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たけぞう
レビュアー:
翻訳無理めの言語オタク小説。
題名に惹かれて手に取りました。まさしく辞書そのものが題材です。スワンズビー新百科辞書の編さんの物語です。しかも、それが、嘘つきの。

常識をひっくり返す切り口で、とても魅力を感じます。でも、半分も理解できていない気がして残念に思います。理由はシンプルです。この作品は、英語そのものをいじり倒すダジャレ系の小説なのですから。スペル違いのダジャレ、ラテン語的な冠詞の組み合わせの妙など、英語表記をネタにしたギャグが山のように入っています。つまり、翻訳が無理じゃないかと思われる内容で、よくここまでまとめたなと感心しつつも、これは原文を読まないと魅力が半減しているんだろうなと容易に想像できてしまうのです。

物語は、現代と百年くらい前の二つの視点を入れ替えながら進んでいきます。AからZまでの章立てがあります。

第一章、Aは技巧的(artful)のA。現代の主人公のマロリーの登場です。ディヴィッド・スワンズビーが話しかけてきます。スワンズビーは代々編集長を務めてきた一族の人で、いまは七十才です。まさに、一族の仕事の集大成として、スワンズビー新百科辞書を改訂出版しようとしています。第一版は1930年発行で、なんとそれ以降、一度も本格改定されていないのですから。しかも初版は、未完成のまま発行されたという、いわくつきの一冊ですし。何十年分もの未反映の言語カードの束がストックされています。でも発行のタイミングを逃しちゃったんですね。いまやWebに押されて資金難に陥っているというのが最大の理由です。

第二章、Bはやせ我慢(bluff)のB。
第一版の作業に携わるウインスワースの登場です。当時は編さんメンバーもたくさんいて、一生懸命作業している様子が書かれています。

ダブル主人公ですね。同じ辞書を作っているのですが、時代でこんなにも違うという雰囲気が伝わってきます。そして大量のダジャレです。物語の中盤で、フェイク用語にスポットライトが当てられます。それっぽい言葉のそれっぽい用法だけど、現実には存在していない言葉。マロリーとデイヴィッドが、現代の作業中にフェイク語が紛れ込んでいることに気づき、チェックを開始します。

ここが物語のポイントです。例えば、「ティーバッグ」の用法について。マロリーは、友だちのピップに、この語がスワンズビー辞書に載っていない話をしています。ピップはこう聞きます。
「動詞の? 名詞の?」

訳注によると、もし動詞となると、陰嚢を口に入れたり、顔の上においたりするスラングになるそうです。こういう下劣ネタが山のようにあるんですね。だから英語話者は抱腹絶倒でしょう。もちろん、原文で読んだ場合ですが。

つまり、こういう非常に評価しにくい本なのです。星は、、、やめときます。
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たけぞう
たけぞう さん本が好き!免許皆伝(書評数:1468 件)

ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。

自己紹介ページの二番目のアドレスは「飲んでみた」の書評です。
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