紅い芥子粒さん
レビュアー:
▼
赤毛の美少年ジョゼフは、狂信的なプロテスタントで度が過ぎた潔癖症。肉体的性的な接触を忌避していたが……
作者のジュリアン・グリーン(1900ー1998)は、両親がアメリカ人でアメリカ国籍だが、フランスに生まれフランスに育った。1920年には、アメリカのヴァージニア大学に留学した経歴をもつ。英仏のバイリンガルだが、作家活動はフランス語で行った。
同性愛者であることを告白しており、生涯の伴侶とした人も男性だったという。
「モイラ」の背景とする年代は1920年、舞台はアメリカ南部ヴァージニアの大学町。
ジョゼフは、赤い髪に黒い眼、白い肌、整った顔立ちの美少年。
赤い髪は燃えるようで、遠くからでも人目を引いた。
その美貌は、見るものを虜にした。
大学も寮も男子ばかり。
ジョゼフと付き合いたがる学生は、みな同性愛的感情を隠し持って近づいてくる。
ジョゼフは、敬虔なプロセスタントの家庭に育ち、自身も宗教にしか興味がない。
大学に入った目的も、新約聖書をギリシャ語で読めるようになりたいからだった。
彼は、身も心も新約聖書でできているような、狂信的なプロテスタントだったのだ。
病的に潔癖で、ギリシャ彫刻を見ても、不潔だ、いやらしいとしか思えない。
古典文学の講義で「ロミオとジュリエット」を宿題に出されても、性的な表現や描写に恥ずかしさと怒りがこみあげ、テキストをまっぷたつに引き裂いてしまう。
激昂しやすい性質でもあったのだ。
赤毛をからかった友人の首を締めようとして、「人殺し」といわれて我に返ったこともある。
しかしジョゼフ自身も18歳、年ごろの男子である。
魂は神と聖書に捧げていても、肉体は欲望する。
魂と肉体の相克に深く苦悩していた。
牧師志望の親友もできたが、その親友に婚約者がいると告白され、深く傷つく。
結婚も肉体の交渉を伴うものである限り、ジョゼフにとって、不潔で忌避すべきものだったのだ。
そんなジョゼフの前に、運命の女性モイラがあらわれる。
彼女は、学生寮の女主人の養女で、黒人と白人の混血女性だった。
ひと目見ただけで、ジョゼフは、彼女のことを忘れらなくなってしまう。
魔性の女、とでもいおうか。
モイラは、性的な魅力で男をひきつけてしまう女だった。
モイラも、ジョゼフのことが忘れられなくなる。
燃えるような赤毛と、けっして誘惑にのらない潔癖さがしゃくにさわったのだ。
最初の出会いは偶然だったが、二度目はモイラからの接近だった。
場所は、ジョゼフの部屋。そこで、とんでもない悲劇が起きる。
ジョゼフの病的な潔癖症と信仰心、激昂しやすい性格を、モイラは知らなかったのか甘く見ていたのか……
物語は一貫して主人公ジョゼフの視点で書かれているため、ジョゼフが見ているところしか読者は見ることはできない。ジョゼフが見たいものしか、読者には見えないということだ。しかし、脇の人物に視点をずらして読むと、ジョゼフの狂気が、じわじわと浮き上がって見える。
読み終えてから、なんだか恐いものを読んだという感想をもった。
同性愛者であることを告白しており、生涯の伴侶とした人も男性だったという。
「モイラ」の背景とする年代は1920年、舞台はアメリカ南部ヴァージニアの大学町。
ジョゼフは、赤い髪に黒い眼、白い肌、整った顔立ちの美少年。
赤い髪は燃えるようで、遠くからでも人目を引いた。
その美貌は、見るものを虜にした。
大学も寮も男子ばかり。
ジョゼフと付き合いたがる学生は、みな同性愛的感情を隠し持って近づいてくる。
ジョゼフは、敬虔なプロセスタントの家庭に育ち、自身も宗教にしか興味がない。
大学に入った目的も、新約聖書をギリシャ語で読めるようになりたいからだった。
彼は、身も心も新約聖書でできているような、狂信的なプロテスタントだったのだ。
病的に潔癖で、ギリシャ彫刻を見ても、不潔だ、いやらしいとしか思えない。
古典文学の講義で「ロミオとジュリエット」を宿題に出されても、性的な表現や描写に恥ずかしさと怒りがこみあげ、テキストをまっぷたつに引き裂いてしまう。
激昂しやすい性質でもあったのだ。
赤毛をからかった友人の首を締めようとして、「人殺し」といわれて我に返ったこともある。
しかしジョゼフ自身も18歳、年ごろの男子である。
魂は神と聖書に捧げていても、肉体は欲望する。
魂と肉体の相克に深く苦悩していた。
牧師志望の親友もできたが、その親友に婚約者がいると告白され、深く傷つく。
結婚も肉体の交渉を伴うものである限り、ジョゼフにとって、不潔で忌避すべきものだったのだ。
そんなジョゼフの前に、運命の女性モイラがあらわれる。
彼女は、学生寮の女主人の養女で、黒人と白人の混血女性だった。
ひと目見ただけで、ジョゼフは、彼女のことを忘れらなくなってしまう。
魔性の女、とでもいおうか。
モイラは、性的な魅力で男をひきつけてしまう女だった。
モイラも、ジョゼフのことが忘れられなくなる。
燃えるような赤毛と、けっして誘惑にのらない潔癖さがしゃくにさわったのだ。
最初の出会いは偶然だったが、二度目はモイラからの接近だった。
場所は、ジョゼフの部屋。そこで、とんでもない悲劇が起きる。
ジョゼフの病的な潔癖症と信仰心、激昂しやすい性格を、モイラは知らなかったのか甘く見ていたのか……
物語は一貫して主人公ジョゼフの視点で書かれているため、ジョゼフが見ているところしか読者は見ることはできない。ジョゼフが見たいものしか、読者には見えないということだ。しかし、脇の人物に視点をずらして読むと、ジョゼフの狂気が、じわじわと浮き上がって見える。
読み終えてから、なんだか恐いものを読んだという感想をもった。
掲載日:
書評掲載URL : http://blog.livedoor.jp/aotuka202
投票する
投票するには、ログインしてください。
読書は、登山のようなものだと思っています。読み終わるまでが上り、考えて感想や書評を書き終えるまでが下り。頂上からどんな景色が見られるか、ワクワクしながら読書という登山を楽しんでいます。
この書評へのコメント

コメントするには、ログインしてください。
書評一覧を取得中。。。
- 出版社:岩波書店
- ページ数:0
- ISBN:9784003751367
- 発売日:2023年05月18日
- 価格:1276円
- Amazonで買う
- カーリルで図書館の蔵書を調べる
- あなた
- この書籍の平均
- この書評
※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。






















