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献本書評
ぱるころ
レビュアー:
頑張り過ぎている自分に、こう言えたらいい。
「辛くなったら逃げてもいい」という考え方が、かつてよりは浸透してきた気がする。それでも、逃げることに対する罪悪感や、逃げた先での不安はつきもの。逃げるにも覚悟が要る、ということだ。

後世に名を残す文豪たちはどうだったのか。本書では、国内外の「逃亡した文豪」45名を紹介。生い立ちやエピソードを3〜5ページ程度の文章に盛り込み、
「技術点」…逃亡を実行できた行動力
「芸術点」…逃亡や逃避願望が文学活動に与えた影響
などの観点で点数化する構成となっている。


トルストイが82歳という高齢で家出をし、小さな田舎駅で最期を迎えたことや、姪と関係を持った島崎藤村が海外へ渡ったことは、ご存知の方も多いだろう。
『しがみつくことで強くなれると考える者もいる。しかし時には手放すことで強くなれるのだ。』これは、神学校を脱走したヘッセの名言である。

また、「逃げまくった」というより、逃げてはみたものの葛藤や心残りなど人間らしさを感じるエピソードも。カフカは結婚のメリットとデメリットを分析し、結果的に生涯独身を貫いている。志賀直哉は来客の嵐にうんざりして広島や熱海に移住するも、今度は寂しがり屋な性格が顔を出す。

最終章は一転、『むしろ逃亡しないのがヤバい文豪』と題して、逃げなかったことがかえって不気味…という、川端康成や谷崎潤一郎のエピソードを紹介。川端は夜中に目を覚ますと枕元に泥棒…健啖家の谷崎は高級中華を堪能中、レストランが火災に見舞われるのだが…

一人の文豪について本書のみで掘り下げる、ということは出来ないが、文豪の新たな一面を知るきっかけとして面白い一冊。エピソードに共感したら作品を読んでみるというのも、本書の楽しみ方の一つだ。


副題の『嫌なことがあったら 逃げたらいいよ』という言葉は、他人から言われても「そんな、無責任な…」と思うだけかもしれない。しかし、頑張り過ぎている人が自分自身に対して言えたら、意味のある言葉だ。
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ぱるころ
ぱるころ さん本が好き!1級(書評数:147 件)

週1〜2冊、通勤時間や昼休みを利用して本を読んでいます。
ジャンルは小説・エッセイ・ビジネス書・自己啓発本など。
読後感、気付き、活かしたい点などを自分なりに書き、
また、皆さんからも学びたいと考え参加しました。
よろしくお願いします。

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