たけぞうさん
レビュアー:
▼
面白いエッセーです。作家さんの観察力は深いです。
人気のある作家さんなので、新刊エッセーの情報を知って読むことにしました。さすが、人気上昇中の人ですね。語り口がよく、視点もよく、シンプルに面白い一冊でした。
女性に対する理不尽さを扱った章がそこそこ入っています。そして、著者はこんな経験をしています。
魔がさしてネット上のレビューに目を通した時、「垣谷美雨の本はどれもこれも、結局は男尊女卑の問題じゃねえかよ」と書かれているのを見つけ、数日間落ち込んだそうです。しかし、どれもこれもと書くからには何冊も読んでいるのではとか、たぶん男性なんだろうけどとか、自分のこころを落ち着けるために心を砕いたことが分かります。
これぞ理不尽、まさに理不尽。しかも別の視点で、わたしはさらにどきりとしました。
────── 無意識に人を傷つけることがあるということ。
結局、この男性のコメントはそういうことなんですね。著者自身も、相手のためと思って発した言葉が、思ってもいない受け取られかたをして雰囲気が悪くなり、以降その人と会う時に思い出してしまう経験を語っています。
シンプルに考えると、日本の女性の社会進出率が飛び抜けて低いことがジェンダーギャップ指数で明らかになっていて、世界146か国中で116位、政治に限って言えば138位というクレイジーな状況ですからね────── 。これを経済指標の用語に当てはめてみると、日本は女性理不尽率最貧国レベルとなるわけです。
なにが言いたいかというと、日本社会の構造は世界的にみてかなり差別的で、とりわけ女性差別は際立っているということ、だから日本社会のおかしなところをネタにすると自然と女性の話が出てきてしまうということなんですね。
作家さんは、そもそも観察力の鋭い人たちですから。その人の作品を掴まえて、○✕式に男尊女卑というワンワードで塗りこめる男がいること自体、さすがジェンダー最貧国だなと思ってしまうのです。わたしは、女性の理不尽さが解決されれば万事OKとは思っていません。LGBTQも、地方と都市部の格差も、いろいろなところに日本のムラ社会がはびこっていて、これこそが日本の非合理性の原点だと思っているんですね。
変な熱語りになってしまいました。この意見が著者に伝わると嬉しいです。
エッセーに共感する部分がたくさんあり、これからも社会の変なところをつっ込むスタイルで書き続けて欲しいです。著者は、女性進出問題や老後問題など、日本社会の痛いところに関心を持っているので、小説になるとためになるし、考えも整理されます。なによりも、重量級の問題を、軽やかに楽しく、日常のモヤモヤ的に読ませてくれるのが魅力的ですね。
参考までに、私見ですがさきほどのネットに書き込んだオッサンは、垣谷さんの作品は残念ながらほとんど読んでいないと思います。ちゃんと読めば、理にかなった公平な意見だと分かるはずですから。おそらく帯を見て、斜め読みで立ち読みして、知ったかぶりで憂さ晴らしをしただけかなと想像しました。いろいろな意見があっていいとは思うものの、もしこの想像が当たりだとしたら、SNSの悲しい部分です。
女性に対する理不尽さを扱った章がそこそこ入っています。そして、著者はこんな経験をしています。
魔がさしてネット上のレビューに目を通した時、「垣谷美雨の本はどれもこれも、結局は男尊女卑の問題じゃねえかよ」と書かれているのを見つけ、数日間落ち込んだそうです。しかし、どれもこれもと書くからには何冊も読んでいるのではとか、たぶん男性なんだろうけどとか、自分のこころを落ち着けるために心を砕いたことが分かります。
これぞ理不尽、まさに理不尽。しかも別の視点で、わたしはさらにどきりとしました。
────── 無意識に人を傷つけることがあるということ。
結局、この男性のコメントはそういうことなんですね。著者自身も、相手のためと思って発した言葉が、思ってもいない受け取られかたをして雰囲気が悪くなり、以降その人と会う時に思い出してしまう経験を語っています。
シンプルに考えると、日本の女性の社会進出率が飛び抜けて低いことがジェンダーギャップ指数で明らかになっていて、世界146か国中で116位、政治に限って言えば138位というクレイジーな状況ですからね────── 。これを経済指標の用語に当てはめてみると、日本は女性理不尽率最貧国レベルとなるわけです。
なにが言いたいかというと、日本社会の構造は世界的にみてかなり差別的で、とりわけ女性差別は際立っているということ、だから日本社会のおかしなところをネタにすると自然と女性の話が出てきてしまうということなんですね。
作家さんは、そもそも観察力の鋭い人たちですから。その人の作品を掴まえて、○✕式に男尊女卑というワンワードで塗りこめる男がいること自体、さすがジェンダー最貧国だなと思ってしまうのです。わたしは、女性の理不尽さが解決されれば万事OKとは思っていません。LGBTQも、地方と都市部の格差も、いろいろなところに日本のムラ社会がはびこっていて、これこそが日本の非合理性の原点だと思っているんですね。
変な熱語りになってしまいました。この意見が著者に伝わると嬉しいです。
エッセーに共感する部分がたくさんあり、これからも社会の変なところをつっ込むスタイルで書き続けて欲しいです。著者は、女性進出問題や老後問題など、日本社会の痛いところに関心を持っているので、小説になるとためになるし、考えも整理されます。なによりも、重量級の問題を、軽やかに楽しく、日常のモヤモヤ的に読ませてくれるのが魅力的ですね。
参考までに、私見ですがさきほどのネットに書き込んだオッサンは、垣谷さんの作品は残念ながらほとんど読んでいないと思います。ちゃんと読めば、理にかなった公平な意見だと分かるはずですから。おそらく帯を見て、斜め読みで立ち読みして、知ったかぶりで憂さ晴らしをしただけかなと想像しました。いろいろな意見があっていいとは思うものの、もしこの想像が当たりだとしたら、SNSの悲しい部分です。
お気に入り度:





掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。
自己紹介ページの二番目のアドレスは「飲んでみた」の書評です。
三番目のアドレスは「お絵描き書評の部屋」で、皆さんの「描いてみた」が読めます。
四番目のアドレスは「作ってみた」の書評です。
よかったらのぞいてみて下さい。
この書評へのコメント
 - コメントするには、ログインしてください。 
書評一覧を取得中。。。
- 出版社:双葉社
- ページ数:0
- ISBN:9784575317923
- 発売日:2023年04月19日
- 価格:1760円
- Amazonで買う
- カーリルで図書館の蔵書を調べる
- あなた
- この書籍の平均
- この書評
※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。






















