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ぱせりさん
ぱせり
レビュアー:
ほのぼのとあたたかい、でも、これらは、そういう物語かといったら、そうではないような。
12篇の短編を読みながら感じたのは、ほのぼのとあたたかい……うん、それは確かにそうなのだけど。でも、これらの物語が、そういう何か明るいふうの物語かといったら、そうではないような気がするのだ。


無くて七癖、というが、七癖、という言葉ではすまないような、正直に「私ってそういうところがあるの」と言ったなら、おそらく相手は返答に困るような、狂気に近いような、人の感情の不気味さ。
12編のあの人この人、みんな違っているけれど、そういうものを、目に見ないところに隠し持って普通に生活している。額の真ん中に空いた暗い穴みたいなものも、黙っていれば、ないことにできる。見てしまっても、見なかったことにできる。そういうもの。
さらに進んでいけば、そこに共通して居座るのは、あまりに虚ろな世界、深い孤独であることに気がつく。


12編に感じる、ほのぼのとしたあたたかさは、たぶん、そういう暗い虚ろを、関係者たちが、見ないふりをしないこと、むしろ肯定的に受け取っていることから、生まれているように思う。


人と人との付き合いは、相手と面と向かい合うことばかりではない。互いの顔をまっすぐ見るのではなく、二人横に並んで、同じ光景を見る、そういう付き合い方のほうが心地いい時もある。
誰かと一緒にいて、自分のいびつさをわかってもらおう(あげよう)、分けて持ってもらおう(あげよう)とするよりも(それはきっと不可能だから)、相手もまた何かしらのいびつさを抱えてなんとかやっている同士なのだ、と共感すること、それだけで、ちょっと気持ちが上向くような気がしないだろうか、お互いに。


でも、やっぱり、そんな風に思える相手に出会うことって、貴重で稀で、ほんとうに繊細な出来事なのだ、と思う。
この本を読み終えて感じる「ほのぼのとあたたかい」は、そういうもの、と思う。



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ぱせり
ぱせり さん本が好き!免許皆伝(書評数:1742 件)

いつまでも読み切れない沢山の本が手の届くところにありますように。
ただたのしみのために本を読める日々でありますように。

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