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ぱせりさん
ぱせり
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大学の図書館で、ある朝、一年生のフィリップが死んでいるのが発見される
ケンブリッジ大学のセント・アガサ・カレッジには、正規の図書館のほかに、もうひとつ、十七世紀の大富豪によって寄贈されたウィンダム図書館がある。寄贈者の遺言により、奇妙で面倒な規則に縛られた図書館である。
このウィンダム図書館で、ある朝、一人の学生が死んでいるのが発見されるが、これは事故死なのか、殺人なのか……。
さらに、このときから、(この件について何かを知っているはずの)被害者のルームメイトの姿が消えてしまうのである。
探偵役は、学寮付きの保健師イモージェンで、彼女は友人の刑事部長マイクに協力する、という形で事件について調べ始める。


大学の独特の雰囲気が伝わってくる。
教授たち、さまざまなタイプの学生たちの活気あるやりとり。
学園都市の隅々まで美しい描写に、心弾む。
学生たちが下宿するイモージェンの小さな家は、居心地良さそうだ。話しやすいイモージェーンの性格に惹かれて、来訪者も後を絶たなない。


消えた学生の友人たちは、互いに結束し合い、牽制し合い、知っていることを隠している。警察への反抗心もあり、協力を求めるのは難しい。
彼らの気持ちをイモージェンはどのようにして開いていくのかが一つの見どころである。
事件は、警察に委ねたいものと、警察が入り込むべきではないものなどが、複雑に絡み合いながら、多重的な真相に向かっていく。


学問の府で、知識を硬化させたがり、科学の門戸をせばめたがる人たちも出てくる。科学や叡知が、あろうことか理性の進歩を阻むこともあるみたい。
そうした凝り固まった考えがまわりまわって、物語に絡んでくる嫌らしさ。


それであっても、ラストに灯された小さな光は、ひときわ明るい。あんなに小さいのに。作者がもともと児童書の作家さんであることにもよるかなあ、と思いつつ、ほっとしながら読み終えた。





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ぱせり
ぱせり さん本が好き!免許皆伝(書評数:1742 件)

いつまでも読み切れない沢山の本が手の届くところにありますように。
ただたのしみのために本を読める日々でありますように。

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参考になる:33票
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