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ぽんきち
レビュアー:
犬と追う。犯人を。行方不明者を。爆発物を。警察犬をパートナーとする警察官の連作短編。
警察犬。事件の犯人を追跡したり、行方不明者を捜索したり、シェパードなどの大型犬が多かったり、と、何となくのイメージはあるが、そういえばあまり詳しいことは知らない。
本作は警察犬を中心に据えた警察小説。この設定はなかなか珍しいのではないか。
シリーズタイトルにもなっている鑑識課警察犬係に配属となった警察官がハンドラーとなり、警察犬の指導や管理にあたる。犬とハンドラーの息が合うことが非常に大切で、ハンドラーは日々、犬の面倒を見ながら訓練を積み重ねる。
但し、組織には異動がつきもの。警察犬係も例外ではない。せっかくある程度職務に慣れても、人の側は出入りがある。犬がベテランであっても、ペアが変われば訓練は一からとなり、ある程度の訓練を積まなければ現場には出られない。
正規の直轄警察犬のほかに、民間から協力を求める嘱託犬という制度もある。この場合は民間で飼育・訓練されている犬のうち、警察の審査に合格したものが選ばれる。直轄犬は犬種が7種に指定されているが、民間の場合はこれ以外でもよく、チワワやトイプードルなどの小型犬が選ばれた例もある。
警察犬の活動としては、逃走犯人の臭いを元にした足跡追及、遺留品の臭いと犯人の臭いを結びつける臭気選別、犯人や行方不明者の臭いや気配を察知し見つける地域捜索などがある。基本的には、犬の優れた嗅覚を利用した活動となる。

本書は5章構成。
第1章、「手綱を引く」は、異例に長く警察犬係に所属しているベテラン野見山が主人公。相棒のレニーとは何度も手柄を上げている。野見山とレニーはある爆弾事件の容疑者を突き止めていた。だが容疑者はかたくなに犯行を否定する。果たして真相は。第75回日本推理作家協会賞短編部門候補作。
第2章、「首輪をつける」以降の主人公は若い女性警官、岡本都花沙(つかさ)。犬が好きで、警察犬係への配属を願い続け、ようやく配属されて期待に満ちている。パートナーはベテラン犬のアクセルに決まるが、新人か、と犬に舐められ、苦戦。そんな中、轢き逃げの捜査に関わることになり・・・。
実は第1章で野見山は警察を去り、民間の警察犬訓練所で犬の訓練にあたっている。ベテラン野見山には、警察が助言や協力を求めることもしばしばあり、都花沙も野見山とかかわっていくことになる。都花沙が警察犬係を志望したのは過去の経験が大きな理由であり、その理由も連作の中で徐々に明らかになっていく。
第3章「塀を越える」は少年院から脱走した非行少年を追う。第4章「ほじくり返す」では、認知症の老人の捜索に、嘱託犬のフレンチブルドッグが絡む。第5章で表題作の「闇夜に吠ゆ」は行方不明の遺体を探す。
各章はそれぞれ完結した形で読めるが、背景に第1章の爆発物事件が尾を引いており、最終的にはこの事件は未解決のままである。続編が構想されているのではないかと思われる。

警察犬に向いている犬・いない犬、爆発物の匂いは浮遊性である等、ちょっとしたトリビアが興味深い。
各事件の構成は巧みではあるが、いささか苦すぎたり、警察官の行動が組織倫理を逸脱しすぎているように見える部分があったり、というあたりが若干気になる。
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ぽんきち
ぽんきち さん本が好き!免許皆伝(書評数:1825 件)

分子生物学・生化学周辺の実務翻訳をしています。

本の大海を漂流中。
日々是好日。どんな本との出会いも素敵だ。

あちらこちらとつまみ食いの読書ですが、点が線に、線が面になっていくといいなと思っています。

「実感」を求めて読書しているように思います。

赤柴♀(もも)は3代目。
この夏、有精卵からヒヨコ4羽を孵化させました。現在、中雛、多分♂x2、♀x2。ニワトリは割と人に懐くものらしいですが、今のところ、懐く気配はありませんw

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