たけぞうさん
レビュアー:
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著者の経験から生まれた左手移植の物語。
著者は現役の医師です。ショートカット先:「サンショウウオの四十九日」で芥川賞を受賞して名前が知られました。たぶん新聞書評だと思うのですが、わたしは惹かれるものがあり、チェックしていました。順番が前後しましたが、読めて嬉しいです。
最初の頁。ウクライナのドンバスで、語り手が不穏な動きをしています。背負っていたリュックからプラスチック爆弾を取り出しています。なにが起こっているのでしょうか。よく分からないまま物語は進み、一章につながっていきます。
第一章、語り手はアサト。本編の主人公です。病院のベッドで寝ています。徐々に目が覚めてきて、頭がはっきりするのに合わせて物語が見えてきます。左の上腕から腕全体が包帯でぐるぐると巻かれ、副子に固定されています。腕全体は布で包まれて吊られ、包帯の先端から五本のぶよぶよと腫れた指が飛び出ています。
この物語は左手の移植の話です。物語が開始してすぐに、移植手術後の場面から始まりました。臨場感にあふれていて、この描写は見てきた人にしか書けない迫力があります。
全体を通して、やや筆が走りすぎて分かりにくい部分があります。おそらく、著者自身が臓器移植に対する思いがあって、それが上手く伝わっていないような気がします。わたしの受け止め方ですが、著者は移植とは他人の体を取り込む行為であり、たんに臓器という機能を植え込むだけでなく、その臓器の持つ生命体としての意思みたいなものが付随すると考えているように思いました。
移植手術で拒絶反応を抑える免疫抑制剤の開発はあり得ると思いつつ、筋肉を筋繊維でつなぐことは無理ですから、関節を挟んで腱を固定する必要はあるはずなのです。おそらく、肘を起点につないだ設定なのですが、腱がクロスしますから、どうやって移植したのかなど、医療技術的な疑問は残りました。それでもなお、拒絶反応は人間精神面にも発生するという独自の設定を展開してくれたのは、著者にしかできないものだと思うのです。この作品の次に、芥川賞を受賞したことに納得しました。
最初の頁。ウクライナのドンバスで、語り手が不穏な動きをしています。背負っていたリュックからプラスチック爆弾を取り出しています。なにが起こっているのでしょうか。よく分からないまま物語は進み、一章につながっていきます。
第一章、語り手はアサト。本編の主人公です。病院のベッドで寝ています。徐々に目が覚めてきて、頭がはっきりするのに合わせて物語が見えてきます。左の上腕から腕全体が包帯でぐるぐると巻かれ、副子に固定されています。腕全体は布で包まれて吊られ、包帯の先端から五本のぶよぶよと腫れた指が飛び出ています。
この物語は左手の移植の話です。物語が開始してすぐに、移植手術後の場面から始まりました。臨場感にあふれていて、この描写は見てきた人にしか書けない迫力があります。
全体を通して、やや筆が走りすぎて分かりにくい部分があります。おそらく、著者自身が臓器移植に対する思いがあって、それが上手く伝わっていないような気がします。わたしの受け止め方ですが、著者は移植とは他人の体を取り込む行為であり、たんに臓器という機能を植え込むだけでなく、その臓器の持つ生命体としての意思みたいなものが付随すると考えているように思いました。
移植手術で拒絶反応を抑える免疫抑制剤の開発はあり得ると思いつつ、筋肉を筋繊維でつなぐことは無理ですから、関節を挟んで腱を固定する必要はあるはずなのです。おそらく、肘を起点につないだ設定なのですが、腱がクロスしますから、どうやって移植したのかなど、医療技術的な疑問は残りました。それでもなお、拒絶反応は人間精神面にも発生するという独自の設定を展開してくれたのは、著者にしかできないものだと思うのです。この作品の次に、芥川賞を受賞したことに納得しました。
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ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。
自己紹介ページの二番目のアドレスは「飲んでみた」の書評です。
三番目のアドレスは「お絵描き書評の部屋」で、皆さんの「描いてみた」が読めます。
四番目のアドレスは「作ってみた」の書評です。
よかったらのぞいてみて下さい。
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- 出版社:河出書房新社
- ページ数:0
- ISBN:9784309031125
- 発売日:2023年06月19日
- 価格:1760円
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