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献本書評
たけぞう
レビュアー:
気楽に読める人情系時代小説。シリーズ二冊目。
隠居シリーズ二冊目です。一冊目は隠居すごろくです。わたしは未読ですが、二冊目から入っても充分楽しめましたよ。

著者の作品を読むのは二冊目です。一冊目は、ショートカット先「雨上がり月霞む夜」で、雨月物語のオマージュでした。物の怪のかおりがたちこめる雰囲気が気に入りました。その次に当たったのが本著です。雰囲気が全然違ったので、同じ作者だとは気がつきませんでした。書評を書くのにネットで既刊本をチェックしてこのことに気がつき、驚きました。作風がかなり広いかたですね。物語をまとめる力が強いのでしょう。

隠居さんは、嶋屋徳兵衛といいます。江戸の巣鴨にある糸問屋の六代目主人で、還暦を期に七代目にお店を譲り、いまは新たな商売を立ち上げたところです。組紐屋の五十六屋といいます。根っからの職人気質で、隠居をきっかけに好きな仕事を始めるなんて、現代にも通じるちょっと憧れる生きかたです。こういうところが読者のこころをくすぐるのでしょうね。

全六章の連作短篇です。最終の六章では継続感がある終わりかただったので、連載は続いているのでしょう。初出は「小説 野生時代]とのことです。いずれシリーズ三冊目が発行されると思います。
この作品の魅力は、群像劇の良さが存分に発揮されているところです。主軸は隠居の徳兵衛ですが、各章で話題となる登場人物が変わっていくスタイルです。

第一章、めでたしの先は、孫の千代太とのやり取りです。千代太が、おじいさまと呼びかけて相談に来ました。隠居家では、徳兵衛の組紐屋の「五十六屋」、千代太が王子権現で参詣客相手にお手伝いをする子供商いの「千代田屋」、妻のお登勢が手習いを教える「豆堂」の三つの店を回しています。
千代田屋は、いろいろな理由で子どもだけで生活している子が働く場で、十二人の子どもがいます。その中の一人の勘七の父親が、しばらくぶりに突然家に戻ってきたことがきっかけです。親子で住めるようにできないか、五十六屋で雇ってもらえないかと千代太が徳兵衛を頼ってきたのでした。

しばし待て、色々とことわりがあるのだと、徳兵衛は答えます。合点がいかないながらも、おじいさまと慕う千代太は悩みます。徳兵衛は、安易にものごとを進めようとせず、いい方向に促していくのですが、あれこれと事態が動いていき、なんとかしなくてはと物語は転がっていきます。

六章ともだいたい同じ構造で、ちょっと難しくなりかかった人間関係を、徳兵衛、千代太、妻のお登勢、七代目主人や女中さんなど、みんなで助け合いながら直していく展開です。
人情系エンタメ時代小説です。王道の作品なので、安心して楽しめますよ。
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たけぞう
たけぞう さん本が好き!免許皆伝(書評数:1467 件)

ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。

自己紹介ページの二番目のアドレスは「飲んでみた」の書評です。
三番目のアドレスは「お絵描き書評の部屋」で、皆さんの「描いてみた」が読めます。
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よかったらのぞいてみて下さい。

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