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紅い芥子粒
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漱石先生の趣味は、「明窓浄机」。
1914年に朝日新聞に発表された文章です。漱石先生が亡くなる二年ほど前ですね。

こんなことを新聞紙上に発表しなければならない事情があったのでしょうか。
漱石という売れっ子の小説書きは、巨万の富を蓄えているという世間の噂があったようです。豪邸を建てたとか、不動産の売買でもうけているとか……

そんなの噓だ、でたらめだ!という怒りの弁明から始まり、先生は、清貧な(?)私生活を明らかにしていきます。
さて、その内容は?

家は借家である。家賃は月35円。
敷地は300坪、庭はかなり広いが、家は手狭である。子どもが六人もいるからね。
では、収入は、いかほどか。
定収入は、朝日新聞からもらう月給だけである。
いくらか知りたければ新聞社からきいてくれ。
あとは著書の印税である。印税が何割か知りたければ、出版社から聞いてくれ。
印刷部数は初版が二千部で再版は千部である。たいしてもうからん。
理想は好きなことを書いて、売上なんか気にしないで出す自費出版である。
金があったらそうするが、ないからできん。
美服は好きだがもうトシなので(47歳?)、妻にいわれたものをだまって着ている。
料理はこってりした油こいものが好きである。
酒は飲まないが煙草は吸う……

こんな具合に話はすすみ、趣味や日常生活、執筆時間や原稿用紙にまで及びます。

強いてあげた漱石先生の趣味が、明窓浄机。さすがの四字熟語ですね。
快適を愛するのだそうです。小さくなって懐手で暮らしたいのだそうです。明るく暖かいのが良いそうです。





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紅い芥子粒
紅い芥子粒 さん本が好き!1級(書評数:560 件)

読書は、登山のようなものだと思っています。読み終わるまでが上り、考えて感想や書評を書き終えるまでが下り。頂上からどんな景色が見られるか、ワクワクしながら読書という登山を楽しんでいます。

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この書評へのコメント

  1. くにたちきち2023-07-12 16:16

    「明窓浄机」どこかで見たことのある、四字熟語だと思っていましたら、漱石先生の愛する言葉でしたか。実は、国立市の富士見通りにある私設美術館が「明窓浄机館」という名称なのですが、不思議な名前だと思っていました。疑問が一つ解けて、有難うございました。

  2. 紅い芥子粒2023-07-12 22:13

    くにたちきちさん、コメントありがとうございます。

    そんな名前の美術館があるのですね。書画骨董などが展示されているのでしょうか。
    行ってみたいものです。

  3. No Image

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