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ぷるーと
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異国で暮らす女性たち。太極拳で、その身を守って。
主人公は、ベルリンで一人暮らしをしている日本人女性。一緒に暮らしていた男性が一人帰国してしまい、以前とは別の地区に越してきた。

隣人は、ホモセクシャルのMさん。同居人が旅に出ていて寂しいのか、主人公とときに顔をあわせて話すようになり、主人公はMに誘われて太極拳を習い始める。

中国人女性が主宰しているその太極拳のクラスには、大金持ちのロシア人未亡人、森の中で菓子屋を開いている女性、外来語である英語で話すときは優しい感じなのに母国語のドイツ語で話すときはきつい感じになる女性、などさまざまな女性たちが集っている。主人公は徐々に彼女たちと会話を交わすようになり、彼女たちの背景を知っていく。

女性たちだけでなく、Mさんや彼の同居人の出自が、かなりややこしい。日本のような島国にいると、こういったややこしさはなかなか理解しづらいが、出自どうこうではなく、人間関係につまずいてしまった女性の悲しみは、私にも共感できるものだ。

「白鶴亮翅」とは、太極拳の型のひとつ。そもそも太極拳は自分の姿勢を正し、自分を守る武術。彼女たちは太極拳の型を習っていくことで、それまでの自分の殻から抜け出していけるのかもしれない。

作者によると、ロシアの未亡人のモデルは『罪と罰』に出てくる金貸しの女性アリョーナ・イワーノヴナだという。彼女が60才前後だと改めて知り、60才で老婆として消されてしまうのはたまらないと思って作品に登場してもらったのだとか。そして、ロージャ・ラスコーリニコフに殺されないよう太極拳を習ってもらったのだとか。なるほど、それであのラストか、と納得。『罪と罰』についての言及はあったし、アリョーナとロージャという名前から勘のいい読者にはわかるのだろうが、作者の解説がないと、あのラストにはどきっとさせられる。

Mさんは、途中から登場しなくなり、最後には同居人と二人の生活に引きこもってしまう。女性たちと違って、彼は、自分の殻の中に居続けたいのかもしれない。
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ぷるーと
ぷるーと さん本が好き!1級(書評数:2929 件)

 ホラー以外は、何でも読みます。みなさんの書評を読むのも楽しみです。
 よろしくお願いします。
 

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