休蔵さん
レビュアー:
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平成12年に奈良県立橿原考古学研究所付属博物館で開催された『大仏開眼-東大寺の考古学-』の展示図録の解説をまとめ直したもの。発掘調査成果だけではなく絵図や古文書も駆使した古代東大寺の概説書である。
奈良の観光名所として東大寺は必ず紹介されると思う。
奈良時代に建立された東大寺であるが、そのままの形で継承されたわけではなく、戦災や自然災害などを潜り抜け、新たに手が加えられながら継承されてきたものである。
大仏はもちろんのこと、それを安置する大仏殿も再建立が繰り返されてきた。
では、奈良時代の様相はまったく分からないかというとそんなわけではなく、発掘調査の成果など、様々な手段で奈良時代の様子を知ることができる。
本書は平成12年に奈良県立橿原考古学研究所付属博物館で開催された『大仏開眼-東大寺の考古学-』の展示図録に掲載された解説をまとめ直したものという。
展示図録の解説で終わらせるにはもったいないという判断だったのだろうが、その英断に感謝したくなる1冊だ。
まず、東大寺そのものを紹介し、大仏造立や寺院建立に至る歴史的な背景を概括する。
そして、境内の伽藍施設について触れる。
もちろん、発掘調査が威力を発揮する場面である、と言いたいところだが、必ずしも考古学的成果が主体とは言いがたい。
東大寺の境内では120件以上の発掘調査が実施されているというが、ごく狭い範囲を少しずつ調査するに留まっているようで、全容を示すほどの成果は集積されていないようだ。
そういう意味では、タイトルとの乖離があると言えるかもしれない。
しかしながら、『続日本紀』や『東大寺要録』といった文献史料や「東大寺山境四至図」などの絵図が強い援護で理解を促す。
さらに出土資料として、木片に墨書で文字を記した木簡が大きな力を発揮している。
複合的な研究成果の概説書と考えると、本書は十分読み応えのある1冊に仕上がっていると言えよう。
現在の東大寺は、さまざまな変遷を辿った結果として現出したものである。
もちろん、天平の世を想像するのは自由であるが、実際のところ、現在の字域において奈良時代の雰囲気を味わえる空間は限られている。
だからこそ、様々な資料をもとにした研究成果を自分のなかに落とし込む必要がある。
観光地では、観光客がお金を落としてくれればそれで良いという態度のところもある。
軽くお土産を購入して、ざっと見学できればそれで良いという観光客だっているかもしれない。
でも、せっかくどこからしらを観光で訪れるのならば、予習を怠らない方が得るものは多いと考える。
きっと迎える側の対応も変わるはず。
本書は東大寺を訪れる前に予習するための教科書として最適な1冊で、楽しみの読書にも十分耐え得る仕上がりとかんがえる。
奈良時代に建立された東大寺であるが、そのままの形で継承されたわけではなく、戦災や自然災害などを潜り抜け、新たに手が加えられながら継承されてきたものである。
大仏はもちろんのこと、それを安置する大仏殿も再建立が繰り返されてきた。
では、奈良時代の様相はまったく分からないかというとそんなわけではなく、発掘調査の成果など、様々な手段で奈良時代の様子を知ることができる。
本書は平成12年に奈良県立橿原考古学研究所付属博物館で開催された『大仏開眼-東大寺の考古学-』の展示図録に掲載された解説をまとめ直したものという。
展示図録の解説で終わらせるにはもったいないという判断だったのだろうが、その英断に感謝したくなる1冊だ。
まず、東大寺そのものを紹介し、大仏造立や寺院建立に至る歴史的な背景を概括する。
そして、境内の伽藍施設について触れる。
もちろん、発掘調査が威力を発揮する場面である、と言いたいところだが、必ずしも考古学的成果が主体とは言いがたい。
東大寺の境内では120件以上の発掘調査が実施されているというが、ごく狭い範囲を少しずつ調査するに留まっているようで、全容を示すほどの成果は集積されていないようだ。
そういう意味では、タイトルとの乖離があると言えるかもしれない。
しかしながら、『続日本紀』や『東大寺要録』といった文献史料や「東大寺山境四至図」などの絵図が強い援護で理解を促す。
さらに出土資料として、木片に墨書で文字を記した木簡が大きな力を発揮している。
複合的な研究成果の概説書と考えると、本書は十分読み応えのある1冊に仕上がっていると言えよう。
現在の東大寺は、さまざまな変遷を辿った結果として現出したものである。
もちろん、天平の世を想像するのは自由であるが、実際のところ、現在の字域において奈良時代の雰囲気を味わえる空間は限られている。
だからこそ、様々な資料をもとにした研究成果を自分のなかに落とし込む必要がある。
観光地では、観光客がお金を落としてくれればそれで良いという態度のところもある。
軽くお土産を購入して、ざっと見学できればそれで良いという観光客だっているかもしれない。
でも、せっかくどこからしらを観光で訪れるのならば、予習を怠らない方が得るものは多いと考える。
きっと迎える側の対応も変わるはず。
本書は東大寺を訪れる前に予習するための教科書として最適な1冊で、楽しみの読書にも十分耐え得る仕上がりとかんがえる。
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ここに参加するようになって、読書の幅が広がったように思います。
それでも、まだ偏り気味。
いろんな人の書評を参考に、もっと幅広い読書を楽しみたい!
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この書評へのコメント
- だまし売りNo2023-07-16 12:45
文字のある時代も考古学が意味を持つようになっています。一方で考古学だけで完結するものではありません。
千田嘉博『城郭考古学の冒険』では発掘調査、絵図・地図、文字史料など分野横断的に「城」を資料として歴史を研究する「城郭考古学」を提唱しています。
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- 出版社:吉川弘文館
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- 発売日:2021年02月19日
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