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紅い芥子粒
レビュアー:
「普通の人間の女のように妊娠して中絶するのが私の夢です」(釈花)
作者は、重度障害をもつ40代の女性。
主人公も作者と同じ障害をもつ同年代の女性である。

主人公・釈華の一人称で書かれている。
呼吸器も吸痰器も手放せない、発声もままならない。中学二年のとき教室で倒れた日を最後に外を歩いたことがない。釈華はいま、日常生活をほぼ全介助の状態で、グループホームで暮らしている。
彼女はそのホームのオーナーで、親から相続したかなりの資産があり、ちょっとした富豪でもある。

彼女は、高校には行けなかったから学歴は中卒なのだが、向学心が旺盛なのだろう、有名大学の通信講座をはしごしている。金を払って「大学生」の肩書にしがみついているだけよと、本人は自嘲的にいうけれど。
某WEBメディアに雇われ、エロ記事を書くバイトもしている。それによる収入は、すべて貧困や暴力に苦しむ社会的弱者の寄付にまわしている。

彼女はツイートする。
「普通の人間の女のように妊娠して中絶するのが私の夢です」
出産や子育てに堪える体力はないが、妊娠と中絶までなら”普通の人間の女”に追いつけると、思うのだ。

グループホームに田中という男性介護士がいる。
彼は、釈花の名で投稿される彼女のツイートを読んで、釈華が心に溜めている泥を知っている。
田中は、釈華の前で、「おれだって弱者ですから」という。
たしかに、金にも容姿にも恵まれない彼は、社会的弱者かもしれない。
釈華は、1億5500万円の小切手を切り、田中に自分の夢をかなえてもらおうと考える。
性の売買。結果は、かなり悲惨なことになった。
田中は小切手には手をつけず、ホームをやめていった。

密室の中の行為で、だれにも見られなかったが、もしだれかが見ていたら、どう思われただろう。男で健常者の田中による性暴力。加害者は田中で被害者は釈華。
1億5500万の小切手だって、事実とは違う憶測がされたかもしれない。
介護職の立場は、弱い。田中の心にも、泥は溜まっていただろう。
しかし、釈華が富豪でなかったら、こんなばかなことはしなかったはずだ。
ホームを辞めた田中だが、別の現場でまた介護職に就いてくれたらいいなと思う。


性描写の多い小説だった。ここまで書く必要があるのかと思うほど、しつこい記述にうんざりした。この作者は、次にどんな作品を書くのかが気になった。
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紅い芥子粒
紅い芥子粒 さん本が好き!1級(書評数:561 件)

読書は、登山のようなものだと思っています。読み終わるまでが上り、考えて感想や書評を書き終えるまでが下り。頂上からどんな景色が見られるか、ワクワクしながら読書という登山を楽しんでいます。

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