやすいのです。衝撃を受けました。すべての説明に深く納得しました。そして、著者が指摘するように、自分では分かっているはずなのに、本能的に認知バイアスがかかってしまうことも理解しました。

ポイントは、著者は認知バイアスの悪さだけでなく、良さについても示していることです。驚きましたね。わたしは、人間が適切な判断をしようとしても、認知バイアスによってずれるため悪いものと思っていました。だからどうやって回避するのかとしか思っていませんでした。

認知バイアスのよさの例としては、何かをずっとやり続けることです。石の上にも三年、継続は力なり。でもそれは、認知バイアスの力を借りて成り立つことなんですね。最初はこれが正しいと信じるけれど、続けていくうちにいろいろな負の要素が発生します。それを、きっと正しいんだと自分に言い聞かせ、信じ続けようとするのはまさに認知バイアスの力であり、つらい修行も乗り越えることができるのです。その瞬間の判断だけでは、継続は難しいのです。ほほぅ、言われて納得でしたわ。

ほかに面白いと思ったのは、徹底的に調べ上げることは、必ずしも幸福ではないかもしれないという著者の意見です。著者は心配性なのか、すべてを確認しないと気がすまない人のようです。しかし、最初にぱっと決めてしまえるタイプの人もいるわけで、分相応に満足した方がストレスがなくていい場合があるという話です。でも、あまり調べないと低いレベルでとどまる可能性もあるわけで、絶対にどちらが正しいという論調でないことにも好感を持ちました、

終盤で、著者は結果よりも過程を楽しみたいと書いていました。きっと、それが幸福でいられるための方法なのでしょう。下手くそでいいからと自分を受け入れる幸福の話に、深く賛同しました。大満足の一冊です。
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たけぞう
たけぞう さん本が好き!免許皆伝(書評数:1468 件)

ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。

自己紹介ページの二番目のアドレスは「飲んでみた」の書評です。
三番目のアドレスは「お絵描き書評の部屋」で、皆さんの「描いてみた」が読めます。
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よかったらのぞいてみて下さい。

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