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ぱるころ
レビュアー:
「つくること」…大切な思いを言葉にすること。自分だけの地図を更新し続けること。
建築家と思想家が「つくること」について語り合う往復書簡。形ある「物作り」に限らず、幅広い意味での「つくること」がテーマとなっている。
・光嶋裕介さん(1979年生まれ)…建築家/一級建築士
・青木真兵さん(1983年生まれ)…思想家/社会福祉士

二人は2013年、大学院ゼミの教授を中心とするコミュニティで知り合った。一緒にサッカー日本代表の試合を観ていたとき、あるシーンで共に天啓が降る感覚を得たという。それは、ミッドフィルダーの長谷部選手がゴール前まで上がってシュートを打った瞬間だった。

以来、「シュートを打つ」が二人の合言葉になる。
意味は、
「社会的な立ち位置や周囲からどう見られているかをいったん脇に置いて、その枠からはみ出したとしても
『やらねばならないときがある』
『言わねばならないことがある』
そう感じたとき行動を起こすこと」。


「つくること」について、青木さんは、思いを言葉にすることや声を発し続けること、光嶋さんは、自分だけの地図を更新し続けること、と表現している。往復書簡を通して語り合うのは、職業からの気づきや、自然と人間との共存など、人が生きる限り考え続け、つくり続けていくべきこと。ここでの「つくる」には、「直す」や「助ける」という意味も含まれているようだ。

最も印象的だったのは、光嶋さんの「安全地帯から発せられた言葉は空疎で響かない」という言葉。
一歩踏み出すべきときがある。危険を顧みず、周りのために勇気を持って発した言葉は、経験をつくり、信頼関係をつくり、もしかすると誰かの人生をつくるかもしれない。
私自身が最近、仕事で同じような場面に遭遇した。そんなときに私と同世代の著者が発信するこのメッセージは、とても心強く感じられた。


青木さんは2016年に奈良県吉野村へ移住。現在は障害者の就労支援をする傍ら、自宅に図書館を開いている。光嶋さんも青木さんも読書家で、影響を受けた書籍も往復書簡の中で多数紹介されている。

この本を見つけたとき、初めは装丁の可愛らしさに惹かれた。ページをめくってみると、手にフィットするサイズ感、ザラザラした紙の質感が何とも心地良く、手元に置いておきたい一冊となった。
書店で見かけたらぜひ、手に取ってみていただきたい。


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ぱるころ
ぱるころ さん本が好き!1級(書評数:147 件)

週1〜2冊、通勤時間や昼休みを利用して本を読んでいます。
ジャンルは小説・エッセイ・ビジネス書・自己啓発本など。
読後感、気付き、活かしたい点などを自分なりに書き、
また、皆さんからも学びたいと考え参加しました。
よろしくお願いします。

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この書評へのコメント

  1. hacker2023-09-18 15:43

    「安全地帯から発せられた言葉は空疎で響かない」

    これって「前衛」そのものですよね。参考になりました。

  2. ぱるころ2023-09-18 16:02

    hackerさん、コメントありがとうございます。
    もう少し詳しくお伝えすると、他人に対して批判的な意見を言わなければならない状況のとき、無難にやり過ごすのではなく自分の信念や思想を貫きたい、という意味も含めて書かれています。
    常に実行するのは難しいですが、良い言葉だと思いました。

  3. hacker2023-09-18 16:09

    なるほど。私も、実生活において「無難にやり過ごすのではなく自分の信念や思想を貫きたい」というのは大切なことだと思います。なかなか難しいのも承知していますが。

  4. No Image

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