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hackerさん
hacker
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平成ガメラ+ひょっこりひょうたん島!
oldmanさんの書評で、この絵本のことを知りました。感謝いたします。

オランダのイラストレータ、マルク・ヤンセンが書いた2018年刊の本書の最大の特徴は、やはり無声絵本ということでしょう。

本の内容はというと、嵐で沈没した船に乗っていた、父親と女の子と犬がたどり着いた島は、実は大きなカメの甲羅でした、というものです。カメですから、同じ場所にじっとしていないで、熱帯から北極圏まであちこち動き回り、当然その甲羅で生活している家族も、一緒に移動します。そしてある日、別の大きな船に遭遇して、家族は助かるのですが、女の子はカメが自分たちを助けてくれたことを知っていて、その気持ちをある行動で表すのでした。

本書に言葉がないのは、絵を見ていれば、起こっていることが分かるからということもあるでしょうが、無声映画が映像だけで何かを表現しようとしたのが基本であったように、絵本も本来は絵だけで何かを表現できるものだという主張が見えるようで、私のような映画ファンは大変好感が持てます。

本書カバーの解説によると、マルク・ヤンセンは「1997年より子ども向けの絵本やイラストの仕事をはじめる。これまで手がけた作品はのべ450冊以上におよぶ。2016年からはオリジナル作品もてがける」とあります。日本には、本書が初紹介なので、断言はできないのですが、この解説を読むと、そもそもお話作りより、作画を志向していた作家のようです。それが如実に現れた本のようです。

とにかく、絵が色彩に満ち、楽しく、美しい本です。同時に、自然の中で、人間がいかに矮小な存在であるかも、しっかり表現されています。ですから、女の子が最後にカメに示す感謝の気持には、自然若しくは地球全体に対するものがあるのでしょう。


ところで、動く島という設定は、もちろん『ひょっこりひょうたん島』を連想させますね。そして、平成ガメラ・シリーズ第一作『ガメラ 大怪獣空中決戦』(1995年)では、最初ガメラは動く環礁=島として登場し、その背中に人間の調査団が上陸するという場面があります。また、このシリーズを通して、ガメラは人間の味方というよりは、地球環境の守り手として描かれています。平成ガメラ・シリーズは、様々な映画に影響を与えていますし、もしかしたら、マルク・ヤンセンは、この二つの日本作品からインスピレーションを得たのかもしれません。そう考えると楽しいです。
    • なんとカラフルで美しい絵でしょう!
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hacker
hacker さん本が好き!1級(書評数:2276 件)

「本職」は、本というより映画です。

本を読んでいても、映画好きの視点から、内容を見ていることが多いようです。

読んで楽しい:7票
参考になる:21票
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