休蔵さん
レビュアー:
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本書は製鉄遺跡で見つかった情報をもとに、実験的手法によりながら古代の製鉄技術の解明に挑んだ取り組みをまとめた専門書である。古代の製鉄技術が少しずつ解き明かされている様子が分かりやすくまとめられいる。
 古文書に記されていない歴史事象の解明は、遺跡の発掘調査成果に頼るしかない。
しかし、遺跡で見つかったものが、そのまま理解できるものとは限らないようで、古代の製鉄技術の理解には相当の苦労が伴っているようだ。
それでいて、まだまだ未解明のところも多いらしい。
本書は製鉄遺跡で見つかった情報をもとに、実験的手法によりながら古代の製鉄技術の解明に挑んだ取り組みをまとめた専門書である。
江戸時代にはたたら製鉄という方法があったそうだ。
砂鉄や木炭を原料にして、粘土で築いた箱形の製鉄炉で鉄を作る手法とのことで、明治時代には操業内容を調査してまとめた技術書もあるという。
たたら製鉄は現在でも行われている。
そして、古代にはたたら製鉄に繋がるような製鉄法があったとのこと。
製鉄遺跡で見つかった様々な情報を駆使しながら、明治時代の記録などとも照合して実験をし、それを解釈していく。
この地道な作業の繰り返しで、箱形炉による古代の製鉄技術の一端は見えてきたようだ。
 
しかし、古代には竪型炉という、江戸時代にはメジャーではなくなっていた製鉄法でも鉄が作られていたという。
その中心地は東北島南部から関東にかけてで、特に福島県域で資料の蓄積が著しい。
箱形の製鉄炉による製鉄技術は解明できても、竪型炉によるそれは未解明な点が多いという。
それでも実験を繰り返すことにより、少しずつ分かってきたこともあるという。
重要な疑問点の1つに、古代福島県域で箱形炉と竪型炉が同時操業されるのはなぜか、という点があげられていた。
隣接する場所で、時期差もなく、どうして異なる構造の製鉄炉が必要とされたのか。
著者は操業実験を重ねることで竪型炉による製鉄技術の解明を進め、上記の疑問点に対して1つの答えを導き出した。
2つの製鉄炉を要した事情の背景には、砂鉄の性状が絡んでいるというのだ。
当地の砂鉄はチタン分の含有率が高く、製鉄を進めるには難しい性状とのこと。
竪型炉は、炉高が高く、難しい性状の砂鉄が鉄に変転する環境は、比較的整いやすいという。
少量でも確実な鉄、それも溶け出る銑鉄ができるという。
対して箱形炉では必ずしも製鉄が成功するとは限らないが、成功すると一定量の鋼と銑鉄が生成できるとのこと。
つまり、博打的な箱形炉と堅実な竪型炉という複合的な生産体制で鉄を生産したというのだ。
発掘調査成果の解釈には、その物に残された痕跡から追究する方法や民俗学的手法の援用などがある。
そして、本書に示された実験考古学的手法がある。
実験考古学的手法は、条件を確実にし得ないというウィークポイントは抱えながらも、頭で考えたり、科学的分析だけでは理解できないようなことにまで迫り得るポテンシャルを持つ。
ただし、1回きりの実験ではダメなような、本書には少しずつ条件を変えながら何度もチャレンジしてきた足跡が詳細に記されている。
また、実験のために整えた条件が、古代とまったく同一とは限らず、そのことを確かめることもできないという難しさもはらむ。
それでも実験をすることは、研究を前進させるために必要な手段と理解できた。
今後も製鉄実験が繰り返され、古代製鉄技術の解明が進むことが期待したい。
しかし、遺跡で見つかったものが、そのまま理解できるものとは限らないようで、古代の製鉄技術の理解には相当の苦労が伴っているようだ。
それでいて、まだまだ未解明のところも多いらしい。
本書は製鉄遺跡で見つかった情報をもとに、実験的手法によりながら古代の製鉄技術の解明に挑んだ取り組みをまとめた専門書である。
江戸時代にはたたら製鉄という方法があったそうだ。
砂鉄や木炭を原料にして、粘土で築いた箱形の製鉄炉で鉄を作る手法とのことで、明治時代には操業内容を調査してまとめた技術書もあるという。
たたら製鉄は現在でも行われている。
そして、古代にはたたら製鉄に繋がるような製鉄法があったとのこと。
製鉄遺跡で見つかった様々な情報を駆使しながら、明治時代の記録などとも照合して実験をし、それを解釈していく。
この地道な作業の繰り返しで、箱形炉による古代の製鉄技術の一端は見えてきたようだ。
しかし、古代には竪型炉という、江戸時代にはメジャーではなくなっていた製鉄法でも鉄が作られていたという。
その中心地は東北島南部から関東にかけてで、特に福島県域で資料の蓄積が著しい。
箱形の製鉄炉による製鉄技術は解明できても、竪型炉によるそれは未解明な点が多いという。
それでも実験を繰り返すことにより、少しずつ分かってきたこともあるという。
重要な疑問点の1つに、古代福島県域で箱形炉と竪型炉が同時操業されるのはなぜか、という点があげられていた。
隣接する場所で、時期差もなく、どうして異なる構造の製鉄炉が必要とされたのか。
著者は操業実験を重ねることで竪型炉による製鉄技術の解明を進め、上記の疑問点に対して1つの答えを導き出した。
2つの製鉄炉を要した事情の背景には、砂鉄の性状が絡んでいるというのだ。
当地の砂鉄はチタン分の含有率が高く、製鉄を進めるには難しい性状とのこと。
竪型炉は、炉高が高く、難しい性状の砂鉄が鉄に変転する環境は、比較的整いやすいという。
少量でも確実な鉄、それも溶け出る銑鉄ができるという。
対して箱形炉では必ずしも製鉄が成功するとは限らないが、成功すると一定量の鋼と銑鉄が生成できるとのこと。
つまり、博打的な箱形炉と堅実な竪型炉という複合的な生産体制で鉄を生産したというのだ。
発掘調査成果の解釈には、その物に残された痕跡から追究する方法や民俗学的手法の援用などがある。
そして、本書に示された実験考古学的手法がある。
実験考古学的手法は、条件を確実にし得ないというウィークポイントは抱えながらも、頭で考えたり、科学的分析だけでは理解できないようなことにまで迫り得るポテンシャルを持つ。
ただし、1回きりの実験ではダメなような、本書には少しずつ条件を変えながら何度もチャレンジしてきた足跡が詳細に記されている。
また、実験のために整えた条件が、古代とまったく同一とは限らず、そのことを確かめることもできないという難しさもはらむ。
それでも実験をすることは、研究を前進させるために必要な手段と理解できた。
今後も製鉄実験が繰り返され、古代製鉄技術の解明が進むことが期待したい。
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 ここに参加するようになって、読書の幅が広がったように思います。
 それでも、まだ偏り気味。
 いろんな人の書評を参考に、もっと幅広い読書を楽しみたい! 
この書評へのコメント
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書評一覧を取得中。。。
- 出版社:同成社
- ページ数:0
- ISBN:9784886219022
- 発売日:2023年03月13日
- 価格:6050円
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