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ぱせりさん
ぱせり
レビュアー:
子どもの時に感じた読後の安心に包まれる。
せなか島には、山も川も森もある。畑があって牧場があって、町がある。この島は、大きな大きなエイの背中なのだ。エイが、海に浮かんだまま何百年も眠っている間に、島になり、沢山の人が住みついた。
これは、せなか島せなか町で起こったいくつかの、ちょっと不思議な出来事の物語。


自分の暮らしを、地道に営んでいる人たちの暮らしの中に、小さな不思議が混ざりこむ。
誰かに話したら笑われそうな、何かの(幸せな)思い違いかもしれない、と思うような不思議。
もしかしたら、不思議じゃなかったのかもしれない。いつのまにか、見えなくなってしまったもの、聞こえなくなってしまったものに気づいただけなのかもしれない。


マチルダさんのカーテンは、風が吹いてもぴくりともしないのに、風のないときにはひらひらとはためくという話。
学校の小さな演奏会で、だれ一人(先生さえも)鳴らし方を知らない伝説の楽器を担当した少年の話。
などなど。
どのお話も、少しだけ幸せな気持ちになる。


とりわけ心に残るのは、島になったえいの物語だ。
島になって、島になり続けているえい。
この島の暮らしが、えいのあこがれと失意の眠りの上にあるということ、それを住んでいる人たちが誰も知らないといいうこと。
それから、この先があること、それも、たぶん人びとはずっと知らないこと。
知らないでいるのがいいな。空気や時間みたいに、誰もが知らずに(忘れて)いられるほど大きくて当たりまえな感じがいいな。
大きくてゆっくりな物語が続いている。つづいている物語の上で、人たちは自分の物語を続けている。


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ぱせり
ぱせり さん本が好き!免許皆伝(書評数:1736 件)

いつまでも読み切れない沢山の本が手の届くところにありますように。
ただたのしみのために本を読める日々でありますように。

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