薄荷さん
レビュアー:
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幾度となく住民もろとも焦土と化した大都市・東京の地に暮らすということは、染みついた因果を踏みつけて生きていくということだ。
日本ホラーといえば、地方にある怪しい村や古い家の悪しき風習はド定番(大好物です)。
舞台が都会なら社会の陰で蠢くヤバい宗教とかサイコキラー、最近ならネット犯罪や都市伝説がお約束でしょうか。
ちょっと毛色が違う本書は、再開発事業真っ只中の渋谷で建設中の大きなビルが舞台。
この再開発に社運をかけている大手デベロッパーの中で、投資家向け広報部の危機管理チームに所属している松永光弘が主人公。
彼が早朝電話で上司に課せられた任務は、自社の高層ビルの建設現場の地下に関するSNSの批判投稿調査。
「いるだけで病気になる」
「のどが痛い、絶対に有害なものが出てる」
「ここでも火が出た、息が苦しい辞めたい」
「人骨が出た穴なのに誰も言わない」
などなど、悪意たっぷりの書き込みに添付された画像が本当にこの現場なのか、実際の所そんな事件の形跡があるのか・・・を調べるために、一人で頭につけたライト一つの明かりしかない真っ暗な地下へ図面頼りに降りていく。
原因不明に発生している「何かが高温で焼かれたような悪臭」と「焼けたようにヒリつく空気」に苛まれ、何故か床に全体に降り積もっている「何かを高温で焼ききった灰のような白い粉塵」を踏みながら、ようやく着いた最深部で見つかったのは、図面に記されていない巨大な穴のある謎の祭祀場。
その穴の中には・・・鎖につながれた男がいた!?
光弘は繫がれていた男を連れて地上に戻るが、原因不明の小火が発生した騒ぎの中、男は姿を消してしまう。
痛む喉と目に耐えながら上司への報告を終え、産休中の妻と幼い娘が待つ自宅マンションに帰りついて、幸せな家族団らんにひたっていたその夜・・・インターホンの呼び出しボタンが何度も押され、確認に行けばエントランスに誰もいない。部屋のドアを開けたとき、いやに乾燥した空気が入り込んできた感覚がし、廊下には白い足跡が・・・。
以来、松永家は奇妙な出来事に悩まされるようになる。
エレベーターホールに残された、おびただしい数の真っ白い足跡、
家では電子レンジが火事になり、内外にはあの白い粉塵とあの悪臭、
娘は脱水症状をおこし、妊娠中の妻は悪臭で体調を崩して入院、
無意識に怪異につけこまれた光弘は、家族とも会社ともぎくしゃくし始め、全ての歯車が狂いだす。
自然現象のごとく理不尽な祟りから関係者を救い、この異常事態を収める術はあるのか・・・?
*****
大都市の巨大な建造物の地下深くで、何かを焼いたような悪臭と乾燥と灰のような白い粉塵+図面にはない祭祀場+巨大穴+中には鎖に繋がれた男。
ホラー的に大変魅力的な始まりから、主人公がこの男を外へ出しちゃうわ、自宅にやってきた(?)祟りを部屋に入れちゃうわ、とお約束にダメな展開でバンバン怪異が出現するわけですが、怖かったのはそこじゃなく。
憑かれて精神のバランスを失っていく主人公が歪んでいく様が、怖いのですよ。
読者はもちろん「こいつヤバい!」って思っても、本書は一人称語りなので異様な精神状態の・・・でもイカレている自覚が全然無い主人公に手をつかまれて、一緒に物語を進んでいくしかない。
しかも本人は家庭と仕事を何とかしようとしてすごく頑張って、でもそもそも間違ってることに気付いてないから、転げ落ちるように悪い方へ流れて行ってしまうのに、読者は引きずられていくしかない。
読んでいる以上、不幸をまき散らすヤツの中から物語を見るのが怖かったんです。
さて個人的感想としては、情報が必要以上に盛沢山&色々ほったらかしなのが気になってのめり込めませんでしたが、導入部分と怪異について視点の意外さは面白いと思いますので、一応ホラー好きにお勧めしときます。
舞台が都会なら社会の陰で蠢くヤバい宗教とかサイコキラー、最近ならネット犯罪や都市伝説がお約束でしょうか。
ちょっと毛色が違う本書は、再開発事業真っ只中の渋谷で建設中の大きなビルが舞台。
この再開発に社運をかけている大手デベロッパーの中で、投資家向け広報部の危機管理チームに所属している松永光弘が主人公。
彼が早朝電話で上司に課せられた任務は、自社の高層ビルの建設現場の地下に関するSNSの批判投稿調査。
「いるだけで病気になる」
「のどが痛い、絶対に有害なものが出てる」
「ここでも火が出た、息が苦しい辞めたい」
「人骨が出た穴なのに誰も言わない」
などなど、悪意たっぷりの書き込みに添付された画像が本当にこの現場なのか、実際の所そんな事件の形跡があるのか・・・を調べるために、一人で頭につけたライト一つの明かりしかない真っ暗な地下へ図面頼りに降りていく。
原因不明に発生している「何かが高温で焼かれたような悪臭」と「焼けたようにヒリつく空気」に苛まれ、何故か床に全体に降り積もっている「何かを高温で焼ききった灰のような白い粉塵」を踏みながら、ようやく着いた最深部で見つかったのは、図面に記されていない巨大な穴のある謎の祭祀場。
その穴の中には・・・鎖につながれた男がいた!?
光弘は繫がれていた男を連れて地上に戻るが、原因不明の小火が発生した騒ぎの中、男は姿を消してしまう。
痛む喉と目に耐えながら上司への報告を終え、産休中の妻と幼い娘が待つ自宅マンションに帰りついて、幸せな家族団らんにひたっていたその夜・・・インターホンの呼び出しボタンが何度も押され、確認に行けばエントランスに誰もいない。部屋のドアを開けたとき、いやに乾燥した空気が入り込んできた感覚がし、廊下には白い足跡が・・・。
以来、松永家は奇妙な出来事に悩まされるようになる。
エレベーターホールに残された、おびただしい数の真っ白い足跡、
家では電子レンジが火事になり、内外にはあの白い粉塵とあの悪臭、
娘は脱水症状をおこし、妊娠中の妻は悪臭で体調を崩して入院、
無意識に怪異につけこまれた光弘は、家族とも会社ともぎくしゃくし始め、全ての歯車が狂いだす。
自然現象のごとく理不尽な祟りから関係者を救い、この異常事態を収める術はあるのか・・・?
*****
大都市の巨大な建造物の地下深くで、何かを焼いたような悪臭と乾燥と灰のような白い粉塵+図面にはない祭祀場+巨大穴+中には鎖に繋がれた男。
ホラー的に大変魅力的な始まりから、主人公がこの男を外へ出しちゃうわ、自宅にやってきた(?)祟りを部屋に入れちゃうわ、とお約束にダメな展開でバンバン怪異が出現するわけですが、怖かったのはそこじゃなく。
憑かれて精神のバランスを失っていく主人公が歪んでいく様が、怖いのですよ。
読者はもちろん「こいつヤバい!」って思っても、本書は一人称語りなので異様な精神状態の・・・でもイカレている自覚が全然無い主人公に手をつかまれて、一緒に物語を進んでいくしかない。
しかも本人は家庭と仕事を何とかしようとしてすごく頑張って、でもそもそも間違ってることに気付いてないから、転げ落ちるように悪い方へ流れて行ってしまうのに、読者は引きずられていくしかない。
読んでいる以上、不幸をまき散らすヤツの中から物語を見るのが怖かったんです。
さて個人的感想としては、情報が必要以上に盛沢山&色々ほったらかしなのが気になってのめり込めませんでしたが、導入部分と怪異について視点の意外さは面白いと思いますので、一応ホラー好きにお勧めしときます。
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スマホを初めて買いました!その日に飛蚊症になりました(*´Д`)ついでにUSBメモリーが壊れて書きかけレビューが10個消えました・・・(T_T)
この書評へのコメント
- 薄荷2025-06-24 12:20
本書は祐太郎 さん主催の角川文庫夏フェア2025に挑戦!リスト本です。
https://www.honzuki.jp/bookclub/theme/no448/index.html?latest=20
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- 出版社:KADOKAWA
- ページ数:0
- ISBN:9784041119952
- 発売日:2022年12月09日
- 価格:1980円
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