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休蔵さん
休蔵
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近世城郭と言えば反り返りながらそびえる高石垣が象徴的だ。しかし、中世城郭は土を掘削して盛った山城が主体である。そこに石垣を設えることはある。本書は戦国時代の城と石垣に焦点を定めて論じた1冊である。
 近世城郭と言えば反り返りながらそびえる高石垣が象徴的だ。
 建造物の多くが喪失しているため史跡として保存されている城跡の場合、石垣こそが城の価値を今に伝えてくれる。
 他方、中世にさかのぼると土の城がメインということは、いまや広く知られている。
 地面を削って堀を築き、掘った土で土塁を巡らせるという、簡単だけど戦のために練りに練られた山城の数々。
 大がかりな山城の一つでも足を踏み入れると、その虜になること間違いない。
 それでは、土の城から石の城への転換点はどこに?
 本書は、転換点たる戦国時代の城と石垣に焦点を定めて論じた1冊である。

 重要となるのは戦乱という時代背景であり、織田信長である。
 高層な天守閣がはじめて築かれたという安土城。
 安土城は立地形態からは山城に分類されるが、防備を固めつつ、登城する人たちを威圧しながらも魅了することを主眼として、各所に石垣を築いている。
 近世城郭の原型は、やはり安土城で間違いなさそうである。
 そして、そのベースとなりそうな中世城郭が各地にある。

 高石垣とは言えないまでも、明確に石垣で防備を固めた中世城郭の数々。
 信長は安土城より以前に岐阜城を築いているが、そこにはすでに石垣を導入している。
 岐阜城への石垣導入は、斎藤道三が信長に先んじているそうだ。
 城はその立地条件と城主自身の権力具合、そして争乱の状況にあわせながら刻々と進化を遂げていく。
 築城を主導した大名の考えが反映されるところも大きかったと予想され、安土城に象徴されるの信長の功績はやはり大きいと考える。

 高層天守がそびえる、高石垣を擁する築城は安土城が最初ということだが、戦国時代の山城で石垣を備えることはあったようだ。
 それも近畿だけではなく、西日本の広域に。
 山城においては土留めという役割が大きかったのだろう。
 でも、人目に付く場所に備えられた石垣には、やはり見せる意図もあったと考える。

 近世城郭の高石垣は、それだけで人を魅了する。
 旅行目的のなかに城跡を組み込む人も多いだろう。
 天守はすでになくなってしまった城跡で見るべきはやはり石垣。
 ただ石が築き上げられているだけなんだけど、そこには石材の整形のあり方や積み方など、さまざまな技巧的工夫や変化を見ることができる。
 見方次第で楽しみ方の幅はいくらでも広がるだろう。
 そして、歴史という要素を加味すると、より楽しい城廻りができるに違いない。
 戦国時代の石垣を知ることは、近世城郭の魅力を知る最短距離かもしれない。
 そのためのガイドとして本書は最適と考える。
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休蔵
休蔵 さん本が好き!1級(書評数:451 件)

 ここに参加するようになって、読書の幅が広がったように思います。
 それでも、まだ偏り気味。
 いろんな人の書評を参考に、もっと幅広い読書を楽しみたい! 

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