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ぽんきち
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怒涛の古事記。意外と原典準拠?
町田康による口訳古事記。
「古事記かー、部分的には知ってるけど、全部は読んだことないな。474頁、結構長いねぇ・・・。」と読み始めたが、いや、これが滅法読みやすい。怒涛の勢いである。河内弁なのだと思うが、何だかリズム感のある関西弁に乗せられてどっどどっどと読まされてしまうのだ。

伊耶那岐・伊耶那美の国産み。火の神を産んで命を落とした伊耶那美と、それを連れ戻そうとした伊耶那岐の黄泉の国の物語。
天界で暴れた須佐之男。それに怒った天照大御神が籠る天岩戸。
因幡の白うさぎと大国主神。
このあたりはそれぞれのお話としても比較的知られている方だろうか。どちらかというと文字通り神話の世界といった趣である。
これ以後は、天照大御神が邇邇芸命を地上に遣わし、この一族が、国内各地の抵抗勢力を制圧し、統べていく物語となる(海幸彦・山幸彦や倭建命のお話はこの後半部分に含まれる)。そういう意味では人間の歴史の匂いがする。邇邇芸命は天照大御神の孫にあたり、神といえば神なのだが、ある理由で不死ではなくなる。

町田版古事記は会話が大きな牽引力となって、物語をぐいぐい引っ張っていく。
手元に岩波文庫版の古事記があったので、ところどころ引き合わせて見てみたが、思った以上に事件自体は原典通りである。
攻める方は「殺すぞ、ボケ」といって進み、討たれる方は「いたいー」「いやよー」とやられてしまう。少々唖然とするのだが、しかし実際のところ、平定するということは、侵略と殺戮の連続なのである。特に会話部分での脚色はあるにはあるものの、実は意外と本質を突いているようにも思えてくる。制圧される方からすると、何だかよくわからない軍勢がやってきて、何だかよくわからないうちに負けてしまったりするわけである。

戦闘場面と並んで目立つのは、家系図にあたる記述。誰が誰と結婚し、誰と誰を産んだのか。
旧約聖書の創世記にもあるような、出自の記録だ。
AがBを娶り、CとDとEが生まれ、CはFを娶り、GとHとIとJが生まれ、というのが要所要所に差し挟まれる。

中央政府の史書として記録すべき大きな点は、誰が誰を制圧したか、そして誰が誰の子どもであるか、であるという印象を受ける。
つまりは、その系統に連なるものが「正統な」支配者であるという証として。

意外と血生臭い古事記。
ドライブ感のある文体がクセになる。


*岩波文庫版古事記では、古事記中の歌謡全句の索引があり、なるほど歌謡の意味も大きかったのだろうと思う。町田版では全部は拾ってはいないようだ。
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ぽんきち
ぽんきち さん本が好き!免許皆伝(書評数:1827 件)

分子生物学・生化学周辺の実務翻訳をしています。

本の大海を漂流中。
日々是好日。どんな本との出会いも素敵だ。

あちらこちらとつまみ食いの読書ですが、点が線に、線が面になっていくといいなと思っています。

「実感」を求めて読書しているように思います。

赤柴♀(もも)は3代目。
この夏、有精卵からヒヨコ4羽を孵化させました。そろそろ大雛かな。♂x2、♀x2。ニワトリは割と人に懐くものらしいですが、今のところ、懐く気配はありませんw

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