ぱせりさん
レビュアー:
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なんてシュールなのでしょう
いちじくのおはなし会が始まった。
キッチンのくだものかごの前に、たまごやマシュマロ、はっかあめたちがあつまってくる。
暗くなると、かごのふきんがめくれ、いちじくがあらわれて語り始める。
「まだ わかく あまみも うすかったころ、
わたしは あてもなく たびをしていた」
と始まるおはなしは、いちぢくがヒーローになる三つの冒険譚。
ときどき、これはどういう意味が隠されているのだろうと、立ち止まって考えてしまうが、これはこれで楽しいおはなしだったなあと終わってもよいのだと思う。シュールで少し怖い絵のついたおはなし。
いちぢくも言っているではないか。
「このおはなしが うそか まことか、
そんなことは ささいなことです。 それよりも、
おはなしをきいて あなたがたの こころが はずんだか。
だいじなのは そこなのです!」
と、確かにそうかもしれない。もし、この本がお話だけで終わるなら。
でも、お話には観客がいて、このお客さんたちは、「おはなし」が終わったときに、それはほんとうのことなのか、とやんやと論争を始めるのだ。そのときの、いちじくの言葉がこれだった。
おはなしなら、最初から、うそかほんとうかなんて野暮なことは誰も聞かない。ただお話に浸って楽しむ。おもしろかったら「こころ はずんだよ。いいもの聞いたよ」と思って終わるだろうけれど。
本当にあった話(「ノンフィクション」とか「ドキュメント」とか)として聞いていたのに、そうじゃなかったとしたら、それはフェイクニュースかな。はずんだこころは一気にしぼみ、騙された気持ちになる。
いちじくのはなしはどうだったのだろう。
で、先のいちじくの言葉「おはなしをきいて あなたがたの こころが はずんだか。だいじなのは そこなのです!」はとっても怪しい言葉に思えてしまう。
……あ、でも、そうだ。いちじくは、これがほんとうのお話、とは一言もいっていない、のだよね。
そうだとしたら、お客さんたちの論争は何なのだろう。
みんなの論争は続く、つづく。
なんてシュールな本でしょう。
キッチンのくだものかごの前に、たまごやマシュマロ、はっかあめたちがあつまってくる。
暗くなると、かごのふきんがめくれ、いちじくがあらわれて語り始める。
「まだ わかく あまみも うすかったころ、
わたしは あてもなく たびをしていた」
と始まるおはなしは、いちぢくがヒーローになる三つの冒険譚。
ときどき、これはどういう意味が隠されているのだろうと、立ち止まって考えてしまうが、これはこれで楽しいおはなしだったなあと終わってもよいのだと思う。シュールで少し怖い絵のついたおはなし。
いちぢくも言っているではないか。
「このおはなしが うそか まことか、
そんなことは ささいなことです。 それよりも、
おはなしをきいて あなたがたの こころが はずんだか。
だいじなのは そこなのです!」
と、確かにそうかもしれない。もし、この本がお話だけで終わるなら。
でも、お話には観客がいて、このお客さんたちは、「おはなし」が終わったときに、それはほんとうのことなのか、とやんやと論争を始めるのだ。そのときの、いちじくの言葉がこれだった。
おはなしなら、最初から、うそかほんとうかなんて野暮なことは誰も聞かない。ただお話に浸って楽しむ。おもしろかったら「こころ はずんだよ。いいもの聞いたよ」と思って終わるだろうけれど。
本当にあった話(「ノンフィクション」とか「ドキュメント」とか)として聞いていたのに、そうじゃなかったとしたら、それはフェイクニュースかな。はずんだこころは一気にしぼみ、騙された気持ちになる。
いちじくのはなしはどうだったのだろう。
で、先のいちじくの言葉「おはなしをきいて あなたがたの こころが はずんだか。だいじなのは そこなのです!」はとっても怪しい言葉に思えてしまう。
……あ、でも、そうだ。いちじくは、これがほんとうのお話、とは一言もいっていない、のだよね。
そうだとしたら、お客さんたちの論争は何なのだろう。
みんなの論争は続く、つづく。
なんてシュールな本でしょう。
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いつまでも読み切れない沢山の本が手の届くところにありますように。
ただたのしみのために本を読める日々でありますように。
この書評へのコメント

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- 出版社:ブロンズ新社
- ページ数:0
- ISBN:9784893097156
- 発売日:2023年02月16日
- 価格:1210円
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